5月17日(土)に第19回明星研究会「与謝野寛・晶子を偲ぶ会」が行われます。今回のテーマは「Beyond Meiji ―平出修・山川登美子・石川啄木」。若くして亡くなった3名の文学者について考えます。
私も「評論・詩・短歌から読み解く啄木晩年の思想」という題で講演します。啄木の晩年におけるクロポトキンからの影響について主に話す予定です。
参加費は2000円。会場(武蔵野商工会議所「市民会議室」)とZoomの両方あります。ご興味のある方はぜひ!
https://www.myojo-k.net/
2025年04月05日
2025年04月04日
住吉カルチャー&フレンテ歌会
10:30〜12:30、神戸市東灘区文化センターで「住吉カルチャー」。参加者は14名。前半は小原奈実歌集『声影記』を取り上げて話をして、後半は1人一首の歌の批評・添削など。
昼食を挟んで13:00から同じ場所で第89回「フレンテ歌会」。参加者は14名。自由詠+題詠「接続詞の入った歌」の計36首について議論した。17:00に終了。
その後、近くの「かごの屋」に行き、食事&お喋りをして19:00過ぎに解散。
「住吉カルチャー」は参加者募集中。「フレンテ歌会」についても、興味のある方はご連絡ください。会場はJR住吉駅のすぐ近くです。
昼食を挟んで13:00から同じ場所で第89回「フレンテ歌会」。参加者は14名。自由詠+題詠「接続詞の入った歌」の計36首について議論した。17:00に終了。
その後、近くの「かごの屋」に行き、食事&お喋りをして19:00過ぎに解散。
「住吉カルチャー」は参加者募集中。「フレンテ歌会」についても、興味のある方はご連絡ください。会場はJR住吉駅のすぐ近くです。
2025年04月03日
今井恵子『短歌渉猟 和文脈を追いかけて』
「短歌研究」2017年1月号から2019年6月号まで計28回連載された文章と評論「短歌における日本語としての「われ」の問題」を収めた評論集。
短歌の話だけでなく、音楽や美術、時事的な話題なども取り込みながら、幅広く短歌や日本語について論じている。短歌を通して考える日本語論、日本文化論といった内容だ。
鳥の目の司会者と蟻の目の司会者がいる。鳥の目の司会者は時間配分が上手く、公平で軽快、バランスがいい。蟻の目の司会者は、重要な問題に立ち止まって深めることに長けている。(…)優れた進行は、適宜往き来して両方を使い分けている。
近代文学史を考えるとき、わたしたちは新しく加わったもの、前代になかったものに注目し、その輝きを時代のものとして称賛するのが一般的である。(…)明治三十年前後の短歌潮流の変動の中で、一葉の歌が「旧派」のそれとして、ほとんど顧みられなかったのも頷ける。
読者は、並べられた言葉の順番から逃れられない。短歌一首でいえば、初句を読むときに結句に目を走らせるということは出来なくなる。否が応でも、作者が指定した順番通りに言葉を辿る。
洋服と着物の大きな違いは何か。端的に言えば、洋服はクローゼットにぶら下げておき、着物は畳んで箪笥にしまうことだろう。(…)洋服は、着る人の体形に合わせて服地を立体的に縫い合わせてあるから、平面に還元するのが難しく、着物はもともと平面でできているものを人体に纏って使うからである。
アンコールワットの回廊を、外側から内側へと数えることは、国内の神社を参拝するときに潜る鳥居を、神殿に遠いところから、つまり参拝者からみて手前から一の鳥居、二の鳥居、三の鳥居と数える私たち日本人にとって、自然なことである。しかし、西洋では、数える順番が逆転するらしい。
読んでいて楽しい評論集である。示唆に富む話が次々と出てくる。話題はあれこれ移ったり、ぐるぐる廻ったりするのだが、読者も著者の思考に寄り添って一緒に迷路を歩んでいるような気がしてくる。
タイトルに使われている「和文脈」について、著者は「日本語が内包する生理と、短歌形式が生み出す時空を指し示す用語」と定義したうえで、
作歌するとき、モノやコト、また対立や違和や異物、訳の分からない不気味というような夾雑物を排し収斂してゆくと、どこかの時点で、ドアがぱたりと閉まるように、外界・他者・社会・抵抗・疑問などの摩擦のない自己閉塞世界へ入ってしまう。
と記している。そうした閉塞した世界に入らないためにも、考えながら書き、書きながら考える、行きつ戻りつするようなスタイルがこの本には必要だったのだろう。
2024年10月10日、短歌研究社、3000円。
2025年04月02日
雑詠(048)
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石垣に立て掛けられて三組の大中小の上履きならぶ
ですますを崩すことなく話すひと見えない傷のほうが深くて
かき小屋に行こうっていう約束はもう光らない冬空のそこ
たそがれの町に死体を売りにゆく三体七百円の安さで
トイレへとだれか立つたび席順が奥へ奥へとうつる居酒屋
双子だから何でもわかると言うけれど春には白いゆうぐれもある
百五十八段。息を整えてわたしは祈るわたしのことを
*******************************
石垣に立て掛けられて三組の大中小の上履きならぶ
ですますを崩すことなく話すひと見えない傷のほうが深くて
かき小屋に行こうっていう約束はもう光らない冬空のそこ
たそがれの町に死体を売りにゆく三体七百円の安さで
トイレへとだれか立つたび席順が奥へ奥へとうつる居酒屋
双子だから何でもわかると言うけれど春には白いゆうぐれもある
百五十八段。息を整えてわたしは祈るわたしのことを
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2025年04月01日
小原奈実歌集『声影記』
「本郷短歌」「穀物」などに参加していた作者の第1歌集。
剝かれたる梨のあかるさ身のうちに蜜をとどむるちから満ちつつ
読み終へし手紙ふたたび畳む夜ひとの折りたる折り目のままに
犬飼ふを勧められたる夕べよりしづけさはしなやかに尾を振る
鳥去りて花粉散りたる花の芯ながく呼吸をととのへてゐる
触るるなく見てゐしもののひとつにて海は合掌のごとく暮れゆく
魚跳ねてうをちひさきを また跳ねてみづのふかきを港におもふ
鉄橋とすすきまじはる川辺より四肢冷えきつて立ち上がりたり
風みえて欅散りをり木版のごとくかするる西陽のうちを
窓鎖して朴の花より位置高く眠れり都市に月わたる夜を
くちなしの香るあたりが少し重く押しわけて夜のうちを歩めり
日暮れにはまだ時ありて蜂は音、蝶は影とぶあざみのめぐり
胸骨を手放す時刻 頭(づ)を垂れて生への門を閉ざせる時刻
揚雲雀喉ひらくとき体内にひとすぢ初夏の陽は至りゐむ
はるかに曳かれゆきたるごとく雪の上(へ)に累々と人の跡つらなりぬ
みづからの顔をおほかた裂きながら青鷺は大き魚のみくだす
1首目、果汁をたっぷり含む梨のみずみずしさ。後半タ行音が響く。
2首目、相手の人が紙を折ったときの手の動きが見えてくるようだ。
3首目、まぼろしの犬の尾の動きだけが部屋に存在しているみたい。
4首目、乱暴者(?)の鳥が去った後に花が平常心を取り戻すまで。
5首目、「合掌のごとく」が印象的。海の存在感の大きさと祈りと。
6首目、最初は魚にだけ目が行ったが次は海の深さが思われたのだ。
7首目、「四肢冷えきつて」に長い時間しゃがんでいた実感がある。
8首目、葉が散ることで風の筋が見える。ざらっとした西陽の感じ。
9首目、マンションの部屋だろう。人工物と自然との対比的な構図。
10首目、三句を字余りにしたことでリズムも「少し重く」なった。
11首目、「蜂は音」「蝶は影」の対句が鮮やか。本体でないもの。
12首目、医療現場を詠んだ一連から。心臓マッサージを終える時。
13首目、雲雀の体に差す一筋の光。レントゲン写真を見るみたい。
14首目、ただの足跡なのにまるで囚人の列が過ぎて行ったようだ。
15首目、語順がいい。餌を捕る動きが迫力をもって伝わってくる。
2025年2月3日、港の人、2200円。
2025年03月31日
NHK学園のオンライン短歌講座
NHK学園はオンラインでさまざまな短歌講座を開催しています。
https://college.coeteco.jp/s/n-gaku/school_courses/list?category_id=5
私も下記の講座を担当していますので、興味がありましたらぜひご受講、ご視聴ください。
・「現代短歌セミナー 作歌の現場から」
https://college.coeteco.jp/live/87wpc0ll
・「短歌のコツ教室」
https://college.coeteco.jp/live/m331crpq
・「N学短歌plus」
https://college.coeteco.jp/bundles/b8arse6P
・「ラジオと戦争」【アーカイブ】(大森淳郎×松村正直)
https://college.coeteco.jp/live/mgzjc62y
・「オンライントライアル講座」【無料】(小島なお×松村正直)
https://college.coeteco.jp/live/523wc9vn
・「くにたち短歌大会選評座談会」【無料】
https://college.coeteco.jp/live/8exkcd67
https://college.coeteco.jp/s/n-gaku/school_courses/list?category_id=5
私も下記の講座を担当していますので、興味がありましたらぜひご受講、ご視聴ください。
・「現代短歌セミナー 作歌の現場から」
https://college.coeteco.jp/live/87wpc0ll
・「短歌のコツ教室」
https://college.coeteco.jp/live/m331crpq
・「N学短歌plus」
https://college.coeteco.jp/bundles/b8arse6P
・「ラジオと戦争」【アーカイブ】(大森淳郎×松村正直)
https://college.coeteco.jp/live/mgzjc62y
・「オンライントライアル講座」【無料】(小島なお×松村正直)
https://college.coeteco.jp/live/523wc9vn
・「くにたち短歌大会選評座談会」【無料】
https://college.coeteco.jp/live/8exkcd67
2025年03月30日
週末の東京
・28日(金)
午後から父の入所した町田市の施設を訪ねて面会。兄も合流して3人で外出して寿司を食べた。夕方から父の住んでいた川崎市の家に行き、不要な物の処分や掃除をする。
・29日(土)
午前中、NHK全国短歌大会の会場のロビーで、江戸雪さん、笹公人さんと3人でプレミアム講座を行う。

NHKホール2階北ロビーにある岡本太郎の作品「天に舞う」。
夕方から再び父の家に行き、ひたすら片付け。
・30日(日)
午後から明星研究会の勉強会に参加する。場所は東京タワー近くのオフィスビル。

近距離から見上げた東京タワー。

38階からの眺望がすばらしい。
勉強会終了後、みんなで近くの中華料理屋で食事&歓談。その後、新幹線で帰宅。
午後から父の入所した町田市の施設を訪ねて面会。兄も合流して3人で外出して寿司を食べた。夕方から父の住んでいた川崎市の家に行き、不要な物の処分や掃除をする。
・29日(土)
午前中、NHK全国短歌大会の会場のロビーで、江戸雪さん、笹公人さんと3人でプレミアム講座を行う。
NHKホール2階北ロビーにある岡本太郎の作品「天に舞う」。
夕方から再び父の家に行き、ひたすら片付け。
・30日(日)
午後から明星研究会の勉強会に参加する。場所は東京タワー近くのオフィスビル。
近距離から見上げた東京タワー。
38階からの眺望がすばらしい。
勉強会終了後、みんなで近くの中華料理屋で食事&歓談。その後、新幹線で帰宅。
2025年03月28日
「日本近代文学館年誌」
今月発行された「日本近代文学館年誌 資料探索 20」に、高安国世宛の野間宏と富士正晴の書簡の翻刻が載っている。野間30点、富士22点で、いずれも昭和10年代のもの。
注や解題で触れていただいた通り、拙著『高安国世の手紙』で取り上げた高安の野間、富士宛書簡に対応するものも含まれており、興奮を抑えきれない。
『高安国世の手紙』を書いた際に、野間や富士の書簡が残っていないか高安家の方々にも問い合わせたのだが見つからず、既に失われたものだと思っていた。日本近代文学館にあったのか!
日本近代文学館の「特別資料」を検索してみると、高安国世関連の書簡、原稿など91点が収蔵されている。しかも、驚くようなものまで残っているようだ。これは一度調べに行かないといけないな。
「日本近代文学館年誌」は1040円。日本近代文学館のHPから購入できます。高安ファンの方はぜひ。
https://www.bungakukan.or.jp/webshop/nenshi/
2025年03月27日
ロールキャベツ
このところ無性にロールキャベツが食べていなと思っていたら、『類』のなかに出てきたので驚いた。
子どもの頃のクリスマスの夜の食事風景。俵状のロールキャベツではなく、大きな半球状のものを切り分けて食べているようだ。「類、キャベツ巻を切ってやろうか」という鷗外の発言も出てくる。
類が杏奴とともにパリに留学したときに食べたロールキャベツ。類にとっては父の思い出につながる食べ物だったのだろう。
https://www.e-gohan.com/recipes/5026/
そう、ロールキャベツは記憶と深く結びつく食べ物なのだ。
類が好きなのは、このキャベツ巻だ。柔らかくなるまで蒸した半切りのキャベツの隙間に、塩胡椒した挽肉をぎっしりと詰めて蒸し煮にしてある。コンソメで味を調えたスウプの中にそれは置かれていて、蠟燭の灯で艶光りしている。
子どもの頃のクリスマスの夜の食事風景。俵状のロールキャベツではなく、大きな半球状のものを切り分けて食べているようだ。「類、キャベツ巻を切ってやろうか」という鷗外の発言も出てくる。
そういえば先日、懐かしいものを食べました。シュウ・ファルシという仏蘭西の昔ながらの家庭料理で、そんなものを出す食堂があるんです。ナイフで切って驚きました。まだパッパが元気だった頃に、お母さんが時々拵えていたキャベツの肉詰めでした。クリスマスによく食べましたね。あれは独逸の料理かと思っていましたが、仏蘭西でしたよ。
類が杏奴とともにパリに留学したときに食べたロールキャベツ。類にとっては父の思い出につながる食べ物だったのだろう。
https://www.e-gohan.com/recipes/5026/
そう、ロールキャベツは記憶と深く結びつく食べ物なのだ。
2025年03月26日
朝井まかて『類』
森鷗外の末子(三男)の森類を主人公にした小説。
以前、森鷗外記念館を見学したとき、「森類 ペンを執った鷗外の末子」という展示会をやっていて、それ以来気になっていた人物だ。
類の目から見た父の姿や母と祖母との確執、二人の姉(茉莉、杏奴)の様子などが描かれていて興味深い。特に、鷗外没後の与謝野家や「冬柏」との関わりに注目した。
杏奴は踊りの稽古と仏蘭西語を続けながら、文化学院の『源氏物語』や漢学の講座にも通っている。源氏は父と交流のあった与謝野晶子先生が講師で、時々、親しく声をかけてもらっているようだ。
茉莉はまたモウパッサンの翻訳を手がけていて、『それが誰に分るのだ』をこの三月から「冬柏」に連載を始めている。「冬柏」は昨年創刊された新詩社の機関誌で、「明星」廃刊後の与謝野寛、晶子夫妻が最も力を注いでいる雑誌だ。
類と杏奴の巴里行きについて尽力してくれたのは、与謝野夫妻だった。その昔、寛先生が巴里滞在中に晶子先生も渡欧したいと願い、それに力を貸したのが父だったらしい。
杏奴は頰杖をついたまま右手のペンを走らせている。(…)今、巴里での暮らしを文章にしている。与謝野夫妻から「冬柏」に寄稿するように勧められたのは、日本を発つ前だった。
茉莉はロチやドーデなどの翻訳をまた「冬柏」で発表して、他にも原稿料を得られる仕事が入りつつあるらしい。
杏奴はパリのアパルトマンで、父についての追懐文も書いていたらしい。『晩年の父と私』という題がついたその小文は「冬柏」に掲載され、さらに『父上の事』などと題を変えて、今も連載されている。
森茉莉、小堀杏奴の文筆家としての出発には、森家と与謝野家の深い関わりがあったのだ。
2023年7月30日、集英社文庫、1150円。
2025年03月25日
映画「お引越し」
監督:相米慎二
原作:ひこ・田中
出演:中井貴一、桜田淳子、田畑智子、笑福亭鶴瓶ほか
1993年公開の作品。
京都を舞台にした映画を京都の映画館で観るのはいい。映画館のすぐ近くの場所がスクリーンに出てくる。
子役の田畑智子が素晴らしい。また、これが最後の出演作となった桜田淳子も相当な演技力を見せている。
前半と後半でかなり雰囲気が変わる点が気になったけれど、内容はしみじみと胸に沁みた。
出町座、124分。
原作:ひこ・田中
出演:中井貴一、桜田淳子、田畑智子、笑福亭鶴瓶ほか
1993年公開の作品。
京都を舞台にした映画を京都の映画館で観るのはいい。映画館のすぐ近くの場所がスクリーンに出てくる。
子役の田畑智子が素晴らしい。また、これが最後の出演作となった桜田淳子も相当な演技力を見せている。
前半と後半でかなり雰囲気が変わる点が気になったけれど、内容はしみじみと胸に沁みた。
出町座、124分。
2025年03月24日
今後の予定
下記の講座や歌会などを行います。
みなさん、お気軽にご参加ください。
3月29日(土)「春のプレミアム短歌講座」(東京)
https://college.coeteco.jp/live/mwlocw3y
4月16日(水)講座「現代短歌セミナー 作歌の現場から」(オンライン)
https://college.coeteco.jp/live/87wpc0ll
4月29日(火・祝)令和7年度神戸短歌祭
講演「見えないものの詠い方」
https://hyougokenkazin.jimdofree.com/
5月17日(土)第19回「与謝野寛・晶子を偲ぶ会」(東京)
講演「評論・詩・短歌から読み解く啄木晩年の思想」
https://www.myojo-k.net/
5月31日(土)第19回別邸歌会(神戸)
https://matsutanka.seesaa.net/article/512469455.html
6月 1日(日)講座「短歌―語順のマジック」(大阪)
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/020rf1sei0a41.html
6月18日(水)講座「現代短歌セミナー 作歌の現場から」(オンライン)
7月19日(土)第20回別邸歌会(宮津)
https://matsutanka.seesaa.net/article/512469455.html
みなさん、お気軽にご参加ください。
3月29日(土)「春のプレミアム短歌講座」(東京)
https://college.coeteco.jp/live/mwlocw3y
4月16日(水)講座「現代短歌セミナー 作歌の現場から」(オンライン)
https://college.coeteco.jp/live/87wpc0ll
4月29日(火・祝)令和7年度神戸短歌祭
講演「見えないものの詠い方」
https://hyougokenkazin.jimdofree.com/
5月17日(土)第19回「与謝野寛・晶子を偲ぶ会」(東京)
講演「評論・詩・短歌から読み解く啄木晩年の思想」
https://www.myojo-k.net/
5月31日(土)第19回別邸歌会(神戸)
https://matsutanka.seesaa.net/article/512469455.html
6月 1日(日)講座「短歌―語順のマジック」(大阪)
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/020rf1sei0a41.html
6月18日(水)講座「現代短歌セミナー 作歌の現場から」(オンライン)
7月19日(土)第20回別邸歌会(宮津)
https://matsutanka.seesaa.net/article/512469455.html
2025年03月23日
早尾貴紀『イスラエルについて知っておきたい30のこと』
「シオニズムはどのように誕生したか」「イスラエルには誰が住んでいるか」「〈10・7〉とは何だったのか」など30の問いに答える形で書かれたパレスチナ問題の解説書。
シオニズム運動とは、十字軍やレコンキスタのころから一貫している、他者を排斥するキリスト教社会の排外主義・人種主義、そして中東地域に対する植民地的な欲望が生み出したのであって、徹底的にヨーロッパ諸国の都合によるものです。
ヘブライ語は聖書の古語として受け継がれていましたが、日常用語としての話者はいませんでした。文法的にも語彙的にも近代言語として通用するものではなかったので、文法を整理し直し、アラビア語やヨーロッパ諸語から持ってきて単語をつくり、近代言語として現代ヘブライ語が創出されました。
西洋文明を守る戦争という言葉は非常に象徴的です。イスラエルによるガザ攻撃は、まさに西洋中心主義的な植民地主義的世界を守るための戦争なのです。
本書の最後30番目の問いは「私たちになにができるのか」である。引き続き考え、自分なりに行動していきたい。
2025年2月10日、平凡社、1900円。
2025年03月22日
重延浩『ボクの故郷は戦場になった』
副題は「樺太の戦争、そしてウクライナへ」。
1941年に樺太で生まれ1946年12月に函館に引き揚げた著者が、樺太で見た戦争や戦後の生活、そして平和に対する思いを記した本。
幼い私はカレオフとの親交によってロシア人は怖い人という印象がきれいに消えていった。怖いのはロシア人ではなく、戦争というものだったのだ。戦争は人間を敵味方に分断する。でも戦争がなければ、ロシア人と日本人は敵味方ではない。
日本では1954(昭和29)年に『空飛ぶダンボ』という題名で初公開された映画である。私はその映画を日本公開より8年も早い、1946(昭和21)年に見てしまったのである。
引き揚げはすべての財産を樺太に置いていくということでもあった。家や土地だけではなく、銀行との取引は停止され、樺太での預金は預金者の請求には及ばないものになるというのが外務省の見解だった。
昭和24(1949)年7月に終結を見るまでに、函館は総数31万1877人の引き揚げ者を迎えた。敗戦時の樺太の日本人の数は約40万人といわれているので、その多くが函館に上陸したということになる。
以前、函館を訪れた時に「樺太引揚者上陸記念碑」というものを見たことがある。
https://matsutanka.seesaa.net/article/460306601.html
著者はテレビ制作者となってから、「北のグルメ―樺太への旅」「ベルリン美術館―もう一つのドイツ統一」など国際交流の番組制作に携わった。幼少期の戦争や引き揚げの記憶が、平和に対する強い思いを生み出したのだろう。
2023年8月18日、岩波ジュニア新書、940円。
2025年03月21日
現代短歌セミナー 作歌の現場から

次回の「現代短歌セミナー 作歌の現場から」は4月16日(水)の19:30〜21:00に開催します。ゲストは花山多佳子さん(「塔」選者)、テーマは「ユーモアの歌」です。
花山さんは昨年第12歌集『三本のやまぼふし』を出されたところ。ユーモアのある歌を詠むことでも知られています。
みなさん、どうぞご視聴ください!
https://college.coeteco.jp/live/87wpc0ll
(4月16日の回のみ)
2025年03月20日
矢部雅之歌集『Another Good Day!』
現代歌人シリーズ39。
第1歌集『友達ニ出会フノハ良イ事』(2003年)以来21年ぶりの第2歌集。2008年から2014年までカメラマンとしてニューヨークに住んだ日々が詠まれている。
転ぶのもしだいにうまくなるものか上手に転び子が立ち上がる
おのが心おのが歩みにおくれつつ聖堂のさむきくらがりをゆく
ひともわれも黄葉か流れの上に落ちしばしを絡みやがて隔たる
ツグミまで腹の出てゐる国にありむしろ痩せ気味の日本人われ
裏切りを未だ知らねば三歳は「どしてなの?」と幾たびも訊く
孤独にも金また銀の孤独あり 錆びたる鉄の孤独を吾に
カウチにて雌猫の背を撫でをれば鏡の中の妻と目が合ふ
一目見んと思(も)ふは思(も)へども座すほかなし半日白昼のつづく機中に
なにごとも差別のせゐにする人とせぬ人ありてけふも晴れの日
風船は風の船なり風吹けば小(ち)さき手を発ち風中を行く
1首目、小さな子の様子を見ての発見。転び方も上達するのである。
2首目、上句がいい。異国の教会の雰囲気に少し気圧される感じか。
3首目、別れた前妻を詠んだ歌。川面を流れる二枚の黄葉のように。
4首目、同じ鳥でも日米で姿が違うように痩せや肥満の基準も違う。
5首目、イソップ物語の裏切りの意味がわからずに尋ねてくる幼子。
6首目、格言みたいな響きがかっこいい。孤独にも種類があるのだ。
7首目、何となく気まずい感じ。妻が嫉妬するわけでもないのだが。
8首目、母危篤の報せを受けて帰国する。矢部版「死にたまふ母」。
9首目、差別が問題なのは前提としてその後の人の態度は分かれる。
10首目、風船が飛んで行っただけなのだが、言葉がとても美しい。
2024年12月28日、書肆侃侃房、2200円。
2025年03月19日
新宮&別邸歌会(その3)
熊野速玉大社への参拝を終えて熊野川を見に行く。

ちょうど三反帆の遊覧船が下ってくるところだった。
かつては本宮大社から速玉大社まで舟で下って参拝したらしい。

大石誠之助宅跡。
住宅街を通っていたら、偶然見つけた。
調べて行って見つけるより偶然見つける方が価値がある。
その後、丹鶴ホール4階の新宮市立図書館に寄って中上健次コーナーを見学。熊野川を見わたす素晴らしい環境の図書館だった。
そして、午後からは第18回別邸歌会を旧チャップマン邸で開催。参加者15名。13:00から17:00まで計30首について楽しく議論した。
終了後、近くのハンバーガー&クレープの店「マジックピエロ」で懇親会。短歌についてあれこれ話す。
16日(日)
大雨の予報だったが、朝起きると雨はほとんど止んでいたので、バスに乗って熊野本宮大社へ行くことにする。

熊野本宮大社。

前登志夫の歌碑。
「那智瀧のひびきをもちて本宮にぬかづくわれや生きむとぞする」

馬酔木がきれいに咲いていた。
帰りは新宮から特急くろしおに乗り、大阪経由で京都まで。行きは松阪経由だったので、往復で紀伊半島をほぼ一周した感じになった。
ちょうど三反帆の遊覧船が下ってくるところだった。
かつては本宮大社から速玉大社まで舟で下って参拝したらしい。
大石誠之助宅跡。
住宅街を通っていたら、偶然見つけた。
調べて行って見つけるより偶然見つける方が価値がある。
その後、丹鶴ホール4階の新宮市立図書館に寄って中上健次コーナーを見学。熊野川を見わたす素晴らしい環境の図書館だった。
そして、午後からは第18回別邸歌会を旧チャップマン邸で開催。参加者15名。13:00から17:00まで計30首について楽しく議論した。
終了後、近くのハンバーガー&クレープの店「マジックピエロ」で懇親会。短歌についてあれこれ話す。
16日(日)
大雨の予報だったが、朝起きると雨はほとんど止んでいたので、バスに乗って熊野本宮大社へ行くことにする。
熊野本宮大社。
前登志夫の歌碑。
「那智瀧のひびきをもちて本宮にぬかづくわれや生きむとぞする」
馬酔木がきれいに咲いていた。
帰りは新宮から特急くろしおに乗り、大阪経由で京都まで。行きは松阪経由だったので、往復で紀伊半島をほぼ一周した感じになった。
2025年03月18日
新宮&別邸歌会(その2)
15日(土)
新宮に「大逆事件資料室」があると聞いたのだが、ネットにはあまり情報が出ていない。常時開いているわけではなく、担当の方に電話して予約する必要があるようだ。
9:00過ぎにホテルから電話して「今日の午前中か明日見学したい」と話したところ、9:30には開けてくださるとのこと。対応が実にスピーディーでありがたい。

熊野新宮大逆事件資料室。

1910(明治43)年に起きた大逆事件の概要のほか、新宮グループ6名(大石誠之助、成石平四郎、高木顕明、成石勘三郎、崎久保誓一、峯尾節堂)についての詳しい展示がある。
2001年に新宮市議会は「6人は冤罪であっただけでなく、平等・非戦を唱えた先覚者」として犠牲者顕彰碑を建立。2018年には大石誠之助を新宮市の名誉市民に認定している。
見学後、午後の歌会までまだ時間があったので、熊野速玉大社へ参拝に行く。

熊野速玉大社。
新宮駅から徒歩約20分。

佐藤春夫の句碑。
「速玉の竹柏(なぎ)や芝生や時雨けり」

野口雨情の詩碑。
「国のまもりか速魂さまの御庭前まで神さびる」
新宮に「大逆事件資料室」があると聞いたのだが、ネットにはあまり情報が出ていない。常時開いているわけではなく、担当の方に電話して予約する必要があるようだ。
9:00過ぎにホテルから電話して「今日の午前中か明日見学したい」と話したところ、9:30には開けてくださるとのこと。対応が実にスピーディーでありがたい。
熊野新宮大逆事件資料室。
1910(明治43)年に起きた大逆事件の概要のほか、新宮グループ6名(大石誠之助、成石平四郎、高木顕明、成石勘三郎、崎久保誓一、峯尾節堂)についての詳しい展示がある。
2001年に新宮市議会は「6人は冤罪であっただけでなく、平等・非戦を唱えた先覚者」として犠牲者顕彰碑を建立。2018年には大石誠之助を新宮市の名誉市民に認定している。
見学後、午後の歌会までまだ時間があったので、熊野速玉大社へ参拝に行く。
熊野速玉大社。
新宮駅から徒歩約20分。
佐藤春夫の句碑。
「速玉の竹柏(なぎ)や芝生や時雨けり」
野口雨情の詩碑。
「国のまもりか速魂さまの御庭前まで神さびる」