2013年09月29日

映画「ソレイユのこどもたち」

監督・撮影・録音・編集:奥谷洋一郎

多摩川の河口付近で廃船に住む男の生活を追ったドキュメンタリー。大袈裟な演出は何もなく、淡々と男の日常が映されていく。しかし、その抑制の効いた撮り方は、おそらく監督の明確な方法論と意志に基づくものである。

男は犬を飼い、野菜を育て、コンロで魚を調理し、モーターボートの修理などでわずかな現金を得て暮らしている。現代社会の枠組みから外れ、都市の狭間に生きる男の姿を通じて、われわれ(と言っていいのか)現代社会や都市の姿までもが浮き彫りにされてくる。

映画の終り近くになって、ようやくタイトルの意味がわかる。「ソレイユ」(太陽)のこどもたち。それははたして希望を意味しているのかどうか。

京都みなみ会館、104分。

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2013年09月06日

映画「江ノ島プリズム」

監督:吉田康弘、出演:福士蒼汰、野村周平、本田翼。

江ノ島を舞台に、幼なじみの3人の高校生が織り成す恋と青春の物語。ストーリーはやや甘いのだが、江ノ電や湘南の町並みが登場して、懐かしさを覚える。

江ノ島は子どもの頃に遠足や旅行でよく行った場所だが、もう20年以上行っていない。

元・立誠小学校特設シアターにて。90分。

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2013年08月28日

映画「風立ちぬ」

原作・脚本・監督:宮崎駿。

(以下、映画の内容に触れています)

評価の難しい作品。

歴史モノとして見れば面白く、関東大震災(1923年)、昭和恐慌(1930年)、上海事変(1932年)、国際連盟脱退(1933年)など、大正末から昭和の初めにかけての時代の空気がよく描かれている。当時の風景や風俗、特に上流階級や知的エリートの暮らしぶりがよくわかる。

一方で、物語としては物足りなさを感じる。登場人物の感情の描き方に深みがなく、あまり心を動かされなかった。飛行機作りの話も、恋愛の話も、どちらも中途半端な印象を受けた。

劇中に「シベリア」という名前の、餡子を挟んだカステラのお菓子が出てくるが、いかにも戦前のネーミングだと思う。シベリア抑留のイメージが強い戦後であれば、こういう名前が付けられることはなかっただろう。

MOVIX京都、126分。

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2013年08月13日

映画「SHORT PEACE」

監督:森田修平、大友克洋、安藤裕章、カトキハジメ。

「九十九」「火要鎮」「GAMBO」「武器よさらば」の4つの短編アニメから成るオムニバス。1編あたり十数分という短さであるが、絵やグラフィックの美しさには眼を奪われる。

それぞれタイプの違う作品の競演であるが、「武器よさらば」が一番良かった。これは、大友克洋の原作をアニメ化したもの。

MOVIX京都、68分。

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2013年07月25日

映画「俺はまだ本気出してないだけ」

原作:青野春秋 監督・脚本:福田雄一
出演:堤真一、橋本愛、石橋蓮司、生瀬勝久、山田孝之、濱田岳ほか

会社を辞めてマンガ家を目指す主人公・大黒シズオ(42歳)と家族や友人たちの物語。コメディタッチで笑うシーンが多いのだが、実は仕事のことや家族のことなど、シリアスな内容も多く含んでいる。

主人公と同じ年齢ということもあって、笑いながらもいろいろと身につまされてしまった。

俳優陣の演技がいい。それぞれの持ち味を存分に発揮している。

105分。MOVIX京都。

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2013年06月24日

映画「ニッポンの、みせものやさん」

監督:奥谷洋一郎。90分。京都みなみ会館。
http://www.dokutani.com/

最盛期には全国で数百軒もあったという見世物小屋。その最後の一軒と言われる「大寅興行社」の暮らしや歴史を追ったドキュメンタリー。

祭から祭への移動、小屋掛け、客寄せの口上、太夫(芸人)の演技、小屋の解体撤収といった現場の様子から、家族や仲間たちの話、かつての見世物興行師の語る思い出話など、見世物商売の様々な面が映し出される。

大寅興業社の人たちは、見世物小屋がやがては滅びて行くという覚悟を持っている。けれども、そこに暗さはない。人生を振り返る口調にも湿っぽさはなく、サバサバとした受け答えが印象に残る。

最初は監督のナレーションが素朴過ぎてどうかなと思ったのだが、そこには大寅興行社と監督の10年にわたる交流が滲んでいたのだ。途中からそのことが伝わってきて、じんわりと暖かい気持ちになった。

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2013年05月31日

映画「カントリー・ガール」「カサブランカの探偵」

「カントリーガール」
監督:小林達夫、脚本:渡辺あや。
出演:服部知、久場雄太、藤村聖子、鎌田彩、松本錬太郎、藤村光太。
70分。2010年。

「カサブランカの探偵」
監督・脚本:小林達夫。
出演:太田莉菜、門脇麦、Chris McCombs。
30分。2013年。

小林達夫監督作品の2本立。「カントリーガール」は京都を舞台に、高校生たちと舞妓見習いの女の子を描いた青春映画。会話がとても自然体で、京都という町とそこに暮らす高校生の姿がいきいきと映し出されている。

「カサブランカの探偵」は別れた日本人女性を探しに京都へやって来た外国人の物語。宿で働く女の子や別れた女性とよく似た女性との出会いを通じて、海のない京都の閉塞感や、そこからの脱出願望が鮮やかに描かれている。

監督の小林達夫は1985年京都府生まれ。2007年に「少年と町」で京都国際学生映画祭グランプリを受賞している。上映後の舞台挨拶も聞いたのだが、今後が非常に楽しみな若手監督である。

元・立誠小学校特設シアターにて。

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2013年05月19日

映画「探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点」

出演:大泉洋、松田龍平、尾野真千子、ゴリ、渡部篤郎。
監督:橋本一。

札幌ススキノを舞台に探偵の「俺」が活躍するシリーズの2作目。原作は東直己のススキノ探偵シリーズ。

この映画の魅力は、何と言っても大泉洋。ふざけた場面もシリアスな場面も、笑いもアクションも、何でもOKという感じだ。松田龍平は前作に比べて少し影が薄いような。

尾野真千子という女優さんはどこかで見たことがあるような…と思ったら、『萌の朱雀』の女の子だった。ちょっとびっくり。NHKの連続テレビ小説「カーネーション」の主役もやっていたそうだから(見てない)、今では有名なのだろう。

MOVIX京都にて。119分。

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2013年04月30日

映画「ライジング・ドラゴン」

監督:ジャッキー・チェン、出演:ジャッキー・チェン、クォン・サンウ、ジャン・ランシンほか。

第二次アヘン戦争によって破壊された中国の円明園から持ち去られたという十二支の銅像を奪い返すために、トレジャーハンターである主人公が活躍するアクション映画。

様々な場所を舞台に、激しいアクションシーンが繰り広げられる。古典的なカンフーアクションもあって、ジャッキーの健在ぶりを楽しむことができる。

中学生の頃に、生まれ育った町田の映画館(「町映ローズ」とか「町映グリーン」という名前だった)で「スネーキーモンキー蛇拳」と「ドランクモンキー酔拳」の2本立てを見たのが最初のジャッキー体験。それ以来、ジャッキー・チェンの出る映画はよく見ている。

そんなジャッキー・チェンも、今年でもう59歳。本格的なアクション映画はこれが最後になるとのことである。映画の最後に流れ挨拶を聞いてしみじみとした気分になった。

MOVIX京都にて。124分。

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2013年03月01日

映画 「二郎は鮨の夢を見る」

制作・監督・撮影:デヴィッド・ゲルブ。82分。
銀座の鮨屋「すきやばし次郎」の店主小野二郎を追ったドキュメンタリー。

85歳になっても現役で鮨を握り続ける小野の姿からは、日々同じことを繰り返すことの大切さや職人としての誇りがよく伝わってくる。毎日同じ電車の、それも同じ場所に乗って・・・といったところは、バッターボックスに入るイチローのようでもある。

小野の長男は同じ銀座の店で、次男は六本木の店を任されて働いている。偉大な父を持ち、父と比較される宿命を負った2人の息子たちの苦労も、映像からひしひしと感じられた。

京都みなみ会館にて。

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2013年02月07日

映画 「渾身」

監督・脚本:錦織良成、主演:伊藤歩、青柳翔、原作:川上健一(集英社文庫)。

隠岐で開催される古典相撲と、そこに出場する人々の家族やふるさとに対する思いを描いた作品。

神社の境内に設けられた土俵で夜通し行われる相撲のシーンが何よりも良かった。土俵に上がる力士に向って応援する人たちが塩を投げつけるのだが、それが力士の背中や顔にびしびしと当る音がして迫力がある。

それに比べて家族や恋のドラマの方はやや低調。見ていて少し恥ずかしくなってしまう感じ。言いたくて言えないことがある時に、指先をもじもじさせるといった演出は、ちょっと古過ぎるのではないだろうか。

それでも、隠岐の自然や古典相撲の魅力、俳優さんたちの熱演によって、全体としては楽しい映画になっている。

監督の錦織は島根県出身で、「白い船」「うん、何?」「RAILWAYS」という島根3部作を撮った人。こうした地域密着の姿勢は、これからますます大切になってくるように思う。

MOVIX京都にて。134分。

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2012年12月20日

映画「演劇1」「演劇2」

監督・制作・撮影・編集:想田和弘
出演:平田オリザ、青年団、こまばアゴラ劇場の人々

想田監督の「観察映画」の第3弾、第4弾。観察映画という自称は、ナレーションやテロップ・音楽などを用いないドキュメンタリー映画ということらしい。

カメラは平田オリザに密着して、稽古、公演、打ち合わせ、面接、移動、ワークショップ、講演など様々な場面を映し出す。そこから見えてくるのは、平田の演劇論であり、演出方法であり、あらゆる手段を使って演劇を社会に広めようとする強い意志である。

両作ともアゴラ劇場がある駒場の商店街の風景がしばしば登場する。ここは中学・高校・大学と10年近く通った場所なので懐かしい。「演劇2」の鳥取のワークショップの場面には、荻原伸さんが出ていた。

「演劇1」が2時間52分、「演劇2」が2時間50分という長さなのだが、まったく退屈しない。それは内容の面白さ以上に、想田監督の編集の冴えによるのだろう。久しぶりにスゴイものを見た。

観察映画の第1弾「選挙」、第2弾「精神」、番外編の「Peace」も、ぜひ見たいと思う。

京都シネマにて。

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2012年11月28日

映画「カミハテ商店」

監督:山本起也 出演:高橋惠子、寺島進、あがた森魚ほか

京都造形芸術大学の学生とプロが共同で毎年1本の劇場公開作品を制作する「北白川派」の第3作。山陰の路線バスの終点にある小さな港町、そこにある古ぼけた商店が舞台となっている。

この映画を見ようと思ったきっかけは、隠岐の海士(あま)町でロケが行われたという話を聞いたこと。海士町(隠岐の中ノ島)は一昨年の夏に旅行で訪れたことがあり、親しみを感じているのだ。

あまり期待せずに見に行ったのだが、そんな予想を裏切るくらい良い映画だった。
ワンシーン、ワンシーンが丁寧に撮られているという感じ。
途中で京都の知っている場所(創栄図書印刷の前の通り)が出てきたのでびっくりした。

「北白川派」の次回作は林海象監督、永瀬正敏主演で進行中らしい。
今から公開が楽しみである。

京都シネマ。104分。

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2012年11月06日

映画「あなたへ」


監督:降旗康男、出演:高倉健、田中裕子、佐藤浩市、草なぎ剛、綾瀬はるか、ビートたけし他

高倉健の6年ぶりの主演映画。81歳という年齢を考えるとすごいことだと思う。
先日87歳で亡くなった大滝秀治も出演している。

富山、飛騨高山、大阪、兵庫県の竹田城址、下関、門司、平戸といった町の風景が美しい。
物語の本筋とは関係ない部分で、何度か涙が出そうになった。

劇中で歌われる宮沢賢治作詞作曲の「星めぐりの歌」も印象に残る。

T・ジョイ京都、111分。

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2012年09月13日

映画「男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け」


監督:山田洋次、主演:渥美清、太地喜和子、宇野重吉。109分。

現在、京都の南座で「監督生活50周年 山田洋次の軌跡 〜フィルムよ、さらば〜」が開催されている(8月18日〜9月23日、10月6日〜10月24日)。

山田洋次監督の全80作品が35ミリフィルムで上映される(1日2本ずつ)ほか、ミニシアターで「京都から見た日本映画の歴史」と「男はつらいよ」(ハイライト)の上映、「くるまや」のセットの復元、パネル展示など盛りだくさんの内容である。しかも、「ワンデイ・フリーチケット」(1700円)を購入すると、これらをすべて見ることができる。

「男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け」はシリーズ17作目。「男はつらいよ」は大好きで、ほとんど全部見ている。でも、スクリーンで見るのはやはり格別だ。舞台となった兵庫県龍野市(現たつの市)の風景が美しい。一度訪れてみたいと思う。

映画の製作と上映のデジタル化が進み、35ミリフィルムを使った劇場での上映は今回が最後になるかもしれないとのこと。以前、映画館で働いていて、フィルムをつないだり、映写したりしていた頃のことを懐かしく思い出す。

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2012年08月27日

映画「アーティスト」


京都映画センターの上映会があり、四条烏丸の「シルクホール」で観る。
監督:ミシェル・アザナヴィシウス監督、主演:ジャン・デュジャルダン、ベレニス・ベジョ。フランス映画。モノクロ。100分。

舞台は1927年から1932年までのハリウッド。サイレント映画からトーキーへと時代が変化していく中で、没落していく男優と、反対に人気を獲得していく女優との物語。

ストーリー自体はよくある話なのだが、俳優の演技や映画の手法が素晴らしい。実によく出来ている。サイレント映画仕立てになっていて、ほとんど台詞はないのだが、それがかえって想像力をかき立てて楽しい。犬の演技も絶品。

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2012年06月12日

映画「テルマエ・ロマエ」


原作:ヤマザキマリ
監督:武内英樹、主演:阿部寛・上戸彩

原作のコミックが面白いためでもあるだろうが、映画も十分に面白く、映像的な完成度も高い。話のテンポがやや早過ぎる気はするが、上映時間を考えれば仕方がないだろう。途中、栃木県の北温泉が登場したのにはびっくりした。一度だけ山登りを兼ねて行ったことがある。宿の前に広くて四角いプールのような露天風呂がある。

MOVIX京都にて。108分。

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2012年04月04日

映画「僕達急行 A列車で行こう」

監督・脚本:森田芳光(遺作)、主演:松山ケンイチ、瑛太。

鉄道好きの草食系男子ふたりの友情と仕事と恋を描いた物語。

ストーリー自体は特に見るべきものはないが、随所に登場する鉄道風景が美しい。久大本線の豊後森駅や鶴見線の海芝浦駅など、かつて訪れたことのある場所が映し出されて懐かしかった。

若者向けの映画だと思っていたのだが、客層はけっこう年配の方が多い。鉄道ファンでもなさそうだし、あるいは大河ドラマの影響で松山ケンイチのファンが増えているのだろうか。

MOVIX京都にて。

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2012年02月13日

映画「しあわせのパン」

監督・脚本:三島有紀子、主演:原田知世・大泉洋。
北海道の洞爺湖畔にカフェ兼ペンションを営む夫婦と、そこに集うお客さんたちの物語。

「かもめ食堂」(2006)、「つむじ風食堂の夜」(2009)、「スープ・オペラ」(2010)など、最近、食べ物や料理店を中心にした映画は多い。この映画もパン作りや食事のシーンが見どころの一つになっている。

脚本は少々ベタな部分があってイマイチなのだが、北海道の四季の風景と主演二人の表情が素晴らしい。原田知世は久しぶりに見たが、昔よりずっといい。大泉洋は昨年の「探偵はBARにいる」も良かったが、今回もまた違った良さを見せている。ますますファンになった。

京都シネマにて。114分。


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2011年11月10日

映画「東京オアシス」

監督・脚本:松本佳奈 中村佳代
出演:小林聡美、加瀬亮、黒木華、原田知世ほか

「かもめ食堂」「めがね」「プール」「マザーウォーター」に続くプロジェクトの第5作。今回の舞台は東京。一人の主人公をめぐる3つの話から成り立っている。それぞれ良い話だと思うし、俳優さんも好きな人が多いのだが、肝腎な点で今ひとつ乗り切れなかった。

それは、東京という街で、見知らぬ人に話しかける(あるいは話しかけられる)ことに、どれだけのリアリティがあるのかということ。物語の出発点がそこにあるだけに、どうしても気になった。

その点、「歌壇」11月号で穂村さんが発言していたことは印象的だった。
(…)今の東京のスタンダードでは電車の中の人や道をすれ違う人としゃべらない。昔のご近所づきあいみたいな感じじゃないから。でも、あのとき(震災直後・松村注)だけは知らないおっちゃんとかがみんなにいっぱい話しかけたりして、それに普通のOLさんも答えるような感じで。だから、スタンダードが一瞬にして(変わり)、対人関係の距離が近づいて共感的になったというか、それは覚えてますね。
実によくわかる例であり、明晰な分析だと思う。

京都シネマ、83分。


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2011年10月14日

映画「ブラック・スワン」

祇園会館にて。

見ようかどうか迷って結局は見逃してしまった映画だったのだが、祇園会館で見ることができた。

祇園会館は1958年開館という古い歴史を持つ京都の名画座。現在、土日祝日と平日の夜は演芸場「よしもと祇園花月」として使用されている。そのため、映画の上映は平日の朝からの2本立て一回だけ。

主演のナタリー・ポートマンの演技が、評判通りすごい。まさに鬼気迫るといった感じ。久しぶりにウィノナ・ライダーをスクリーンで見ることができたのも嬉しかった。学生の頃から、この人のファンなのです。

ダーレン・アロノフスキー監督。108分。

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2011年09月20日

映画「探偵はBARにいる」

原作:東直己、監督:橋本一、出演:大泉洋、松田龍平、小雪、西田敏行ほか。125分。MOVIX京都にて。

主演の大泉洋が抜群にいい。二枚目ではないのにカッコイイ。ふざけている場面でもまじめな場面でも存在感があって、いっぺんに好きになった。

雪の降る北海道の風景も印象的。190万都市札幌の魅力が全編に溢れている。これは、ぜひともシリーズ化してほしい。

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2011年08月06日

映画「コクリコ坂から」

企画・脚本 宮崎駿、監督 宮崎吾朗。

舞台は1963年の横浜周辺。当時の町の雰囲気や暮らしの様子がよく描かれている。ご飯を作る場面などにも、生活の手触りが感じられてとても良い。

「ジブリ臭さ」もそれほどなくて、楽しい映画だった。主人公は1963年に高校2年生であるから、河野さんと同じ年齢なんだと、見終ったあとに気がついた。

「時代」と「世代」は同じように使われることもある言葉だけれど、たぶん全然違うのだと思う。私は「時代」には興味があるけれど、「世代」にはさして興味がない。「時代」が誰にでも平等であるのに対して、「世代」は区別・差異を表すために用いられることが多いように感じる。

MOVIX京都、91分。

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2011年07月30日

映画「サンザシの樹の下で」

「初恋のきた道」のチャン・イーモウ監督の最新作。

原作は中国系アメリカ人作家エイミーの書いた中国語小説『サンザシの恋』。ネットで発表されて評判となり、中国で300万部が売れたベストセラーらしい。

純愛モノであるが、ストーリーがやや平凡で、今ひとつの内容であった。宣伝のスチル写真に使われているカットが映画には登場しなかったりするので、あるいは編集の問題なのかもしれない。農村の風景や人々の暮らしの様子などはとても良いのだが。

MOVIX京都、114分。

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2011年06月24日

映画「プリンセス・トヨトミ」

MOVIX京都にて。
原作:万城目学、監督:鈴木雅之、出演:堤真一・綾瀬はるか・岡田将生・中井貴一ほか。
119分。

原作の面白さと奥行きをどの程度まで映像化できるのかと心配したが、映画は映画でよく出来ていた。いくつかの設定変更にも無理がないし、脚本も悪くないと思う。でも、原作の持つ広がりを2時間にまとめるわけだから、どうしても話は小粒になってしまう。そこは、まあ、仕方がないだろう。

綾瀬はるかはまずまず。岡田将生はほとんど持ち味を発揮できていない気がした。堤真一は好きなのでOK。

大阪はいつも用事がある時に行くだけなので、今度ゆっくり観光して見て回りたい。

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2011年06月10日

映画「マイ・バック・ページ」

MOVIX京都にて。

舞台は70年安保の政治的な運動が高揚から退潮へと転じる1969年〜72年の東京。運動のうねりの中にあって傍観と行動との狭間で揺れ動くジャーナリストが、朝霞自衛官殺害事件に深く関わっていくまでを描いている。原作は川本三郎の自伝的な小説。

監督は山下敦弘。妻夫木聡・松山ケンイチ主演。妻夫木はこれまでドラマや映画で何度も見たことがある俳優だが、今回が一番良かった。

モデルとなった事件が起きたのは、今から40年前の1971年。さすがに当時と今とでは社会情勢が大きく変っていて、登場人物の思考や感情をすぐには受け入れられない部分も多い。革命や新左翼運動に対するシンパシーも、今ではなかなか理解できなくなっているだろう。

そう考えると、短歌の世界で40年前の作品を普通に読んでいるというのは、ある意味、驚くべきことなのかもしれない。例えば河野さんの『森のやうに獣のやうに』も1972年の歌集であるが、それほど違和感を覚えることなく今でも読むことができる。

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2011年02月13日

映画「毎日かあさん」

MOVIX京都にて。

西原理恵子の人気マンガの映画化。原作の一ファンとしてぜひ見ておかなくてはという感じ。このところ、西原作品の映画化が相次いでいるなあ。

監督小林聖太郎、主演小泉今日子・永瀬正敏。ほぼ原作に忠実なストーリーで、俳優の抑えの利いた演技(あるいは監督の演出)が良かった。子役二人も可愛いくてうまい。途中でホロッと泣きかけた。

内容的にいろいろと身につまされる所があって、しんみりとする。また、マンガのリアリティと映画のリアリティの違いや、表現することが持つ暴力性などについても考えさせられた。

☆☆☆☆(星4つ)
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2010年12月24日

映画「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」

京都シネマにて。
原作・鴨志田穣、出演・浅野忠信、永作博美ほか、監督・東陽一。

アルコール依存症の主人公が漫画家の元妻などの支えを受けながら、依存症を克服して家族のもとに帰るまでの物語。クリスマスイブに見るにはちょっと重い内容で、いろいろと身につまされるものがあった。アルコール病棟での日々の生活が細部に至るまでリアルに描かれている。

浅野忠信は「PiCNiC」(1996)の頃から、その俳優としての存在感に注目してきた。ただ、この人は演技がうまいのかどうか、どうもよくわからない。演技くさくない演技をしているようでもあり、素のままのようでもあって、何とも不思議な感じだ。

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2010年11月26日

映画「マザーウォーター」

京都シネマにて。

京都を舞台に7人の男女(+赤ちゃん)のゆるやかに交差する日常を描いた作品。全編にわたって、鴨川や白川など水の流れる音が響いている。登場人物たちも豆腐屋、喫茶店、バー、銭湯など、水と関わる暮らしを送っていることに気が付いた。

途中でわが家から徒歩で数分の藤森神社が出てきて驚く。藤森神社もまた「不二の水」という湧水が出ることで有名なのだ。それにしても普段見慣れている場所がスクリーンに映し出されるというのは、不思議な気分である。

氷を入れて水割りを作るシーンとか、豆腐の店先で豆腐を食べるシーンとか、何でもないような場面を丁寧に撮っていて、気持ちの良い映画であった。

監督は松本佳奈。出演、小林聡美、小泉今日子、加瀬亮、市川実日子、永山絢斗、光石研、もたいまさこ他。


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2010年07月03日

映画「シーサイド・モーテル」

MOVIX京都にて。守谷健太郎監督。

「シーサイド」とは名ばかりの山の中にある古ぼけたモーテル。そこに泊まる4部屋の客たちはいずれもワケありで、さまざまなトラブルが繰り広げられる。

4部屋で同時進行するストーリーを絡み合わせる手法は、ジム・ジャームッシュ監督の「ミステリートレイン」やタランティーノなどが監督した「フォールームス」を思い出させるが、脚本がよく出来ていて楽しい。

俳優ではヤクザ役の玉山鉄二が特に良かった。男のセクシーさというのだろうか。成海璃子もいい。「武士道シックスティーン」「書道ガールズ」に続いて、このところ映画でよく見かける。この人は眉間に寄った皺が良い。
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2010年05月26日

映画「パーマネント野ばら」

西原理恵子原作、菅野美穂主演。「MOVIX京都」にて。

海沿いの町にある小さな美容室「パーマネント野ばら」。離婚して一人娘とともに戻ってきた主人公を中心に、幼なじみや母親・店の常連客といった人々の織り成す悲喜こもごもの日常が描かれる。

圧倒的に女性が強い。登場する男性は、みんなダメな男ばかり。酒飲んだり、暴力振るったり、浮気したり、お金をせびったり、ギャンブルしたり・・・。

笑う場面もたくさんあるけれど、しんみりする場面も多い。自分の家族や友人や故郷のことを思い出したりした。生きるってことは強いことだなぁと、あらためて思う。
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2010年05月25日

映画「ヒロシマ・モナムール」

アラン・レネ監督、マルグリット・デュラス原作脚本、1959年の日仏合作映画。原題は「Hiroshima, mon amour」

「京都みなみ会館」で今週五日間だけの上映。前から見たいと思っていた映画を見ることができた。戦後の広島を舞台に、フランス人の女優と日本人の建築家が出逢う一日の物語。映画はホテルで抱き合う二人の「私はヒロシマを見たわ」「きみはヒロシマを見なかった、何も」という印象的な会話から始まる。当時の原爆資料館や平和公園、原爆ドームなどの映像もあり、印象に残った。

大口玲子さんの歌集『東北』に、この物語を元にした連作「ヒロシマ私の恋人」がある。

  真夏汗して人を抱き敷き立秋の向かうに燃ゆる都市の名を呼ぶ
  君を都市の名前で呼べば痩せて痩せて平凡な死を死ぬ朝の表情(かほ)

また、谷村はるかさんの歌集『ドームの骨の隙間の空に』の歌の中にも、この物語は響いているように思う。

  おまえはまだたった一人を愛し得たことさえないと広島は言う
  平和は愛の別名だから会う会いたいあの街にそれ以外思わない

映画の中の会話はすべてフランス語。岡田英次のフランス語は「ヒロシマ」と言っているが、エマニュエル・リヴァの方はH音のない「イロシマ」。それを聞いて次の歌を思い出した。

  「イロシマハ、ナツノキゴカ」と問ふサラに冬には詠まぬ我を恥ぢたり
                         小川真理子『母音梯形』

posted by 松村正直 at 00:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする