2022年06月06日

石田杜


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石田杜(いわたのもり)は万葉集以来の歌枕の地。
京都市伏見区石田森西にある「天穂日命(あめのほひのみこと)神社」が、その地に当たるとされている。現在の地名は「いしだ」。


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神社の入口近くに立つ歌碑。
山科の石田の小野のははそ原見つつか君が山道越ゆらむ
           藤原宇合「万葉集」


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ひぐらしの涙やよそに余るらん秋と石田の森の下風
           順徳院「順徳院御集」


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石の鳥居は裏側から鉄骨で補強されていた。
表から見ると、ほとんどわからないようになっている。

posted by 松村正直 at 11:07| Comment(4) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年06月05日

大下一真歌集『漆桶』


2013年から2018年までの短歌449首(反歌2首を含む)と長歌2首を収めた第7歌集。あとがきに「五百余首の短歌」とあるが、何かの間違いのようだ。

各連作は、2首、5首、8首、11首と、小題を入れて3首組の倍数になっているものがほとんど。そのため、ページに空きがなく歌が組まれている。

追憶となればなべては美しというにもあらず酔芙蓉咲く
喪中葉書三十余通手に乗せてみればさしたる重さならねど
掃くわれを墓石に止まり見ていしがつまらなそうに鴉の去りぬ
人生に百五歳あり一歳あり新盆の経たんたんと誦す
卒塔婆にゆわえられたる鯉のぼり夕べゆらぐは童子の笑むや
どこへ行くのどこへ行くのと問われつつ車椅子押す夕ぐれありき
支え合うゆえに「人」とぞ教わりてあるいはぶつかる形とも見ゆ
おさな子が落として泣きし五円玉探しに来たるようなふるさと
歴代の住持の位牌拭き終えて二十九世住持は背伸びす
暁をふたたび雨の降り出でてかなかなの声消さぬ静かさ

1首目、追憶は美しいという一般的に流布しているな観念を覆す歌。
2首目、30余名の人たちの命の重さだと思えば、ずっしりと重い。
3首目、境内の掃除をしている自分を、鴉の目線で描き出している。
4首目、105歳で亡くなる人も1歳で死ぬ子もいる。それぞれの命。
5首目、幼いうちに亡くなった男の子の墓。鯉のぼりに哀切が深い。
6首目、認知症の母の思い出。車椅子に乗る人には後ろが見えない。
7首目、実際に支え合うこともあればぶつかり合うこともあるもの。
8首目、故郷の懐かしさと哀しさ。昔に帰ることは誰にもできない。
9首目、「二十九世住持」は自分のこと。長い歴史の重みを感じる。
10首目、かなかなの鳴き声と細い雨音が、静寂を引き立てている。

お寺の住職ということで、庭を掃いている歌と経を読んでいる歌がたくさん出てくる。ユーモラスな詠みぶりの歌も多いが内容は軽くなく、生や死について考えさせられる。そのあたりのバランスの良さが持ち味だ。

2021年7月2日、現代短歌社、3300円。
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2022年06月04日

くにたち短歌大会

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「NHK学園60周年記念 くにたち短歌大会」の選者を務めることになりました。現在、作品を募集中です。

https://www.n-gaku.jp/life/topics/7260

自由題と題詠「立」で締切は8月1日(月)消印有効です。WEBからも投稿できます。

募集要項(PDF)は→こちら

たくさんのご応募をお待ちしております!

posted by 松村正直 at 19:34| Comment(0) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年06月03日

オンライン講座「短歌のコツ」

NHK学園のオンライン講座「短歌のコツ」の7月以降の募集が始まりました。毎月第4木曜日の19:30〜20:45(75分)、Zoomを使って行います。

前半は毎回一つの題材を決めての秀歌鑑賞、後半は受講生の作品の批評・添削という内容です。

お申込みは、下記のページからお願いします。
7月〜9月(全3回)
10月〜12月(全3回)

初心者の方もベテランの方も、お気軽にご参加下さい。

posted by 松村正直 at 20:37| Comment(0) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年06月02日

呼び名

先日の「ふらッと短歌」で、歌の中の二人称をどのように表すかという話になった。「あなた」「君」「お前」など、日本語には二人称がたくさんあり、どれを使うかによって相手との関係性や歌の印象が違ってくる。

翌日、平塚市美術館の「リアルのゆくえ」展に行ったところ、安藤正子「オットの人」という作品があった。「夫」でも「オット」でもなく、「オットの人」。このような言い方でしか表せない距離感というものが、確かにある。ちなみに、英語の題は「He, my so called husband」。

短歌の問題は、短歌の中だけを見ていてもわからない。むしろこうした他のジャンルや社会全般の流れからヒントをもらうことが多い。

posted by 松村正直 at 08:24| Comment(4) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年06月01日

BOOTHに商品を追加しました

ネットショップの「BOOTH」に新しい商品を追加3点しました。
https://masanao-m.booth.pm/

・「現代短歌」2022年5月号

「アイヌと短歌」の特集号で、私も長い論考を書いています。企画段階から関わった特集なので、多くの方にお読みいただけると嬉しいです。定価1000円のところ、500円(送料込み)で販売します!

・新作「海は見えない」10首(ダウンロード無料)
・「パンの耳」第5号チラシ(ダウンロード無料)

他にも、私の歌集・歌書・同人誌を取り揃えておりますので、ぜひ一度お立ち寄りください。無料でダウンロードできる作品や文章も多数載せてます。

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2022年05月31日

「リアルのゆくえ」展

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平塚市美術館で開催中の展覧会「リアル(写実)のゆくえ 現代の作家たち 生きること、写すこと」へ。高橋由一、松本喜三郎、安本亀八、平櫛田中といった著名な作家と現代の作家の作品が、「リアル」というテーマで一堂に会している。

お目当ては、ポスターにも使われている安本亀八の「相撲生人形」。野見宿禰と当麻蹴速の格闘を力感あふれる姿に作り上げている。まさに圧倒的な迫力だ。


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こちらは、会場入口前に展示されている本郷真也「盈虚―鐵自在イグアナ―」。鉄という素材でイグアナの質感を見事に表している。しかも、このイグアナ、動くのだ。滑らかな尻尾の動きはまるで生きているかのよう。

本物よりもニセモノの方が生々しい。

本物が本物であることに何の努力も要らないが、ニセモノを本物に見せるのは大変なことだ。その物の質感、性質、特徴などを細かく観察して再現しなくてはならない。

そこに、本物以上の何かが生まれることもあるのだろう。

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2022年05月30日

『子規紀行文集』のつづき

最上川の舟下りの場面。

本合海を過ぎて八面山を廻る頃、女三人にてあやつりたる一艘の小舟、川を横ぎり来つて我舟に漕ぎつくと見れば、一人の少女餅を盛りたる皿いくつとなく持ち来りて客に薦む。客辞すれば、彼益々勉めてやまず。時にひなびたる歌などうたふは、人をもてなすの意なるべし。餅売り尽す頃、漸くに漕ぎ去る。

舟下りをする客相手に商売をする舟の様子である。江戸時代に淀川の枚方付近で多く見られたという「くらわんか舟」を思い起こさせる。現代でも、保津川の川下りをすると終点付近でこうした舟が来る。今は観光用といった感じだけれど、昔はもっと生活感があったのだろう。そう言えば、タイの水上マーケットに行った時も、舟で淹れたコーヒーを買って飲んだ。

続いて、秋田県を歩いている場面。

夕日は傾きて本山の上二、三間の処に落ちたりと見るに、一条の虹は西方に現はれたり。不思議と熟視するに、一条の円虹僅に両欠片を認るのみにて、其外は淡雲掩ひ重なりて何事も見えざりき。こは普通の虹にはあらで「ハロ」となん呼ぶ者ならんを、我は始めてこゝに見たるなり。

「ハロ」(halo、日暈、白虹)の目撃談である。こうした科学的な目も持っているところが、子規の紀行文の多面的な面白さにつながっている。

posted by 松村正直 at 09:57| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年05月28日

週末

今日は東京で「ふらッと短歌」。
明日は神奈川に住む父を連れて美術館に行く予定。

天気は晴れのようで良かった。
だいぶ暑くなるみたいだけど。

posted by 松村正直 at 06:45| Comment(0) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年05月26日

「パンの耳」第5号を読む会

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6月12日(日)に神戸市東灘区文化センターで、魚村晋太郎さんを招いて「「パンの耳D」を読む会」を行います。どなたでもご参加いただけますので、参加希望の方はご連絡ください。

同人誌「パンの耳D」も販売中です。
https://masanao-m.booth.pm/items/3605117

チラシはこちら→パンの耳Dちらし.pdf

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2022年05月25日

復本一郎編『子規紀行文集』


子規の紀行文の中から「はて知らずの記」「水戸紀行」「かけはしの記」「旅の旅の旅」「鎌倉一見の記」「従軍紀事」「散策集」「亀戸まで」の八篇を収め、詳細な脚注を施したもの。

子規と言うとどうしても病床に寝ているイメージが強いのだが、この本に出てくる子規は明るくて元気。文章も生き生きしていて、実に楽しい。

例えば、松島を舟でめぐる場面の描写。

舟より見る島々縦に重なり横に続き、遠近弁(わきま)へ難く、其(その)数も亦(また)知り難し。我位置の移るを、覚えず海の景色の動くかと疑はる。一つと見し島の二つになり、三つに分れ、竪(たて)長しと思ひしも忽ちに幅狭く細く尖りたりと眺めむる山の、次第に円く平たく成り行くあり。

臨場感に溢れていて、子規のワクワク感がそのまま伝わってくる。
続いてもう一つ。三島から修善寺に乗合馬車で出掛けて徒歩で戻ってくる場面。

こゝより足をかへして、けさ馬車にて駆けり来りし道を辿るに、おぼろげにそれかと見し山々川々もつくづくと杖のさきにながめられて、素読(そどく)のあとに講義を聞くが如し。

一度馬車から眺めた風景を、今度は自分の足でたどっていく。その様子を「素読のあとに講義を聞くが如し」と書いた比喩が見事だ。

俳句も少し引いておこう。

涼しさや羽(はね)生えさうな腋の下
正宗の眼(まなこ)もあらん土用干
山の温泉(ゆ)や裸の上の天の河
唐きびのからでたく湯や山の宿
底見えて魚見えて秋の水深し

脚注にしばしば明治期の『日本名勝地誌』が引かれているのも良い。子規の旅した場所が、当時の人々にどのように認識されていたのかがわかって参考になる。今の記述ではダメなのだ。

2019年12月13日、岩波文庫、740円。

posted by 松村正直 at 13:37| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年05月24日

「ふらッと短歌」について

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5月28(土)に新宿で行う「ふらッと短歌」のことですが、川本千栄がケガによる入院のため参加できなくなりました。そこで、13:00〜14:00のトークは、山崎聡子さんと松村正直で行います。直前の急な変更となりますが、ご了承ください。

会場はJR新宿駅から徒歩9分の「中川ビル」3階の「ふれあい貸し会議室 新宿No18」です。

地図はこちら→https://goo.gl/maps/spvaeTHqiPN2

事前予約等は必要ありません。どうぞふらっとお立ち寄りください。入場は無料で、トークは各回1000円となります。

チラシはこちら→「ふらッと短歌」チラシ

posted by 松村正直 at 15:05| Comment(2) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年05月23日

今後の予定

下記のイベント、歌会、カルチャー講座に参加します。
多くの方々とお会いできますように!

・ 5月28日(土)ふらッと短歌(新宿)
 https://matsutanka.seesaa.net/article/488335773.html

・ 6月12日(日)「パンの耳」第5号を読む会(神戸)
 https://matsutanka.seesaa.net/article/486965996.html

・ 6月26日(日)第1回別邸歌会(姫路)
 https://matsutanka.seesaa.net/article/486730353.html

・ 7月23日(土)現代歌人集会春季大会(神戸)
 https://matsutanka.seesaa.net/article/487835749.html

・ 8月 6日(土)第2回別邸歌会(京都)
・ 8月27日(土)講座「啄木日記から見た短歌」(くずは)
 https://matsutanka.seesaa.net/article/488270405.html

・10月2日(日)第3回別邸歌会(滋賀)
・10月16日(日)シンポジウム(宮城)
・10月23日(日)文学フリマ福岡
・11月26日(土)『草に追はれて』を読む会(和歌山)
・12月11日(日)第4回別邸歌会(橿原)

posted by 松村正直 at 12:13| Comment(0) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年05月22日

講座「啄木日記から見た短歌」

8月27日(土)に朝日カルチャーセンターくずは教室で「啄木日記から見た短歌」という講座を行います。時間は13:00〜14:30。

教室受講とオンライン受講の両方ありますので、興味のある方はぜひご参加下さい。

【教室受講】
https://www.asahiculture.jp/course/kuzuha/2a607214-6ffc-c1e6-31e2-6257d8c59df4
【オンライン受講】
https://www.asahiculture.jp/course/kuzuha/ad7c6aca-05a5-a88c-7b5d-6257d9b4ca63

posted by 松村正直 at 23:51| Comment(0) | 石川啄木 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年05月21日

アイヌを詠んだ古い歌

国立国会図書館の「個人向けデジタル化資料送信サービス」や「次世代デジタルライブラリー」を活用すると、これまで調べられなかった資料が次々と見つかる。

アイヌを詠んだ古い歌をいくつか挙げてみよう。

柳田国男の1906(明治39)年の歌(『定本柳田國男集』第26巻)

  釧路にて
たまさかにとりてほしたるしらぬか(白糠)のあいぬかこふをぬらす雨かな

(附記)此歌ハ九月六日十勝ノ帯広ヨリ汽車ニノリ午頃白糠ヲ通リシニイト晴レタル日ニテアイヌ共浜ニ下リ水ニ入リテ昆布ヲ引上ゲ砂ノ上ニホセリアクル日帰リノ汽車ハ大雨ナルニ昨日ノ砂ノ上ノ昆布ハサナガラアリ人々可愛サウニ昆布ハクサルベシナドイフヲキヽテカクヨメル也

金子薫園編『凌宵花』(1905年)に収録されている歌

十勝野の夏をかざれる白すみれやさし愛奴(あいぬ)が髪にかざせり
               園田巨人
蝦夷酒に紅茄子めでゝ愛奴(あいぬ)らが軍(いくさ)がたりに雪の夜ふけぬ
               羅臼山人
愛奴らが蝦夷笛鳴らし山越えぬひとりひとりに馴鹿(となかい)つれて
               筒井菫坡『残照』(1908年)

まだまだ調べればいくらでも見つかる感じで、今後が楽しみだ。

posted by 松村正直 at 20:23| Comment(0) | 樺太・千島・アイヌ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年05月19日

「国際啄木学会研究年報」第25号

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「国際啄木学会研究年報」第25号を読む。

注目すべきは巻頭に掲載された論文「石川啄木とアイヌ」(安元隆子)。15ページにわたって、啄木とアイヌの関わりを記すとともに並木凡平や違星北斗の短歌も紹介している。まさに私の関心にドンピシャの内容で、こういう論文が読めるのは本当にありがたい。

啄木はアイヌと直接の関わりは持たなかったが、親友の金田一京助がアイヌ語学者だったこともあり、手紙や日記にアイヌに関する記述をいくつか残している。
https://matsutanka.seesaa.net/article/484953538.html

国際啄木学会に入会して良かった。

posted by 松村正直 at 19:40| Comment(2) | 石川啄木 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年05月18日

瀬川晶司『泣き虫しょったんの奇跡 完全版』


副題は「サラリーマンから将棋のプロへ」。
2018年に松田龍平主演で映画化もされている。

プロ棋士養成機関である奨励会を26歳の年齢制限で退会し、プロになる夢を絶たれた著者が、戦後初めてのプロ編入試験に合格して35歳で棋士となるまでの話。

本人の努力はもちろんのこと、両親と二人の兄、小学校の担任の先生、近所に住むライバル、将棋道場の席主、奨励会や棋士の友人など、多くの人の支えや励ましが印象に残る。

昭和45年横浜市生まれの著者と私は同じ年。小学校高学年の時に将棋ブームが訪れる話など、似たような境遇に育ったこともあり共感する部分が多かった。

幼少時に「タオル姫」と呼ばれていたとあり、こんな話が出てくる。

大きなタオルケットを体に巻きつけて、いつもズルズルと引きずって歩いていたからだ。タオルケットには絶対に代わりはきかないお気に入りの一枚があって、外出するときもそれを引きずっていたらしい。

「ライナスの毛布」(安心毛布)だ! 私も全く同じでいつもタオルケットを持ち歩いていた。何とも懐かしい。

2010年2月13日第1刷、2018年8月6日第9刷。
講談社文庫、640円。

posted by 松村正直 at 23:27| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年05月17日

川嶋康男『ラストアイヌ』


副題は「反骨のアイヌ歌人森竹竹市の肖像」。

アイヌの詩人・歌人、森竹竹市(1902‐1976)の評伝。森竹の生涯をたどりつつ、その行動や作品を読み解いている。違星北斗や並木凡平との交流や国鉄での仕事など、森竹の思想のもとになった出来事がよくわかる。

なぜこうもウタリは自身を卑下するか平等に生きやう自尊心持て
視察者に珍奇の瞳みはらせて「土人学校」に子等は本読む
ウタリからガンヂー出でよ耶蘇出でよ殉愛の士が一人出たなら
川に鮭山に熊なく耕すに土地なきウタリは何処にゆくのか
シャクシャインの意図貫徹しておれば蝦夷地はとうにアイヌ王国

2020年3月25日、柏艪舎、1500円。

posted by 松村正直 at 17:28| Comment(0) | 樺太・千島・アイヌ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年05月15日

国際啄木学会2022年度春のセミナー

今日は13:00から国際啄木学会の春のセミナー(明星研究会との共催)がZOOMを使って行われた。

研究発表(各30分)が3つと講演(100分)が1つという内容。

・「晶子の小説『呂行の手紙』の分析ージェンダーの
  視点から」
   アロラ・シュエタ(シンガポール国立大学大学院)
・「明治四十四年一月十八〜二十五日における啄木日記と
  新聞報道について」
   目良卓(国際啄木学会会員)
・「啄木を詠む吉井勇――「渋民村訪問記」をめぐって」
   細川光洋(静岡県立大学)

・「「血に染めし歌」とは何か〜「明星」初出の啄木短歌を
  めぐって」
   松平盟子(歌人・『プチ★モンド』代表)

さまざまな観点から調査・研究・分析をしている方々がいることに、あらためて感心する。晶子の小説も読んでみたい。

posted by 松村正直 at 21:34| Comment(0) | 石川啄木 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年05月14日

梶井照陰『限界集落』


副題は「Marginal Village」。

僧侶で写真家である著者が、各地の限界集落の姿を写真と文章で描いたフォトルポルタージュ。

取り上げているのは、新潟県佐渡ヶ島、山梨県芦川、新潟県鹿瀬、熊本県球磨村、長野県栄村、北海道初山別村、山形県西川町、徳島県一宇、東京都檜原村、和歌山県高野町、石川県門前町、京都府五泉町。

旧芦川村は山梨県中部にある僻村である。芦川渓谷に沿って4つの集落が点在し、其処で暮らす人々はこんにゃく芋やほうれん草などを栽培しながら生活している。その集落の一つで、芦川の下流域に鶯宿集落がある。芦川渓谷のX字谷に67戸の民家が立ち並び、斜面に築かれた石積みの美しい集落だ。

「鶯宿」という言葉にピンとくる。山崎方代の〈生れは甲州鶯宿峠(おうしゅくとうげ)に立っているなんじゃもんじゃの股からですよ〉に出てくる地名だ。調べてみると、方代の母がこの鶯宿の出身だったらしい。

「むかしの人は難儀したんだ。お産をしても2週間ぐらいで畑仕事や桑採りにいかねばなんねがった」(…)「最近は生活も楽になったのにな。集落からは若者がいねぐなってしまったハ」
「合併したら村の財政はよくなるって聞いたけどな。合併したらどんどん生活は不自由になりよる」
「以前はこの集落にも大勢の人がいたけどな。今は買い物にくるのは、ひでさんとちよちゃんの2人だけになってしまったな。ほかは足が弱くなって山からおりてこられなくなったりしちまってさ」

集落に暮らすお年寄りの話から、その土地の歴史や産業、生活の様子が浮かび上がってくる。その一言一言が、重く胸に迫る。

2008年2月8日、フォイル、1400円。

posted by 松村正直 at 21:53| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする