「未来」所属の作者の第1歌集。
塩水にリンゴウサギは浸される ワニを騙した報いのように
太陽じゃないとうすうす気づいてるような形に伸びる豆苗
水槽の反射が頭上にゆらめいて生物室はいつも眠たい
一筋の道の向こうは月曜が燃やせるゴミの日じゃない世界
死ばかりを見せてごめんね薄布で軽く拭って真珠を仕舞う
奇石博物館にて
自らの名に「石」の字があることを学芸員は嬉しげに言う
隣家には隣家のためのお母さん二十三時の掃除機の音
窓側のベッドは差額 二千円の夜景をスマホのカメラに収める
蛇行しているのは川か我々か 空知川こえまた空知川
他をすべて「はずれ」にしてやろうなんて星形のピノは思っていない
1首目、変色防止のために浸した姿から因幡の白兎へと連想が飛ぶ。
2首目、台所の照明の下でひょろひょろと伸びて再利用される豆苗。
3首目、上句の描写がいい。高校時代の気怠い感じがよく出ている。
4首目、地域によって収集日が異なる。「世界」と言ったのがいい。
5首目、葬儀や法事の時にだけ身に着ける真珠のネックレスのこと。
6首目、きっと石のことが好きで好きでたまらない人なのだろうな。
7首目、一家に一人「お母さん」をする人物が配属されている感じ。
8首目、四人部屋の窓側は割増料金。それでも入院中の心がなごむ。
9首目、空知川に沿って走る根室本線。列車で旅する体感が伝わる。
10首目、星形を「あたり」と思うと通常の形は「はずれ」になる。
2025年9月29日、短歌研究社、2300円。









