2026年07月08日

『もっと知りたい 速水御舟 生涯と作品』


監修:尾崎正明
執筆:古田亮、鶴見香織、吉田春彦

いつからか速水御舟が好きになって美術館によく行くようになった。そんな速水御舟の人生と作品の変遷について解説した本。

作風に大きな違いがありながら、どの作品にも御舟らしさが必ず表われている。初期の《京の舞妓》と晩年の《花の傍》を例にとると、前者はものの存在の確かさに迫ろうとした写実的描写であり、後者は装飾性を意識した平面的な画面処理であって、二つの間の隔たりは大きい。しかし、表現に対する態度にはまったく違いがない。
おそらく、ではあるが、御舟が次男であったということも画家の誕生には有利に働いたことだろう。蒔田家は長男が継ぎ、御舟は一五歳で母方の祖母速水きくの養子となっている。父親には、御舟が絵の道に進むことについて反対する理由が特段見当たらなかったはずである。
「梯子の頂上に登る勇気は貴い、更にそこから降りてきて、再び登り返す勇気を持つ者は更に貴い。大抵は一度登ればそれで安心してしまふ。そこで腰を据へてしまふ者が多い。登り得る勇気を持つ者よりも、更に降り得る勇気を持つ者は、真に強い力の把持者である。」(速水御舟語録)

「鍋島の皿に柘榴」(1921年)、「樹木」(1925年)、「翠苔緑芝」(1928年)など、いつか実物を見てみたい。

2009年10月15日第1刷、2019年7月20日第5刷。
東京美術、1600円。

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2026年07月07日

小林万里・大泰司紀之編『北方四島の動物たち』


副題は「日露隣接地域の生態系とその保全」。

北方四島(択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島)の自然については、以前から興味を持っている。

・大泰司紀之・本間浩昭著『知床・北方四島―流氷が育む自然遺産』
https://matsutanka.seesaa.net/article/387138419.html
・NHK取材班『北方四島・千島列島紀行』
https://matsutanka.seesaa.net/article/408701728.html

本書では、北方四島に生息するサケ、マス、ヒグマ、コウモリ、ネズミ、クジラ、イルカ、アザラシ、トド、ラッコ、オジロワシ、オオワシなどについて、それぞれの専門家が状況を記している。

江戸時代、松前藩の家老・蠣崎波響が描いたアイヌ指導者12人の肖像画「夷酋列像」の中に、褐色と白色の子グマ2頭を連れたアイヌの総首長の息子・イニンカリの絵がある。これまで、この白色の子グマはホッキョクグマである可能性も考えられてきたが、国後島に白い体毛のヒグマが生息しているという情報から、国後島由来の個体である可能性が高まった。
ゴマフアザラシは北太平洋の固有種であり、流氷期(3月)に流氷上の辺縁部で出産・育児を行なう、流氷依存型のアザラシである。
オホーツク海周辺のトドは全体として安定、もしくはやや増加傾向にある。それに大きく寄与しているのがサハリン中部のオホーツク海側にあるチュレニー島だ。チュレニー島はもともとキタオットセイの一大繁殖地で、かつてはその毛皮を目的とした猟業が盛んに行なわれていた。
時は江戸時代にまで遡る。北海道本島の東部や国後島や択捉島などの島々ではオオワシ、オジロワシの尾羽が特産品とされ、両種にとって重要な越冬地であったことが、当時の狩猟記録などから海ワシ類の生息状況を調べた池田圭吾博士によって明らかにされている。

この本を読んであらためて感じるのは、自然界の生きものには国境がないということだ。魚も鳥も海獣類も国境線を越えて自由に行き来している。

北方四島に関する調査や研究にはロシア側との協力が欠かせない。早く日本とロシアの関係が改善して、北方四島を自由に訪れることができるようになってほしい。

2026年3月30日、ヤマケイ新書、1400円。

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2026年07月05日

現代歌人集会春季大会

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雨。13:00から大津市民会館で開催された「現代歌人集会春季大会」に参加した。

大会テーマは「河野裕子 ― その歌と表現」。河野の歌は人生や家族の物語とともに語られることが多いが、今回はそうではなく歌の表現に即して話をするという主旨であった。

プログラムは下記の通り。

・島田幸典 基調講演「河野裕子作品の表現を読む」
・栗木京子 講演「河野裕子の世界 ― 時間と空間の遠近法」
・パネルディスカッション「河野裕子のうたを読む」
   大森静佳、門脇篤史、馬場めぐみ

それぞれに面白く、河野作品の魅力をあらためて感じさせられた。

途中、永田和宏さんから『河野裕子全歌集』が近いうちに出るという話もあった。河野さんが亡くなって今年で16年。河野さんの歌集が若い世代の人たちにも広く読まれるようになるといいなと思う。

posted by 松村正直 at 22:57| Comment(0) | 河野裕子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2026年07月04日

「あなたを想う恋のうた」作品募集

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第28回万葉の里「あなたを想う恋のうた」(福井県越前市)の作品募集が始まりました。今年も松平盟子さん、紺野万里さん、藪内亮輔さんとともに審査員を務めます。

最優秀賞(1首)10万円、優秀賞(3首)3万円、秀逸(10首)1万円、佳作(15首)5千円、入選(34首)1千円(QUOカード)などの豪華な賞があります。

締切は10月31日。投稿は無料で、ネットからも応募できます。ご応募お待ちしております。

https://manyounosato.com

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2026年07月03日

住吉カルチャー&フレンテ歌会

10:00から神戸市東灘区文化センターで住吉カルチャー。会場の都合でいつもより30分早い開始となった。

参加者は15名。今日は田村穂隆さんの第2歌集『霧に貌』を取り上げた。斬新な発想や生々しい身体感覚に驚かされる。

昼食を挟んで、13:00から同じ場所で第102回フレンテ歌会。参加者は16名。

「川」を詠み込んだ3首連作、計48首について議論する。一首一首の完成度はもちろんのこと、3首の流れがうまくいっているか、全体のまとまりはどうかなど。

17:00終了。近くの「かごの屋」で夕食&お喋り。

「住吉カルチャー」「フレンテ歌会」ともに毎月第1金曜日の開催、参加者募集中です。興味のある方はご連絡ください。

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2026年07月02日

『啄木ごっこ』収蔵状況(5)

全国の図書館にどれくらい『啄木ごっこ』が収蔵されているか、時々確認しています。

その後、新たに北海道函館市中央図書館、青森県立図書館、千葉県銚子図書館、京都教育大学図書館、兵庫県神戸市中央図書館、鳥取県境港市民図書館などが加わりました。ありがとうございます。

4月21日 37館(14冊貸出中)
4月28日 51館(25冊貸出中)
5月 6日  69館(31冊貸出中)
5月29日 102館(38冊貸出中)
6月12日 108館(36冊貸出中)
7月 2日 122館(50冊貸出中)

現在、図書館に一冊も置いていない都道府県は、群馬、新潟、島根、岡山、広島、愛媛、香川、大分、沖縄となっています。

引き続き、『啄木ごっこ』のご購入、または図書館への購入リクエストをよろしくお願いします!

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2026年07月01日

雑詠(063)

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表札の文字の薄れて死にゆくか高台に古き屋敷はならぶ
名乗られるまではどなたかわからずにカフェに頷く顔を見ていた
殺されるまでの三日を懸命に駆けて泳いで身をかくす熊
焼き鳥を炭火の前に焼くひとがマスクずらして氷を含む
三十四年会わない友は飛島(とびしま)に住んで漁師をしているそうな
港町の古書店を出て路地行けばここでも風の支流に出会う
自転車で通りの朝を駆けてゆく高校生は声のあかるさ

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2026年06月30日

角館・秋田(その4)

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若山牧水&旅人親子の歌碑。
千秋公園(久保田城跡)に立っている。

鶸めじろ山雀つばめなきしきりさくらはいまだひらかざるなり/牧水
旅さなか秋田にやどりし父のうたふかきゑにしに今日きざまれぬ/旅人



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城跡からの眺めはこんな感じ。


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秋田市民俗芸能伝承館「ねぶり流し館」に展示されている竿燈。

毎年8月に行われる「竿燈まつり」で使われるもの。
一度、祭りの本番を見てみたいものだ。


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伝承館に隣接する「旧金子家住宅」。

1854年に質屋・古着商を開業し、1871(明治4)年に呉服・太物卸商の「金子商店」を創業、昭和50年まで営業していたそうだ。


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店の内部はこんな感じ。

奥には和室や土蔵などもあって、かなり広い。


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秋田市立赤れんが郷土館。

1912(明治45)年に旧秋田銀行本店として竣工した建物で、重要文化財に指定されている。


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営業室。
2階まで吹き抜けになった広々とした空間。


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2階の貴賓室。

「角館・秋田」の旅は以上です。

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2026年06月29日

角館・秋田(その3)

先月の旅の話のつづき。
角館駅から秋田内陸縦貫鉄道に乗る。

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以前から一度乗ってみたいと思っていたローカル線。
秋田県の内陸部を南北に走っている。


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角館〜鷹巣の94.2km、29駅を約2時間40分で結んでいる。
車内のいたるところに、犬の写真やデザインがあった。


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昔ながらの開けられる窓。
田植えの始まった5月の風が最高に気持ちいい。


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単線なので、両側から景色が迫ってくる感じ。

これで2時間以上乗って1700円って、遊園地に行くよりよほど楽しいと思う。


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阿仁川に架かる大又川橋梁からの眺め。

全長156メートル、高さ28メートル。観光客向けにアナウンスがあって橋の上で停車してくれた。

終点の鷹巣駅でJR奥羽本線に乗り換えて秋田駅を目指す。
角館→鷹巣→秋田と逆Vの字に南へ戻る感じだ。


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秋田駅で出迎えてくれた巨大な秋田犬のぬいぐるみ。


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同じく巨大ななまはげの面。

秋田は私の父のふるさとでもある。

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2026年06月28日

安達宏昭『大東亜共栄圏』


副題は「帝国日本のアジア支配構想」。

「大東亜共栄圏」と言えば、戦時中に日本が掲げたスローガンとして知られ、悪名が高い。一方で、アジア解放のための戦争だったと主張する人たちの論拠にもなっている。

この本はそうした善悪の判断をするのではなく、当時の日本が何を目指し、どのような理由で「大東亜共栄圏」を掲げ、それがなぜ挫折したのかを丁寧に分析している。知らなかったことも多く、非常にためになる一冊であった。

大東亜共栄圏については、「八紘一宇」や「アジアの解放」といったスローガンとともに語られることが多く、近代日本のアジア主義の系譜から読み解くこともできよう。しかし、大東亜共栄圏はそうしたイデオロギーではなく、経済的な自給確保こそが本質だった。
アメリカとの経済関係は、日本が中国と戦争をするために必要だった。日中戦争は、英米に経済的に依存しながらの戦争だった。一方、アメリカも中国との貿易を閉ざさないために、中立法の適用には慎重だった。
松岡はソ連に働きかけて、日独伊ソ四国協商の力で英米に圧力をかけて独英講和を斡旋する、さらに日米交渉を経て日本・ドイツ・イタリア・ソ連・アメリカ・イギリスの間に「平和条約」を締結し、ソ連、アメリカ、イギリスとも共栄圏を相互に承認することを思い描いていた。
各企業は政府・軍に対して開発地を申し込み激しい獲得競争をしたが、企業は利益追求だけでなく戦中に実績をつくり、戦後もその事業を獲得したい意図があった。戦後に向けた利権の争奪戦だった。
大東亜新政策が、名目上であれ「自主独立」を掲げた以上、東南アジアの対日協力者たちは、その論理を逆手にとって自己主張し、日本が設定した秩序の枠組みからでも、抵抗の声を上げていた。

私たちは、1945年8月15日の敗戦から遡って戦争について考えてしまうけれど、戦前・戦中の人はそうではない。戦争に勝利したり、講話が結ばれたりといった未来を見据えて行動している。その違いを認識することが大事なのだと思う。

レアアースや石油の確保をめぐるニュースがしばしば話題になるのを見れば、80年前も今も事態はさほど変っていないのだろう。

一九四三年一月一四日、大本営政府連絡会議は「占領地帰属腹案」を決定する。これにより、ビルマとフィリピンの独立が決まった。この案では、独立の条件として両国には軍事的に共同防衛を約束させる、日本軍の駐屯と軍事基地使用を認めさせ、外交・経済では緊密な提携や協力をさせることが明記された。

ずいぶん虫のいい話だと誰もが思うだろう。ビルマやフィリピンを完全に子分扱いしている。

一方で、これが敗戦後の(反転した)日本の姿であることにも気が付く。1951年のサンフランシスコ平和条約と日米安全保障条約締結によるアメリカと日本の関係は、まさにこうした「親分−子分」で成り立っていたのであり、その状況は今でも続いているのだ。

2022年7月25日、中公新書、880円。

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2026年06月27日

米川千嘉子歌集『スナバコノキ』

角川文化振興財団
発売日 : 2026-05-25

2022年から2025年までの作品459首を収めた第11歌集。

九十二の母がこのごろよく使ふ言葉「めっちゃ」はどこから来たか
このひとはもう死にたるか生きゐるか思ふをやめて映画見てをり
わが友は宗教二世を産みたるか返事出さざる古手紙あり
綿の実の軽さかなしむ一日に百キロを摘む労働あれば
節目ありて悩める夫を見てをりぬ節目なきながき時間を生きて
ゼレンスキー氏平和のための武器を乞ふ広島はくろき青葉にまみれ
双六は一本道でありけるを蜘蛛の巣状の人生の道
病人の家に亀ゐる水槽は悪しとぞ 消えし水槽と亀
父を恋ふこころだけ母に残りをり少し恨みしはわれが記憶す
青年はわれよりわれの息子よりふかき笑顔で母を笑はす

1首目、テレビで見たのか若者と話すことでもあったのか気になる。
2首目、古い映画に出ている俳優の生死についてつい考えてしまう。
3首目、宗教の勧誘の手紙だったのか。仲の良い友だったのだろう。
4首目、発想が逆転している歌。もっと重ければ早く到達するのに。
5首目、定年を迎える夫と定年のない主婦である自分の人生の違い。
6首目、G7広島サミット。「平和のための武器」とは大きな矛盾。
7首目、子どもの頃に思い描いていた人生の姿と現実の人生は違う。
8首目、迷信に過ぎないと思っても病人のために処分するしかない。
9首目、良い思い出だけが残る姿を複雑な思いで見ているのだろう。
10首目、施設の職員の笑顔。家族同士の方がうまくいかないもの。

2026年5月27日、角川文化振興財団、2700円。

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2026年06月25日

「戦争の歌」No.7

今年も8月に野兎舎主催のオンラインイベント「戦争の歌」の7回目を開催します!

詳細については後日またお知らせします。
どうぞお楽しみに。

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2026年06月24日

「短歌研究」2026年7・8月号

「短歌研究」7・8月号に、『啄木ごっこ』の書評(嵯峨直樹「国民的歌人「啄木」の誕生」)が載りました。

また、短歌時評(門脇篤史「書き起こすこと、書き残すこと)でも、吉川宏志『一九七〇年代短歌史』、梶原さい子『震災短歌ノート』と一緒に『啄木ごっこ』を取り上げていただきました。

ありがとうございます。

お二人とも、〈はたらけど/はたらけど猶(なほ)わが生活(くらし)楽にならざり/ぢつと手を見る〉の初出と歌集収録時の違いの話に言及してくださってます。それについては、先月の講演「言論統制と啄木」でも詳しく話をしました。

ご興味のある方は YouTube でご視聴ください。43分50秒あたりから講演が始まります。
https://www.youtube.com/watch?v=12uxc2eS0lQ

講演のレジュメはこちらです。
講演「言論統制と啄木」レジュメ.pdf

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2026年06月23日

第27回別邸歌会

昨日は「横浜市大倉山記念館」で第27回別邸歌会を開催した。


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東急東横線「大倉山駅」から、かなり急で長い坂道をのぼった先に現れる白い建物。ギリシア神殿風の外観や、正面階段を上って入ると2階になっている構造など、不思議なことがいっぱい。

もともと1932(昭和7)年に「大倉精神文化研究所」の本館として建てられたもので、横浜市指定文化財になっている。

設計は辰野金吾の弟子で、日本銀行の支店を数多く手掛けたことで知られる長野宇平治(1867ー1937)。


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会場は2階の第6集会室。

参加者16名の計32首について、13:00から17:00まで約4時間かけてひたすら議論した。

歌会で大切にしているのは、老若男女問わず、幅広い世代の多様な人が集まる場であること。そして、参加者一人一人が対等な立場でものが言えること。

その理想を目指して、これからも別邸歌会を続けていきたい。

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2026年06月22日

角館・秋田(その2)


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角館樺細工伝承館。

伝統工芸品の樺細工の展示や解説、実演、販売などを行っている。樺は白樺ではなく桜の樹皮のことだと初めて知った。


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樺細工をふんだんに使った和室。

樹皮の模様を活かしたデザインが美しい。


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河原田家(武家屋敷)。

明治24年に建てられた主屋から眺めた庭。盛岡高等農林学校の同級生だった宮沢賢治から結婚祝いに贈られたというユリノキもあった。


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伊保商店(イオヤ)。

武家屋敷以外にも、町を歩いているとこんな素敵な建物に出会える。大正13年竣工の三階建ての洋風建築。


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学法寺にある平福百穂の墓。

東京の多磨霊園にも墓があるようだ。


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学法寺を訪れた斎藤茂吉の歌。

1947(昭和22)年6月19日、茂吉は角館を訪れて「角館」5首(『白き山』)を詠んでいる。

おのづから心平らになりゐたり学法寺なるおくつきに来て
たかだかと空しのぐ葉広槲木(はびろかしはぎ)を武士町とほりしばし見て居る
松庵寺に高木となりし玄圃梨(げんぽなし)白き小花の散りそむるころ
春ごとにしだり桜を咲かしめて京しのびしとふ女ものがたり
武士町の家のつくりのなごりをもめづらしくして人に物いふ


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安藤醸造本店。

明治17年に建てられた母屋と明治24年の煉瓦造りの蔵(蔵座敷)などがあり、内部が公開されている。「醬油あいす」を買って蔵の中でいただいた。


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菅江真澄終焉の地。

神明社の入口わきに立っている。江戸時代に東北や北海道を旅して多くの紀行文を残した人で、晩年は秋田に住んだ。
https://matsutanka.seesaa.net/article/499671705.html

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2026年06月21日

角館・秋田(その1)

先月、国際啄木学会で盛岡を訪れたあと、角館・秋田を観光した。


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新潮社記念文学館。

新潮社を創業した佐藤義亮(1878−1951)は角館の出身。『啄木全集』全3巻(新潮社、1919〜1920)の刊行は、『啄木ごっこ』にも書いた通り、この人の決断によるらしい。そのお礼も兼ねて(?)訪れた。


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川端康成『雪国』のページが蔵の扉のようなオブジェになっている。


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平福記念美術館の前庭に立つ平福百穂の歌碑。

うつろえる川の流れを見るにさへ年ふりにけり国を出しより
ひとときに芽吹き立ち匂ふみちのくの明るき春にあひにけるかも

「アララギ」の歌人でもあった画家の平福百穂(1877−1933)も角館の出身。
https://matsutanka.seesaa.net/article/387138660.html


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角館中学校校歌の歌稿碑。

美術館があるのは、かつて角館中学校があった場所。中学校の校歌は平福が島木赤彦に依頼したものの途中で亡くなり、その後を斎藤茂吉が補作して、書簡による推敲を経て完成したものらしい。

歌詞に茂吉の朱が入った歌稿がそのまま碑になっている。これは、素晴らしいな。

美術館はシダレザクラで有名な武家屋敷通りの一番北にあるので、そこから南へと歩いて行く。


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石黒家(武家屋敷)。

一般公開されているが、今も石黒家の方がお住まいになっているそうで非公開の部屋もある。観光シーズンはきっと大変だろう。


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欄間の亀の透かし彫り。

スタッフの方が丁寧に見どころを一つ一つ解説してくださる。


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欄間を通った光が壁に亀の姿を映し出す。

なるほど、そういう仕掛けになっているのか。昔の人はおしゃれなことを考えるな。


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青柳家(武家屋敷)。

3000坪の広大な敷地に、母屋のほか、解体新書記念館や秋田郷土館などの建物が点在している。


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魔除けの猿の頭蓋骨。

薄暗い場所で見ると、けっこう怖い。

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2026年06月20日

映画「オーロラの涙」

監督・脚本:ローラ・カレイラ
出演:ジョアナ・サントス、イネス・バズほか

イギリス・ポルトガル合作、原題は「On Falling」。

イギリスの物流倉庫で商品のピッキングの仕事をするポルトガルからの移民の主人公(オーロラ)を描いた作品。一日中単調な仕事をこなし、シェアハウスでぎりぎりの生活を続けている。

仕事中は手に持った端末の指示通りに働き、休憩時間や食事中は手に持ったスマホを見ている。そのあたりが、いかにも現代的だ。

人間が巨大なシステムに飲み込まれ、その一部となって動き続ける。ラストで会社のシステム不具合により仕事がストップしたときに、はじめて働く人々が笑顔を見せたのが印象的だった。

Amazonのことや何やら、いろいろと考えさせられる。

出町座、104分。

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2026年06月19日

森まゆみ『野に遺賢をさがして』


副題は「ニッポンとことこ歩き旅」。

2018年〜2023年に『地域人』に連載した「暮らすように町に泊まる」の中から17篇を選び、加筆修正してまとめたもの。

全国各地を訪ねて、そこに住む人々、特に地域の活性化や町並み保存、新しい取り組みをしている人などに話を聞いて回った旅行記。

訪れている場所は、宮崎県高千穂町、北海道砂川町、埼玉県川口市、高知県室戸市、神奈川県茅ケ崎市、岩手県盛岡市など。

「かみすながわ炭鉱館」というのも夏場しか開いていないようだったし、「無重力科学館」というのも閉鎖されたようだった。バブルの時に観光を当て込んで造ったが人が来ず、人件費、光熱費が入館料をはるかに上回ったのに違いない。私は驚かなかった。北海道にはこのように、造られたが開かれていない観光施設があちこちにあるからだ。
午後は足袋蔵を見て歩く。リンゴやお茶の蔵は温度管理が大事だが、足袋は蒸れたり腐ったりはしないので、窓のない小屋裏のない蔵が多い。と言っても、漆喰壁、木の壁、トタン壁、石壁、いろんなタイプがある。ほとんどが家の奥にあるため見つけにくい。蔵を壊すのは費用がかかるので、工場や住宅は壊しても、蔵だけ残る。
市川は東京の郊外で、静かな環境を求めて文化人の多く住むところだった。大正時代は画家が多かった。戦後は、空襲で焼け出された幸田露伴や永井荷風が住んでいた。幸田文が父の死を看取るか「菅野の記」というのは、市川市菅野のことだ。
珈琲でも飲みますか、と「大菩薩峠」という名前の喫茶店へ。今まで見た自力建設の建物で五本の指に入る面白さ。レンガを自分で積み上げて造った迷路みたいな建築で、今も建設中である。

おお、「大菩薩峠」!

ここは私も2年前に訪れたことがある。懐かしい。
https://matsutanka.seesaa.net/article/503188791.html

2025年6月2日、亜紀書房、2000円。

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2026年06月18日

山下泉歌集『光の肖像』

著者 : 山下泉
砂子屋書房
発売日 : 2025-12-08

2012年から2023年までの作品を収めた第3歌集。

わが夢に入りたる熊よ三日のち宇佐にて出会うその剝製に
百済観音パリ空港に降り給う蛹のように白く捲かれて
うすやみに冀願(きがん)する人ひそみいる旧病棟の庭をよぎれば
夕雲の明かりに寄りて書いているわれの後ろの影をいとしむ
シャガの花飛び立ちそうな谷の道剝がれた風を踏みながら行く
ざんねんな探偵としてわれはわれに雇われいたり今日も推理す
感情はときにわれより長身で水楢の若葉ふれながら行く
ひんやりと錫のコップののこる部屋 母に買いしは夏だとわかる
天満宮には五つの丸を焼鏝で押す文様の梅がまたたく
病廊にみっしり夏の山せまり漆黒と旅愁の見分けがつかぬ

1首目、夢のお告げだったのか。順序が反対なら何でもないのだが。
2首目、ルーブル美術館での展示のため厳重に梱包された謎の姿で。
3首目、病気が治ることを願い続けて叶わなかった人の霊だろうか。
4首目、明かりに向ってものを書くとき必ず背後には影が生まれる。
5首目、シャガはひらひらと飛びそうな花。「剝がれた風」もいい。
6首目、ユーモアのある歌。問題を解決できないダメな探偵なのだ。
7首目、感情が身体から溢れ出る。形がないからいくらでも大きく。
8首目、母が亡くなった後の歌。冷たい飲み物に向いているコップ。
9首目、本物の梅ではなく名物の梅ヶ枝餅がたくさん売られている。
10首目、死が近い夫を見舞う。廊下の暗さに自分の心も見えない。

あたたかい座席にたまに隣り合いモルゲンシュテルンの噂などする

おお、モルゲンシュテルン!
短歌に詠まれたのを見るのは初めてかもしれない。

https://matsutanka.seesaa.net/article/484388876.html

2025年11月21日、砂子屋書房、3000円。

posted by 松村正直 at 20:39| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2026年06月17日

『啄木ごっこ』の書評・感想

3月に刊行した『啄木ごっこ 多面体の肖像』の書評・感想などが少しずつ出始めています。ありがとうございます!

・恒成美代子ブログ「暦日夕焼け通信」(4月9日)
  http://rekijitsu.cocolog-nifty.com/blog/2026/04/post-4f91f6.html
・岩手日報「郷土の本棚 本当の姿はどこまで」(4月26日)
  https://www.facebook.com/photo/?fbid=1280542677614728&set=a.113242544344753
・富田睦子「短歌はいま」(共同通信4月配信)
・藤野早苗ブログ「南の魚座 福岡短歌日乗」(5月5日)
  https://minaminouo.exblog.jp/38600496/
・門哉彗遙note(5月11日)
  https://note.com/hull1960/n/nf667b5e008f6
・寺阪誠記note(5月12日)
  https://note.com/teratanka/n/na4e64efd3b92
・内山晶太 時評「グレーを見続けようとする目に」(「歌壇」6月号)
・「週刊エコノミスト」6月2日・9日合併号「話題の本」
  https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20260519/se1/00m/020/003000d
・菱岡憲司ポッドキャスト「本語り」(6月7日)
  https://note.com/hishiokakenji/n/nd95123af4bd4
・良真実 書評「隣町の石川さん」(「現代短歌新聞」7月号)
・加古陽「短歌遊行」(「東京新聞」6月13日)
  https://www.tokyo-np.co.jp/article/494646

近年、書籍の出版・流通をめぐる状況はどんどん悪くなっています。いつか買おうと思っていても、売行きが悪ければあっという間に絶版となり、在庫も処分されてしまいます。

引き続き、『啄木ごっこ』のご購入、SNS等での宣伝、お知り合いへのプレゼント、図書館への購入リクエストなど、ご協力よろしくお願いします!
posted by 松村正直 at 19:15| Comment(0) | 石川啄木 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする