副題は「海獣学者の孤軍奮闘記」。
「イルカと話したい」という夢を抱いて海獣学者となった著者が、手探りでイルカの知覚や認知に関する実験を続けてきた半生を振り返って記した本。
「フィン→⊥」はできるのに、その逆の「⊥→フィン」ができない。(…)おそらく、動物の生態においては何かを逆に考えるということは少ないのかもしれない。
日本で最も飼育されているのはバンドウイルカという種で、水族館のショーでもおなじみのイルカである。このイルカには別名「ハンドウイルカ」という呼び名もあり、現在、日本では両方の名前が存在している。
「バンドウ」と「ハンドウ」、実にまぎらわしい。
好きなことに挑むというのはそれなりの負荷もあるわけで、やりたいことがそのままできる人は多くない。皆、何かしらの紆余曲折を経由する。その一つが失業である。
水族館人にとっては誰でも知っている当たり前のことが研究者には初耳だったということはよくある。
このあたりの研究者の苦労や喜びは、おそらく他のさまざまなジャンルにも当てはまることだろう。
2021年9月20日、新潮新書、780円。