2023年10月15日

ロートル

今日のマラソングランドチャンピオンシップで4位になった川内優輝選手のインタビュー記事をネットで読むと、新聞社によっていろいろと違いがある。

多分(選手の)半分ぐらいは勇気がなくて、私についていくのが怖かったと思う。もう半分ぐらいナメてたんと思う。ロードみたいな選手はどうせ落ちてくだろうって。(東スポWEB)
半分ぐらいの選手は勇気がなくて私についていくのが怖かったのだと思うし、もう半分はなめていたんですよ。あんな選手はどうせ落ちていくだろうと。(スポニチアネックス)
他の選手は怖かったと思う。半分ぐらいは舐めていたと思う。落ちてくるだろうと。(デイリースポーツ)
若い選手の半分くらいは勇気がなくて、私についていくのが怖かったと思う。半分ぐらいはなめていたんですよ。『ロートルみたいな選手は、どうせ落ちてくるだろう』と。(中日スポーツ)
若い選手だから、多分半分くらいは勇気が無くて、私についていくのが怖かった。もう半分はなめていたんですよ、『なに、あのロートル』みたいな。どうせ落ちていくだろうって。(日刊スポーツ)

最初に東スポの記事を読んで、「ロードみたいな選手」ってどういう意味かなと疑問に思った。トラック競技出身ではないのでスパートが弱いという意味だろうか??

その後、中日スポーツや日刊スポーツの記事を見て、「ロード」は「ロートル」の間違いなのだと気づいた。ロートルなら「旬をすぎた人、役にたたない人」といった意味なので、フルマラソン130回完走の大ベテラン川内選手の自虐的な言い回しとしてよく理解できる。

おそらく東スポの担当者は「ロートル」という言葉を知らなかったのだろう。そう言えば、近年あまり見かけない言葉だ。もう日常生活では死語になっているのかもしれない。

そもそも「ロートル」って何語なのかと思って辞書を引いてみたら、中国語であった。「老頭児」と書いて「老人、としより」の意味とのこと。なるほど。それにしても、一体いつ頃から使われて、いつ頃に使われなくなった言葉なのだろうか。

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2023年10月14日

渥美清『新装版 渥美清わがフーテン人生』


「サンデー毎日」1976年新年号から17回にわたって連載された聞き書きを一冊にまとめたもの。1996年に毎日新聞社より刊行された単行本が、「男はつらいよ」50周年記念に復刊された。

生い立ち、不良少年時代、浅草でのコメディアン時代、結核による療養生活、テレビや映画への出演、アフリカ旅行、「男はつらいよ」の誕生など、自らの半生について率直に話している。

木枯らしの吹く寒い夜なんか、四角い顔(つまりわたくしでございます)と丸い顔(関やん)が、四隅に重しをつけた風呂敷みたいなそんな掛けブトンを掛けて、まるでプロレスやってるような格好で抱き合ったまま寝ます。
わたくし、療養所で二年ぐらい過ごしたことになりますが、その間、ずっと医療保護と生活保護を受けておりました。ですから、わたくし、国からお借りしたその分をいま、せっせとお返ししているつもりなんでございます。
野生の動物といえば、ずいぶんいろんなヤツを見ました。しかし、数いる動物の中で、すばらしい造形の妙をそなえているのは、やっぱり、サイでございますよ。あれは自然の産物ではなくて、たとえば鉄工所なんてとこで人工的に作ったものではないかという気がいたしました。
大体、花火というやつは打ち上げられてみて初めて、夜空に美しく咲いたかどうかわかるように、役者もまた演じてみて初めて、お客がそれをどう受け止めたかがわかるものではないでしょうか。

全篇、寅さん口調でユーモラスに楽しく語っているのだけれど、ところどころにコワさや厳しさが顔を覗かせる。戦後の焼け跡風景と右肺摘出の闘病生活は、渥美清の人生観に大きな影響を与えたようだ。

2019年8月5日、毎日新聞出版、1400円。

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2023年10月12日

映画「658km、陽子の旅」

監督:熊切和嘉
出演:菊地凛子、竹原ピストル、黒沢あすか、風吹ジュン、オダギリジョー

父の死の知らせを受けた主人公が、東京から青森まで向かうロードムービー。途中、ヒッチハイクなどをして多くの人と出会い、都会暮らしの心が少しずつほぐれていく感じが良かった。

私はヒッチハイクをしたことはないけれど、親切な人に車に乗せてもらったことは10回くらいある。旅先の辺鄙な場所でバスに乗り遅れて困って手を挙げたり、車しか通らないような道を歩いていて声を掛けてもらったりした。

あれこれ思い出すと懐かしい。

出町座、113分。

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2023年10月11日

柳川(その3)

柳川藩主立花邸「御花」へ。


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1910(明治43)年に建てられた西洋館。
ちょうど「啄木ごっこ」の連載も1910年の話を書いているところ。


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西洋館2階の広間。
シーリングメダリオンが華やかだ。


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和風建築の部屋に飾られた雛人形と「さげもん」。
さげもんは柳川に伝わる吊るし飾り。


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西洋館と和風建築の屋敷がつながっている。
樹齢400年以上という蘇鉄が力強く鮮やか。


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大広間から見る「松濤園」。
この庭が広々として素晴らしい。


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涼しい風に吹かれながら、30分ほど庭を眺めていた。

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2023年10月10日

柳川(その2)

柳川と言えば北原白秋のふるさと。毎年、白秋の命日の11月2日を挟んで1日から3日まで「白秋祭」が開かれているとのこと。


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北原白秋の生家。

酒造業で栄えた北原家だが、酒蔵などは火事で焼けてしまい、現在は母屋(修復)と蔵、隠居部屋(復元)だけが残る。

三日三夜(みかみよ)さ炎あげつつ焼けたりし酒倉の跡は言ひて見て居り/北原白秋『夢殿』


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母屋の内部。土間、茶の間、食事場など。

コロナ禍などで入館者が減り、生家の維持・存続が大変な状況になっているらしい。
https://www.asahi.com/articles/ASNBG7FVQNBFTGPB003.html


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仏間にある白秋のデスマスク(複製)。

デスマスクって最近はあまり聞かないけれど、今でも作製する人はいるのだろうか。


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敷地内にある汲水場。

鍋二つ汲水場(くみづ)に伏せて明らけき夏真昼なり我家(わがや)なりにし/北原白秋『夢殿』


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生家の奥にある柳川市立歴史民俗資料館(白秋記念館)。

1階は「水郷柳川」「柳川の歴史」「柳川の民俗」に関する展示で2階が白秋関係。「関東大震災から100年」の特別展があり、震災の日の様子をなまなましく描いた自筆原稿「その日のこと」などが展示されていた。

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2023年10月09日

柳川(その1)

現代歌人集会福岡エリア歌会の翌日、初めて柳川を訪れた。
福岡(天神)から西鉄で約1時間。

まずは、有名な川下りを。柳川駅近くの乗船場から観光スポットの集まる付近の下船場まで、約50分、1700円。


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残暑もようやく落ち着いて、秋らしい一日。
船頭さんが周辺の案内をしたり、唄を歌ったりしてくれる。


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家の裏口から堀へと続く石段が、あちこちに見られる。
堀の水が生活用水として使われていた頃の名残だ。

ついかがむ乙(おと)の女童(めわらは)影揺れてまだ寝起らし朝の汲水場(くみづ)に/北原白秋『夢殿』
背戸ごとの汲水場(くみづ)の段(きだ)に桶洗ひ菜を洗ひけむ言(こと)かはしつつ/阿木津英『黄鳥』


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終点に着くまでに12の橋を潜る。
首をすくめなくてはいけないくらい低い橋もある。


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堀に面して白秋の歌碑がいくつか立っている。

「水のべは柳しだるる橋いくつ舟くぐらせて涼しもよ子ら」


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こちらは宮柊二の歌碑。
昭和25年に柳川を訪れた際に詠んだもの。『日本挽歌』所収。

「往還に白き埃の立ちながれあな恋ほしかも白秋先生」

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2023年10月08日

別邸歌会のご案内

 「別邸歌会」チラシ 2023.09.03.jpg


今後の別邸歌会の日程は、下記の通りです。

・10月21日(土)SATSUKI-RO さつき楼(滋賀県八日市市)
・12月17日(日)奈良カエデの郷ひらら(奈良県宇陀市)
・2024年 2月24日(土)昭和の隠れ家(大阪市住之江区)

時間はいずれも13:00〜17:00。

初心者もベテランも、初めての方も常連の方も、老若男女関係なくどなたでも参加できる歌会です。どうぞお気軽にお申込みください。

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2023年10月07日

吉村昭『遠い日の戦争』


以前から関心を持っている西部軍事件(昭和20年6月から8月にかけて福岡市の油山などでアメリカ軍の捕虜30名以上が処刑された事件)をモデルにした小説。

以前読んだ小林弘忠『逃亡―「油山事件」戦犯告白録』と同じく、2年以上にわたって逃亡生活を続けた人物が主人公となっている。
https://matsutanka.seesaa.net/article/484902418.html

捕虜を処刑する生々しい場面、戦犯として追われる身になった心情、戦後の変わりゆく社会、裁判の様子などが丁寧に描き出されている。やはり吉村昭の小説は読ませる。

主人公は姫路のマッチ箱工場で逃亡生活を送る。

橋の上からは、城の全容が望まれた。天守閣や櫓の壁の白さが眼にしみた。工員からきいた話によると、城が戦災にあわず残されたのは、貴重な史蹟である城を惜しんだアメリカ空軍の措置だという声が専らだという。が、琢也は、それは偶然の結果で、大規模な都市への焼夷攻撃を執拗に反復し原子爆弾まで二度にわたって投下したアメリカ空軍が、そのような配慮をしたはずはなく、おそらくそれは、アメリカ占領軍が宣撫工作のためにひそかに流した噂にちがいない、と思った。

こうした噂は戦後も長く残り続けたようだ。でも実際のところは、この主人公の考えたように偶然の結果に過ぎなかったことが明らかになっている。
https://www.kobe-np.co.jp/news/backnumber/201707/0011622977.shtml

1984年7月25日発行、2021年9月30日20刷。
新潮文庫、490円。

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2023年10月06日

オンライン講座「作歌の現場から」

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永田和宏さんと私が毎回ゲストの歌人を招いて語り合うNHK学園のオンライン講座「現代短歌セミナー 作歌の現場から」。次回は10月20日(金)の開催です。

ゲストは小島ゆかりさん、テーマは「過去形と現在形」、時間は19:30〜21:00。連続講座ですが単発の受講も可能です。どうぞお気軽にお申込み下さい。歌作りのヒントが詰まった90分になると思います。 

https://college.coeteco.jp/live/84kyc7le
https://college.coeteco.jp/live/5p0vcqw1

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2023年10月05日

温又柔『魯肉飯(ロバプン)のさえずり』


日本人の父と台湾人の母を持つ主人公の桃嘉を中心に、台湾と日本にまたがる女三代の生き方を描いた小説。織田作之助賞受賞作。

主人公と母との会話の中で意味の通じない日本語がしばしば出てくる。「上げ膳据え膳」「出願」「本末転倒」などは、元の言葉が難しいから仕方がない。また、「就活」も略語なので難しい。

一方で「おあずけ」は簡単な言葉だが、「預ける」の意味でなく「待たせる」という意味になるので、文脈を理解しないとわからない。こういう言葉こそネイティブでない人には大きな障害になるのだろう。

言葉が理解できないことはコミュニケーションの妨げになる。一方でそれは、言葉が通じるからといって必ずしも心が通じるわけではないことも浮き彫りにする。

祖母が母に言った言葉が心に残る。

「だれといても、どこにいても、自分のいちばん近くにいるのは自分自身なのよ。だからね秀雪、だれよりもあなたがあなた自身のことをいちばん思いやってあげなくては」

昨年エッセイ集『台湾生まれ日本語育ち』を読んだ時に購入してしばらく積ん読になっていた本だが、今回読めてとても良かった。やはり読書はタイミングが大切で、今の私に必要な本だったのだと思う。

2020年8月25日、中央公論新社、1850円。

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2023年10月04日

大塚寅彦歌集『ハビタブルゾーン』


現代歌人シリーズ36。240首を収めた第6歌集。

〈長年「相棒」と内心呼んでいた女性〉の病気と死を詠んだ歌が大半を占めている。

伏見稲荷〈不死身(ふしみ)〉の音に通へれば不安もつ身の人と連れ立つ
看板の〈ゆ〉の赤き字がゆらゆらと手招きしをり古き町の湯
君のゐる病棟の窓をいまいちど仰ぎて帰るゆふづつのとき
片側に見えぬ死を載せ保ちゐる静けさありぬ昼のホスピス
ひとの乗る車椅子押す嬉しさよいまここに在る重み感じて
胸水と腹水を採る管もまた冷えゆくならむ魂(たま)失せし身は
君と来て癒(ゆ)を願ひたる御仏の慈顔や孤りいまはなに祈(ね)ぐ
ビル失せし更地の土に芽吹く草つかのまの生が陽を浴みてをり
迷へるは蟻はた吾(われ)か汝(な)が墓碑の〈南無阿弥陀仏〉の〈無〉の彫りのなか
あづさゆみ春の土筆(つくし)の尽くし得ぬ思ひにぞ生くいのちの苦さ

1首目、語呂合わせにも縋る思いで病気の見つかった人と参拝する。
2首目、懐かしい光景。薄暗くなった町に銭湯の赤い文字が浮かぶ。
3首目、見舞いを終えた帰りに名残を惜しみ祈るような思いで見る。
4首目、生と死のぎりぎりのバランスの上に成り立っている静謐さ。
5首目、車椅子を押す時に感じる肉体の重さは生きている証である。
6首目、身体につながれている管も死の後に同じように冷えていく。
7首目、御仏の姿は以前と変わらないが、もう何も祈ることがない。
8首目、人の一生も長い時間の中ではこの草のようなものなのかも。
9首目、まるで迷路のような「無」の文字から出ることができない。
10首目、初二句は序詞。埋めようのない喪失感を抱えつつ生きる。

2023年4月8日、書肆侃侃房、2000円。

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太郎坊宮

先日、別邸歌会の下見に八日市へ行ったついでに、太郎坊宮(阿賀神社)にお参りしてきた。


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八日市駅から西に30分ほど歩くと、山の中腹に神社が見えてくる。岩が露出して、いかにも霊山という感じがする。


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祭神は「正哉吾勝勝速日天忍穂耳大神(まさかあかつかちはやひあめのおしほみみのおおかみ)」。勝利と幸福を授ける神とのこと。

赤神山(350メートル)にある本殿まで、登山口から740段の石段をひたすら登っていく。


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途中にある絵馬殿からの眺め。
ベンチに座ってしばらく休憩する。


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日露戦争の水師営の会見(乃木将軍とステッセル将軍)を描いた絵馬。「大正十五年六月」のもの。


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夫婦岩。

二つの巨岩に挟まれた幅わずか80センチの道が12メートルにわたって続いている。巨石好きなので、こういうのはグッとくる。


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本殿のすぐ下にある展望台(懸造りの舞台)からの眺め。

がんばって登ってきた甲斐があった。

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2023年10月03日

長谷川清美『豆くう人々』


副題は「世界の豆探訪記」。

北海道の老舗豆専門店「べにや長谷川商店」に生まれ、現在「べにやビス」代表を務める著者が、世界各国の豆食事情を取材した本。

2012年から2019年に訪れた66か国の中から29の国・地域を取り上げて、どんな種類の豆が栽培され、どんな豆料理があるのかを記している。一口に豆と言っても、大豆、いんげん豆、ベニバナインゲン、リマ豆、ささげ、小豆、緑豆、そら豆、えんどう豆、ひよこ豆、レンズ豆など、実に多彩だ。

メキシコには伝統的農法「ミルパ」があると以前から聞いていた。別名「スリーシスターズ」といい、窒素固定をして土地を肥やす「豆」、豆のツルが這う支柱となる「トウモロコシ」、葉が日除けとなる「かぼちゃ」を組み合わせて植えることで、お互いの生育が助けられる農法だという。
日本で豆料理が日常から遠ざかった原因は、わたしはガスコンロの普及によるものだと思っている。ストーブにかけておけば煮えているようなほったらかし調理ができないので、いつしか豆料理は「手間がかかるもの」になってしまったのだ。
(コスタリカの豆の消費量は)ほかの中南米諸国と比べるとかなり少ない。おそらくタンパク源を肉に依存しているのだろうが、「経済水準と豆の消費は反比例する(=豊かな国のタンパク源は豆ではなく肉)」というから、この傾向が如実にあらわれている。
地方や農村では、今でも豆板醤は自家製で、手前味噌ならぬ手前豆板醤なのだが、最近は手づくり派が減ってきているので、ザオさんの商売も右肩上がりだという。

それにしても著者の「豆」愛はすごい。知らない豆や豆料理があると聞くと、世界のどこへでも行き、畑や台所を見て、現地の人の話を聞き、実際に料理を食べてみる。その好奇心と探究心に感心する。

2021年12月15日、農山漁村文化協会、2200円。

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2023年10月02日

福岡から

1泊して福岡から帰ってきました。
現代歌人集会の福岡エリア歌会は充実した内容でした。
今後も西日本の各地で開催できるといいなと思います。

今日は柳川を観光してきました。
京都〜福岡は新幹線で約2時間40分。
意外と近いですね。

posted by 松村正直 at 20:27| Comment(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年10月01日

福岡へ

現代歌人集会福岡エリア歌会に参加するため、
福岡へ行ってきます。明日の夜に帰る予定。

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2023年09月30日

雑詠(031)

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みずからの鼾ふかきに目を覚ます昼うす青きひとりの部屋に
一点の朱を添えるべく古庭のみずの面に浮上する鯉
汗かかぬように呼吸を抑えつつ混み合う朝の電車に浮かぶ
敵の敵は味方にあらず噴水のみずの根元に浮かぶ白球
中国のこと書き立てる投稿も当然として漢字を使う
カラス鳴く声に応えるにんげんのカラスもいたり父に抱かれて
ありがとうございますって言われても土鳩のようにわれは眠るよ

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2023年09月29日

松平盟子『与謝野晶子の百首』


「歌人入門」シリーズの8冊目。
副題は「光と影を含む多様な歌世界」。

与謝野晶子の短歌100首を取り上げて鑑賞・解説をした本。大きな特徴はテーマ別に12の章に分けられていること。「恋」「十一人の子の母として」「社会を見る眼差し、都市生活者の思い」「西洋との遭遇、旅と思索」など。

初めて知る歌もあって、晶子に対する興味がまた増してきた。

秋来ぬと白き障子のたてられぬ太鼓うつ子の部屋も書斎も/『青海波』
腹立ちて炭まきちらす三つの子をなすにまかせてうぐひすを聞く/『青海波』
花瓶の白きダリヤは哀れなりいく人の子を産みて来にけん/『さくら草』
女より智慧(ちゑ)ありといふ男達この戦ひを歇(や)めぬ賢こさ/『火の鳥』
ついと去りついと近づく赤とんぼ憎き男の赤とんぼかな/『朱葉集』

このシリーズは右ページに短歌1首、左ページに250字程度の鑑賞となっていて、とても読みやすい。まさに入門編として最適だと思う。

2023年7月7日、ふらんす堂、1700円。

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2023年09月28日

彼岸花

亀岡市に彼岸花を見に行った。
亀岡駅からバスで10分ほどのところ。


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畦に沿って彼岸花が咲いている。
今年は猛暑のため例年より開花が遅れたそうだ。


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彼岸花の「赤」と露草の「青」。


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一か所に群れて咲いている彼岸花もある。


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 西国三十三所の「穴太寺」(あなおうじ)の仁王像。
 吽形。


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 阿形。


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落ち着いた雰囲気の庭園。

本堂には寝釈迦(釈迦如来大涅槃像)が祀られ、撫で仏として参拝者に親しまれている。


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畦道をぐるぐる歩き回る。
写真を撮っている人もちらほら見かけた。


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長かった夏もようやく終わり、秋になったという感じがする。

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2023年09月27日

エリック・ホッファー『エリック・ホッファー自伝』


副題は「構想された真実」。
中本義彦訳。原題は〈Truth Imagined〉。

エリック・ホッファー(1902‐1983)が『大衆運動』を刊行して著作活動に入る以前の生活について記した本。巻末に72歳の時のインタビューも載っている。

7歳で失明し15歳で視力は回復したものの18歳で両親を亡くし、28歳で自殺未遂を起こす。その後、季節労働者や港湾労働者として長年働き続けた。

旧約聖書に登場する人物で活力のない者は、ほとんどいない。王、聖職者、裁判官、助言者、兵士、農夫、労働者、商人、修行者、預言者、魔女、占い師、狂人、のけ者など、ページの中には数え切れないほど多くの主人公たちが登場する。
われわれは、貧民街の舗道からすくい上げられたシャベル一杯の土くれだったが、にもかかわらず、その気になりさえすれば山のふもとにアメリカ合衆国を建国することだってできたのだ。
開拓者とは何者だったのか。家を捨てて荒野に向かった者たちとは誰だったのか。(…)明らかに財をなしていなかった者、つまり破産者や貧民、有能ではあるが、あまりにも衝動的で日常の仕事に耐え切れなかった者、飲んだくれ、ギャンブラー、女たらしなどの欲望の奴隷。逃亡者や元囚人など世間から見放された者。
四十歳から港湾労働者として過ごした二十五年間は、人生において実りの多い時期であった。書くことを学び、本を数冊出版した。しかし、組合の仲間の中に、私が本を書いたことに感心する者は一人もいない。沖仲士たちはみな、面倒さえ厭わなければできないことはないと信じているのである。

こうした話には、労働者や社会的弱者の持つバイタリティに対する畏敬の念がある。それは、人間が本来誰でも持っているはずの生きる力に対する信頼と言ってもいい。

誰かといるよりも孤独を好む一方で、街で知らない人に話し掛ける気さくな一面も持っている。

私が「何かお手伝いしましょうか」と冗談半分に声をかけると、彼は頭を上げて、初めびっくりしていたが、私に微笑みかけた。彼が読んでいたのは紙が黄色くなったドイツ語の本で、もう一冊は独英辞典だった。
明らかに初めての来訪で、列車を降りた場所であたりを見回している。様子を見ているうちに、急に話しかけてみたくなり、足早に彼女たちに近づいて「何かお手伝いしましょうか」と声をかけた。

ちょっと寅さんに似ているところがあるかもしれない。

2002年6月5日第1刷、2021年5月20日第25刷。
作品社、2200円。

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2023年09月26日

安田茜歌集『結晶質』

著者 : 安田茜
書肆侃侃房
発売日 : 2023-03-15

2014年から2022年の作品を収めた第1歌集。

かなしいね人体模型とおそろいの場所に臓器をかかえて秋は
撃鉄を起こすシーンのゆっくりと喉をつばめが墜ちてくかんじ
わたしは塩、きみを砂糖にたとえつつ小瓶と壺を両手ではこぶ
ベランダにタオルは風のなすがまま会えないときもきみとの日々だ
橋をゆくときには橋を意識せずあとからそれをおもいだすのみ
ごめんねのかたちに口をうごかせば声もつづいて秋の食卓
裏庭をもたないだろう一生に自分のためのボルヘスを読む
あやうさはひとをきれいにみせるから木洩れ日で穴だらけの腕だ
白いシャツはためきながら歩くとき腕はこの世をはかるものさし
胸あたりまでブランケットをかぶっても怒りがからだを操っている

1首目、人間と人体模型の関係が転倒していてアンドロイドみたい。
2首目、下句の比喩が個性的。緊迫した場面で息を飲む様子だろう。
3首目、容器の形は違うけれどどちらも白い粒同士のペア感が強い。
4首目、下句の断言が力強い相聞歌。タオルに心情を投影している。
5首目、時が経ち全体を俯瞰できるようになって気づくこともある。
6首目、口の動きと声との微妙なずれに、心と言葉の乖離を感じる。
7首目、上句が面白い。ある程度の広さの一軒家にしか裏庭はない。
8首目、まだらな光の様子を穴に喩えた。美しさと危うさは紙一重。
9首目、下句の箴言調がいい。剝き出しの腕が風を受けている感触。
10首目、コントロールできない怒りに感情を掻き乱されてしまう。

2023年3月22日、書肆侃侃房、2000円。

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