2022年07月28日

映画「パリ13区」

監督:ジャック・オーディアール
出演:ルーシー・チャン、マキタ・サンバ、ノエミ・メルラン、ジェニー・ベスほか

パリに住む30歳前後の男女4人の群像劇。

恋愛や性愛を描きつつ、性的虐待や人種と移民の問題などが背景に見えてくるところが良かった。

パリの行政区は1〜20区まであって、ネットで調べたところ13区と言うとチャイナタウンのイメージが強いらしい。なるほど。

京都みなみ会館、105分。

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2022年07月26日

映画「トップガン マーヴェリック」

監督:ジョセフ・コジンスキー
出演:トム・クルーズ、マイルズ・テラー、ジェニファー・コネリー、ジョン・ハム、グレン・パウエル、ルイス・プルマン、エド・ハリス、ヴァル・キルマーほか

1986年公開の「トップガン」の続篇。

主演のトム・クルーズは1962年生まれなので今年で60歳。「ミッション・インポッシブル」シリーズで今も活躍しているのは知っていたけれど、実に若々しい。

感想はいろいろあるが、随所に「スター・ウォーズ」を感じた。「考えるな、行動しろ」は「考えるな、感じろ」みたいだし、敵の基地を破壊するミッションはデス・スター破壊の場面にそっくり。

それにしても、36年ぶりの続篇って考えることがすごいな。

MOVIX京都、131分。

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2022年07月15日

映画「チロンヌㇷ゚カムイ イオマンテ」

監督:北村皆雄
語り:豊川容子
監修・カムイノミ対語訳:中川裕

1986年に北海道の美幌峠で行われた「キタキツネの霊送り」の記録映像を元に編集した作品。司祭の日川善次郎エカシ(長老)が唱える祈りの言葉には、日本語訳が付けられている。

儀式の内容は、本で読んだことのある熊のイオマンテとほぼ同じだ。

前夜にアペフチカムイ(火の神)に祈りが捧げられ、歌や踊りが披露される。当日は、祭壇にイナウ(木幣)やシト(団子)、トノト(酒)が供えられ、檻から出されたキタキツネをもてなし花矢を射て遊ばせる。そして、最後に二本の丸太で首を挟んで絶命させるのだ。その後、キタキツネを解体して頭骨を飾る。

印象的だったのは、祭に参加した人々の現在の姿を取材しているところ。35年経って亡くなった人も多く、あたりの風景もずいぶんと変った。小学生だったエカシの二人の孫は、今は東京と札幌に暮らしているそうだ。

京都シネマ、105分。

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2022年07月09日

映画「ヘィ!ティーチャーズ!」

監督:ユリア・ヴィシュネヴェッツ
出演:エカテリーナ・マモントワ、ワシリイ・ハリトノフほか
配給:豊岡劇場

モスクワの大学を出た2人の新人教師が、地方都市の学校に赴任して過ごす一年間のドキュメンタリー。理想と現実の差に悩みながら、生徒と過ごす日々が描かれる。

ドラマだと思って見たのだが、パンフレットを読むとドキュメンタリーであった。生徒たちが時おりカメラに向かって喋ったりしていたのは、そのためだったのか。

ロシアの教育現場の抱える様々な問題が見えてくる作品だ。


DSC00317.JPG


豊岡劇場は1927年に芝居小屋として開業した古い歴史を持つ。残念ながら8月末での休館が決まっているので、その前にぜひ訪れたいと思ってやって来た。

今後も応援していきたい。

豊岡劇場、90分。
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2022年07月05日

映画「私のはなし 部落のはなし」

監督:満若勇咲
プロデューサー:大島新

部落差別の起源や歴史、現在の状況などを描いたドキュメンタリー。長い時間をかけ、多くの関係者に取材やインタビューをして、差別が生み出される構造や根深さを浮かび上がらせている。

休憩を挟んで3時間25分もある作品だが、編集が行き届いていて長いとは感じない。元になった映像はこの何百倍もあるのだろう。

このドキュメンタリーの優れている点は、対立する人々や立場の異なる人々のそれぞれの意見をきちんと聞いていることだろう。例えば「鳥取ループ裁判」に関しても、原告の部落解放同盟の人々だけでなく、被告となった示現舎の宮部龍彦にも密着取材をしている。

また、結婚差別の問題にしても、差別を受けた側だけでなく、「結婚相手の身元調査をする。自分の子は部落の人とは結婚させない」と語る人からも話を聞いている。

何が正しくて何が間違っているかを性急に問うのではなく、監督自身も含め私たち一人一人がこの問題について深く知り、より良く考えるための手掛かりをたくさん示してくれる作品であった。

京都みなみ会館、205分。

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2022年06月21日

映画「東京2020オリンピック SIDE:A」

総監督:河瀬直美

東京オリンピックの公式映画として製作されたドキュメンタリー2部作の第1作。平日の 9:10 の回ということもあってか、観客は私一人であった。

毀誉褒貶の激しい作品だが、過不足なくまとまっているという印象を受けた。オリンピック開催に反対する人々や新型コロナの医療現場などにも目配りしている。

幼児を連れて参加したカナダの女子バスケ選手、大会の1年延期によって引退した日本の女子バスケ選手、内戦の続くシリアを脱出してドイツで練習する男子水泳選手、黒人差別に声を上げるアメリカの女子ハンマー投げの選手、イランから亡命してモンゴル代表になった男子柔道選手、旧ソ連・ドイツの代表を経て8度目のオリンピック出場となるウズベキスタンの女子体操の選手など。

様々な社会問題と絡めつつ、一人一人の選手のエピソードをまとめている。そのあたりの手際の良さが、逆にもの足りなさを感じさせるのだけれども。

Tジョイ京都、120分。

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2022年06月07日

映画「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」

監督:安彦良和
原作:矢立肇、富野由悠季
声優:古谷徹、成田剣、新井里美、潘めぐみ、古川登志夫、武内駿輔ほか

1979年放映のテレビアニメ「機動戦士ガンダム」の15話を基にした劇場版アニメ。特にガンダムファンではないのだけれど、やはりファーストガンダムにはそれなりの思い入れがある。

40年以上経って見る懐かしさもあるし、モビルスーツの格闘戦のかっこ良さもある。そして、戦争をめぐる問い掛けは時代を超えて変わらないことも感じた。

冒頭の10分間を公式サイトで観ることができます。
https://g-doan.net/

Tジョイ京都、109分。
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2022年05月05日

映画「コーダ あいのうた」

監督・脚本:シアン・ヘダー
出演:エミリア・ジョーンズ、トロイ・コッツァー、ダニエル・デュラント、マーリー・マトリン、エウヘニオ・デルベスほか

第94回アカデミー賞の作品賞、脚色賞、助演男優賞を受賞。

タイトルの「コーダ」(CODA)はChildren of Deaf Adult/sのことで、聴覚障害者の親を持つ子を指す。
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20151008-OYTEW52654/

このところ映画を観て泣くことが多くなった。齢を取ったということだろうな。実生活ではほとんど泣かないのだけれど。

出町座、111分。
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2022年04月21日

映画「アネット」

監督:レオス・カラックス
出演:アダム・ドライバー、マリオン・コティヤール、サイモン・ヘルバークほか

大学時代に「ポンヌフの恋人」を見て以来、レオス・カラックスはちょっと特別な存在の監督。

何とも不思議な作品で、映画館を出て京都駅までぼんやりと歩いた。

2020年、フランス・ドイツ・ベルギー・日本・メキシコ合作
京都シネマ、140分。

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2022年04月16日

映画「親愛なる同志たちへ」

監督・脚本:アンドレイ・コンチャロフスキー
出演:ユリア・ビスツカヤ、ウラジスラフ・コマロフ、アンドレイ・グセフほか

1962年にソ連で起きた労働者蜂起の弾圧「ノヴォチェルカッスク事件」を舞台に、国に仕える共産党員であり、ひとり娘の母である主人公が、二つの立場に引き裂かれていく姿を描き出している。

フルシチョフによるスターリン批判や軍とKGBの対立、ドン・コサック軍の一員であった父のことなど、歴史的な背景について詳しい人ならさらに深く味わえる作品だろう。

121分、アップリンク京都。

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2022年04月10日

映画「ちょっと思い出しただけ」

監督・脚本:松居大悟
出演:池松壮亮、伊藤沙莉、河合優実、國村隼、永瀬正敏ほか

ジム・ジャームッシュ監督へのオマージュが随所に感じられる作品。「ナイト・オン・ザ・プラネット」を見ているシーンやベンチに座る永瀬正敏が出てくるだけでなく、作品のコンセプトそのものに共通点がある。

主演の2人の声がいい。池松の優しく語り掛けるような口調も魅力的だし、伊藤のハスキーな声も心地よい。声って大切だな。

アップリンク京都、115分。

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2022年03月22日

映画「ホテルアイリス」

監督・脚本:奥原浩志
原作:小川洋子
出演:永瀬正敏、陸夏(ルシア)、リー・カンション、菜葉菜、寛一郎ほか

日本と台湾の合作映画。

撮影は台湾の離島である金門島で行われたとのこと。地図を見ると中国本土のアモイのすぐ近く、かつて中国と台湾の間で砲撃戦が行われた舞台でもある。

永瀬正敏は好きな俳優で、出演する作品はよく見に行っている。台湾の新人女優の陸夏も存在感を放っていた。

京都シネマ、100分。

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2022年02月22日

映画「テレビで会えない芸人」

監督:四元良隆、牧祐樹
出演:松元ヒロ

社会風刺・政治風刺の笑いを持ち味とする芸人松元ヒロのドキュメンタリー。2019年に出身地の鹿児島テレビで製作されたローカル番組をもとに、追加取材の上で映画化された作品である。

コミックバンド「笑パーティー」やコントグループ「ザ・ニュースペーパー」を経て1998年に独立した松元は、現在はテレビでなく舞台を活躍の場としている。その姿をテレビ局が追ったというのが、まず面白い。

稽古風景、食事風景、家での姿、舞台での姿、妻や息子とのやり取り、かつての仲間との再会、恩師との再会。どんな場面においても、松元の芯の通った姿勢と柔らかな笑顔は変わらない。

良質なドキュメンタリーであるのは間違いないのだが、一方で「芸人松元ヒロ」ではない表情や素顔にもっと迫って欲しかったとも思う。そこがテレビ局のディレクターである監督の限界を示しているようにも感じた。

京都シネマ、81分。

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2022年02月08日

映画「日高線と生きる」

監督:稲塚秀孝

2020年に路線の約8割が廃止となったJR北海道の日高線を描いたドキュメンタリー。

2015年の高潮被害で不通となってから廃止に至るまでの経緯や、沿線住民による廃線跡ウォークの試み、さらには競走馬の育成や昆布漁、美しい自然の風景などが映し出される。

苫小牧〜様似の146.5キロを結んでいた日高線は、鵡川〜様似の116キロが廃止され、わずか30.5キロの路線となってしまった。静内駅も浦河駅ももう列車が走ることはない。

過疎化や高齢化、自動車の普及といった背景は、全国各地に共通するものだ。廃線跡が草に覆われた姿は何とも悲しい。今は自動車全盛の時代だが、いずれ各地の高速道路も同じように草に覆われていくことだろう。

京都シネマ、81分。

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2022年01月26日

映画「台風クラブ」

監督:相米慎二
脚本:加藤祐司
出演:三上祐一、工藤夕貴、大西結花、尾美としのり、三浦友和ほか

「没後20年 作家主義 相米慎二」特集で上映中の1985年公開作品。

地方都市の中学校を舞台に、台風が近づいて通り過ぎる木曜日から月曜日までの5日間を描いている。雨や風の描き方がいい。

主演の三上祐一(早くに芸能界を引退)の兄役を鶴見辰吾が演じているのだが、二人は実の兄弟なのだそうだ。初めて知った。

京都みなみ会館、115分。

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2022年01月06日

映画「クナシリ」

監督・脚本:ウラジミール・コズロフ
撮影:グレブ・テレショフ

旧ソ連(ベラルーシ)出身で現在はフランスに住む監督が、国後島を描いたドキュメンタリー。

島に住む人々や軍人、企業経営者など多くの人々の語りを通じて、国後島の現在が浮き彫りになる。戦後76年が過ぎた今も日本とロシアの間で平和条約は締結されず、日本との行き来は途絶えたままだ。

領土問題に関する立場は人によってさまざまであったが、「日本人はここに移り住むつもりはない。漁業をする海域が欲しいだけだ」という意見は鋭いところを突いている。また、「かつてはアイヌの人々が自然とともに暮らしていた」という話も印象に残った。まさに、その通り。

ロシアにとっても辺境、日本にとっても辺境の島。そもそも「辺境」という概念が生まれるのも国や国境線があるからであって、島自体には何の落ち度もないのだけれど。

京都シネマ、74分。

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2021年12月28日

映画「偶然と想像」

監督・脚本:濱口竜介
出演:古川琴音、中島歩、玄理、渋川清彦、森郁月、甲斐翔真、占部房子、河井青葉ほか

3話構成のオムニバス。

脚本のよく練られた会話劇のような味わい。会話のやり取りが、現実そのままをコピーして再現するリアルではなく、現実と異なりつつも認識を更新するようなリアルを感じさせる。

どの話も最後が少し余分なように思ったが、それは私が短歌脳になっているからかもしれない。

京都みなみ会館、121分。
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2021年12月19日

映画「愛のまなざしを」

監督:万田邦敏
脚本:万田珠実、万田邦敏
出演:仲村トオル、杉野希妃、斎藤工、中村ゆり、藤原大祐、片桐はいり、ベンガル他

愛、救い、嫉妬、依存、狂気、嘘、悔恨、赦し、過去、生、死。
といったことを、つらつら考える。

出町座、102分。
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2021年12月02日

映画「ダウン・バイ・ロー」

監督・脚本:ジム・ジャームッシュ
出演:トム・ウェイツ、ジョン・ルーリー、ロベルト・ベニーニ、ニコレッタ・ブラスキ

1986年公開作品。
映画館で見るのは今回が初めて。

3人の男がニューオリンズの刑務所に入れられ、やがてそこから出て行く。片言の英語しか話せないイタリア人のロベルトが、他の2人の仲を取り持っているのが面白い。ロベルトとニコレッタが躍る場面や、美しいラストシーンも忘れがたいな。

京都みなみ会館、107分。

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2021年11月25日

映画「ゴースト・ドッグ」

監督:ジム・ジャームッシュ
出演:フォレスト・ウィテカー、ジョン・トーメイ、クリフ・ゴーマン、ヘンリー・シルヴァ、イザーク・ド・バンコレほか

1999年公開作品。

副題に「The Way of the Samurai」とあるように、武士道を信奉する殺し屋が主人公。依頼人との通信手段は、なんと伝書鳩だ。

アクションあり、ユーモアありの展開で、珍しくドラマの筋がはっきりしている。もちろんそれだけではなく、個人と組織、時代の変化、人種的な多様性、コミュニケーションのズレといった問題について考えてみても良いのかもしれない。

京都みなみ会館、116分。

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2021年11月22日

映画「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」

監督:ジム・ジャームッシュ
出演:ティルダ・スウィントン、トム・ヒドルストン、ミア・ワシコウスカ、ジョン・ハート、アントン・イェルチンほか

2013年公開作品。

アップリンク京都に続いて、今度は京都みなみ会館でジム・ジャームッシュの回顧特集が始まった。見逃した作品を見られるのは嬉しい。

現代に生きる二人のヴァンパイアの物語。ヴァンパイアと言っても、人間を襲ったりせずに静かに暮らしている。

舞台は路地の美しいモロッコの港町タンジールと劇場の廃墟などが立つアメリカのデトロイト。対照的な町の風景も、この作品の見どころと言っていいだろう。

京都みなみ会館、123分。

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2021年11月01日

映画「草の響き」

監督:斎藤久志
原作:佐藤泰志
出演:東出昌大、奈緒、大東駿介、Kaya、林裕太、三根有葵、室井滋ほか

函館を舞台にした佐藤泰志作品の映画化はこれで五本目。特徴のある佐藤の自筆の字がタイトルに使われている。

医師の勧めで函館の街を毎日ランニングする主人公と、妻、親友。そしてスケートボードで遊ぶ3人の若者たち。2つの三角形の織り成す美しい均衡は、やがて破れてしまう。

東出昌大の演技が光る。

冒頭に「函館シネマアイリス25周年記念作品」というテロップが出て、しばし感慨にふけった。25年前、私は函館に住んでいて、シネマアイリスは思い出の多い映画館。

開業2日後に「スモーク」を見たのを皮切りに、「PiCNiC」「天使の涙」「恋する惑星」「イル・ポスティーノ」「トレインスポッティング」など30本以上の作品を見た。あれから25年が経つのか。

京都みなみ会館、116分。

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2021年10月28日

映画「ドライブ・マイ・カー」

監督:濱口竜介
脚本:濱口竜介、大江崇允
原作:村上春樹
出演:西島秀俊、三浦透子、岡田将生、霧島れいか、パク・ユリム、ジン・デヨン、ソニア・ユアンほか

約3時間という長さで重みのある内容。現実の世界と演劇の世界、さらに語られる物語が重なり合うように進行していく。その脚本が見事だと思う。

言葉にしなければ伝わらないこと、あるいは言葉では伝えられないことなど、人間同士のコミュニケーションについて深く考えさせられる作品だった。

京都シネマ、179分。

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2021年10月24日

映画「燃えよ剣」

監督・脚本:原田眞人
原作:司馬遼太郎
出演:岡田准一、柴咲コウ、鈴木亮平、山田涼介、尾上右近ほか

新選組副長・土方歳三を主人公にした物語。多摩の農家に生まれ、剣術の修行に励み、京都に出て新選組の結成に参加し、鳥羽伏見、甲州、会津と転戦したのち箱館五稜郭の戦いで死ぬまで。

原作を読んだのは大学生の時だった。歴史物としてではなく、組織論やナンバー2の心得として感銘を受けたことを覚えている。

MOVIX京都、148分。
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2021年10月16日

映画「そこのみにて光輝く」

2014年公開作品。
佐藤泰志原作の映画化2作目。

監督:呉美歩
出演:綾野剛、池脇千鶴、菅田将暉、高橋和也、火野正平ほか

函館を舞台に描かれる男女の出会いと思い通りにならない人生。
暗く陰惨な場面も多いのだが、登場人物の個性が生き生きとしていて、良い作品に仕上がっている。

初めの方に啄木小公園のわきの道を通るシーンがあって懐かしかった。かつて函館に住んでいた時に毎日通っていた道だ。

京都みなみ会館、120分。

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2021年10月12日

映画「マスカレード・ナイト」

監督:鈴木雅之
原作:東野圭吾
出演:木村拓哉、長澤まさみ、小日向文世、石黒賢、沢村一樹、勝村政信、木村佳乃、麻生久美子、高岡早紀、博多華丸、渡部篤郎ほか

「マスカレード・ホテル」シリーズの映画化2作目。

川崎で一人暮らしをしている父が、コロナ禍で家に閉じ籠ってばかりだと言うので、映画館に連れて行った。007シリーズの最新作とどちらにしようか迷った末に、とりあえず邦画の方がいいかなという判断でこの作品に。

父の感想は「いっぱい人が出てきて、何だか難しかったねえ〜」というもの。まあ、確かにそういう内容でした。

イオンシネマ新百合ヶ丘、129分。

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2021年10月07日

映画「海炭市叙景」

監督:熊切和嘉
原作:佐藤泰志
出演:谷村美月、竹原ピストル、中里あき、山中崇、南果歩、小林薫、加瀬亮、三浦誠己ほか

2010年公開作品。

佐藤泰志原作の新作映画「草の響き」の公開に合わせて、これまでに制作された4本の映画(「海炭市叙景」「そこのみにて光輝く」「オーバー・フェンス」「きみの鳥はうたえる」)が京都みなみ会館で上映されている。

函館をモデルにした「海炭市」を舞台に繰り広げられる5篇の物語のオムニバス。どれもけっして明るい話ではない。人間や社会の抱えるどうしようもない矛盾や鬱屈が描かれていく。

函館は20代の頃に住んでいた町なので懐かしい。

以前、函館市文学館で佐藤の直筆原稿を見て衝撃を受けた。升目いっぱいに書かれたカクカクとした字で、いかにも繊細で神経質そうな感じ。41歳で自死した事実を想起せずにはいられなかった。

152分、京都みなみ会館。

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2021年09月22日

映画「ストレンジャー・ザン・パラダイス」

監督・脚本:ジム・ジャームッシュ
出演:ジョン・ルーリー、エスター・バリント、リチャード・エドソンほか

1984年(日本では1986年)公開作品。
ニューヨーク、クリーブランド、フロリダを舞台に展開するロードムービー。ちょっとした行き違いや、ちょっとした幸せが、淡々と綴られていく。

位置関係を調べると、クリーブランドはニューヨークから西へ約600キロ、そこから南へ約1500キロでフロリダとなる。さすがにアメリカは広い。

久しぶりに観て、またいろいろと発見があった。

ウィリーは普段はハンガリー出身であるのを隠していること、エディーはハンガリー料理が口に合わなかったこと、アメフトやTVディナーやホットドッグやモーテルがアメリカを象徴していることなど。

アップリンク京都、89分。

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2021年09月09日

映画「ナイト・オン・ザ・プラネット」

監督・脚本:ジム・ジャームッシュ
出演:ウィノナ・ライダー、ジーナ・ローランズ、アーミン・ミューラー=スタール、ジャンカルロ・エスポジート、イザック・ド・バンコレ、ベアトリス・ダル、ロベルト・ベニーニ、マッティ・ペロンパーほか

1992年公開作品。原題は「Night on Earth」。

同じ日の同じ時刻に世界の5つの都市(ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、ローマ、ヘルシンキ)で起きるタクシー運転手と乗客のやり取りを描いたオムニバス形式の作品。笑いもあるし、シリアスな場面もある。

学生時代に観て以来、大好きな作品だ。この映画を見てウィノナ・ライダーのファンになった。

好きな作品でも映画館で見られる機会はそんなに度々あるものではない。今回、ジム・ジャームッシュ回顧特集があって本当に良かった。

30年近く前の作品だが、現在の視点で見ると、ダイバーシティ(多様性)の問題に早くから意識的に取り組んでいたことがよくわかる。

映画は、まだ日が暮れる前のロサンゼルス(午後7時7分)から始まり、最後のヘルシンキ(午前5時7分)で夜が明けていく。ヘルシンキの朝の出勤風景を見て、映画から現実の世界に戻ってくる感じだ。

アップリンク京都、129分。

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2021年09月05日

映画「ミステリー・トレイン」

監督・脚本:ジム・ジャームッシュ
出演:永瀬正敏、工藤夕貴、ニコレッタ・ブラスキ、スクリーミン・ジェイ・ホーキンス、ジョー・ストラマー、スティーヴ・ブシェミ

1989年公開の作品。

3話からなるオムニバス形式。エルヴィス・プレスリーゆかりの地、テネシー州メンフィスの安ホテルに泊まる3組の登場人物たちが織り成す物語。

観終わってからずっと「♪ Train I ride, sixteen coaches long〜」とプレスリーの歌声が心地よく頭に流れ続けている。

「ミステリー・トレイン」(1989)と「ナイト・オン・ザ・プラネット」(1992)は学生時代に観たからだろうか、今でも特別な愛着を持っている。

アップリンク京都、113分。

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2021年08月30日

文化的背景

映画「コーヒー&シガレッツ」には、文化的・社会的な背景がわからないとピンと来ないシーンがけっこうある。さらに2003年製作という時代背景も踏まえなくてはならないのだろう。

例えば、4つ目のエピソード。少年が食べている豆菓子(春日井製菓の「グリーン豆」)を指して、父が友人に「中国産だ」と言う。少年はそれに対して首を振り、無言でつり目のポーズをしてみせる。それを見て父は「日本産か」と答える。

つり目がアジア系への蔑視表現というのはわかるのだが、中国と日本の差をそれで表しているのはどういう意味なのか。そのあたりが今ひとつわからない。

もう一つ。9つ目のエピソードでは、登場人物の片方が会話の中で「tree hugger」という言葉を発したことから、二人の間が気まずくなる。字幕には「地球にやさしい人」と出ていたが、どうもしっくり来ない。ネットで調べてみると、「tree hugger」(樹木を抱く人)は、かつて環境保護派に対する蔑称として使われていた言葉だとわかった。

つまり「tree hugger」の一言で、二人の環境保護に対するスタンスの違いが露呈してしまったわけだ。これも原語のニュアンスや文化的背景を知らないと、なかなか理解できない部分と言っていいだろう。

もちろん、どんな映画にもそうした要素はあるわけだが、「コーヒー&シガレッツ」は特にその傾向が強い。何も知らなくても十分に(私には)面白いのだけれど、おそらくアメリカ社会や文化に詳しい人に解説してもらうと、さらに何倍も楽しめるのだろうと思う。

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2021年08月29日

映画「コーヒー&シガレッツ」

監督・脚本:ジム・ジャームッシュ
出演:ロベルト・ベニーニ、スティーブ・ブシェーミ、イギー・ポップ、ケイト・ブランシェット、ビル・マーレイほか

2003年制作、日本での公開は2005年。

10分程度の短篇×11篇のオムニバス作品。作品同士に直接の関わりはないが、ところどころ重なったり響き合ったりするところがあり、全体として一幅の曼荼羅のようになっている。

どの作品も2、3名の登場人物がテーブルで煙草とコーヒー(または紅茶)を飲みながら会話する内容で、明確なストーリーやオチがあるわけではない。会話のちょっとしたズレや間、行き違いといったものが描かれている。

出演者はみな英語を話すが、出身地・国籍を見ると、イタリア、フランス、イギリス、オーストラリア、コートジボワールと多様で、いかにもアメリカという感じがする。

さらに言えば、黒人と白人、北部と南部、コーヒーと紅茶、セレブと庶民、環境保護と反環境保護など、様々な文化的・社会的背景がズレや笑いを生むことにつながっている。そのあたりは、アメリカ人でないと十分にはわからない部分も多いのだろうと思う。

それにしても・・・ケイト・ブランシェットすごいな。

アップリンク京都、97分。

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2021年08月18日

映画「デッドマン」

監督・脚本:ジム・ジャームッシュ
出演:ジョニー・デップ、ゲイリー・ファーマー、ランス・ヘンリクセン、イギー・ポップほか

1995年の作品。

日本公開時以来26年ぶりに見た。前回はところどころ寝てしまった記憶がある。

暗転を多用したオープニングからの流れにまず引き込まれる。カフカ的不条理から始まって、西部劇&ロードムービーになって、最後は補陀落渡海で終わる感じ。

ネイティブアメリカンの風習や考え方が描かれているのも興味深い。ウィリアム・ブレイクの詩が何度か出てくるので、詳しい人はさらに楽しめるだろう。

アップリンク京都、121分。

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2021年08月16日

映画「ギミー・デンジャー」

監督・脚本:ジム・ジャームッシュ
出演:イギー・ポップ、ロン・アシュトン、スコット・アシュトン、デイヴ・アレクサンダー、ジェームズ・ウィリアムソンほか

2016年公開作品。

ジム・ジャームッシュの映画はほとんど見ているのだが、この作品は今回初めて。1967年から74年まで活動したロックバンド「ザ・ストゥージズ」を描いたドキュメンタリー。

メンバーのインタビューや当時のライブ映像のほか、アニメーションやテレビ番組など様々な映像を組み合わせて、彼らの軌跡を丹念に再現している。

2003年の再結成以降やメンバーの死といった近年の動向も描かれており、彼らのミュージシャンとしての生き方に強い感銘を受けた。

アップリンク京都、108分。

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2021年08月14日

映画「パーマネント・バケーション」

監督・脚本:ジム・ジャームッシュ
出演:クリス・パーカー、リーラ・ガスティル、ジョン・ルーリー他

アップリンク京都で「ジム・ジャームッシュ特集」が始まった。
毎日3本、9月2日までの期間に全12作品が上映される。

この映画は、ジム・ジャームッシュが学生時代に制作した長篇第1作(1980年)。16歳の主人公がニューヨークの町をさまよい歩いて出会ういくつかのエピソードが描かれる。

私のこの映画との出会いは高校生の頃。友人に「これ、いいよ」と言われて手書きのラベルのビデオを借り、衝撃を受けた。私の人生の深いところに影響を与えている作品だ。リルケの『マルテの手記』にも似ていると思う。

・・・天野、元気にしているかな。

アップリンク京都、75分。

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2021年08月04日

映画「冬冬の夏休み」

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原題:冬冬的假期
監督・脚本:侯孝賢(ホウ・シャオシェン)
原作・脚本:朱天文(チュー・ティエンウェン)
出演:王啓光、李淑驕A梅芳、楊徳昌ほか

1984年公開の台湾映画。現在、「侯孝賢監督40周年記念―台湾巨匠傑作選2021」の一本として上演されている。

台北に暮らす兄妹が夏休みに田舎の祖父の家で過ごす様子を描いた作品。近所に住む子どもたちとの遊び、自然豊かな田園の風景、そこで起こるいくつかの小さな事件。

自分が子どもだった頃(昭和50年代)を懐かしく思い出した。そうそう、みんな短い半ズボンを穿いてたよなあ。Wikipediaによれば

子供用の1〜2分丈のズボン。日本では1950年頃から1990年頃まで男児用として一般的だった。

ということらしい。そう言えば、今ではすっかり見なくなった。

アップリンク京都、98分。

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2021年07月27日

映画『男はつらいよ 花も嵐も寅次郎』

監督・原作:山田洋次
脚本:山田洋次、朝間義隆
出演:渥美清、倍賞千恵子、田中裕子、沢田研二、下條正巳、三崎千恵子ほか

1982年公開のシリーズ第30作。
大分県の臼杵、湯平温泉、杵築、鉄輪温泉などが舞台になっている。

「男はつらいよ」は単なる喜劇や恋物語としてだけでなく(それだけでも十分だけれど)、時代の記録としての側面も持っている。大分空港へ向かうホバークラフト(1971年開設、現在は廃止)やヤマト運輸の宅急便(1976年開始)が印象的な形で登場する。

映画「男はつらいよ 花も嵐も寅次郎」(松竹、一九八二)には閉園間際の谷津遊園が登場する。沢田研二演じる三郎はチンパンジーの飼育員という設定だった。
             木下直之『動物園巡礼』

千葉県の谷津遊園は、この映画が公開される一週間前に閉園した。もちろん偶然ではなく、閉園する遊園地の姿をフィルムに残そうとロケ地に選ばれたのだ。

これを、例えば谷津遊園のドキュメンタリーの形で残すこともできるだろう。でも山田監督のすごいのは、それを普通のドラマの中にさり気なく残しているところだ。観覧車の中で三郎が「好きや」と告げるシーンでも、観覧車の錆がひどく目立つ。

「男はつらいよ」シリーズは、歳月が経過すればするほど時代の記録としての価値がますます高まっていく作品だと思う。

アップリンク京都、106分。

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2021年07月21日

映画「茜色に焼かれる」

監督・脚本:石井裕也
出演:尾野真千子、和田庵、片山友希、オダギリジョー、永瀬正敏ほか

ブレーキの踏み間違いによる死亡事故、コロナ禍で閉店したカフェ、母子家庭の貧困、風俗店で働く女性たち、学校でのいじめなど、近年の社会問題をふんだんに取り入れた内容。

率直に言ってちょっと盛りだくさんな印象もある。それでも骨太な人間ドラマに仕上がっているのは、主演の尾野真千子の演技力によるところが大きい。

人間の持つ美しさと醜さが次々に浮き彫りになる。今の時代を生き延びるのに大切な逞しさを伝えてくれる作品だ。

京都みなみ会館、144分。

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2021年07月18日

映画「ざわざわ下北沢」

監督:市川準
出演:原田芳雄、北川智子、小澤征悦、フジ子・ヘミング、りりィ、樹木希林、渡辺謙、鈴木京香、豊川悦司、広末涼子、平田満ほか

2000年公開の作品。

下北沢駅近くの喫茶店「KARASS」でアルバイトする主人公を中心に、店の常連や友人、商店街の人々のエピソードを描いた群像劇。冒頭に登場する小さな置物が次々と人手に渡っていくことで、順々にエピソードが切り替わっていく。

下北沢の町の雰囲気が濃厚に立ち込めていて、懐かしい気分になる。

出町座、105分。

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2021年07月02日

映画「モルエラニの霧の中」

監督・脚本:坪川拓史
出演:大杉漣、大塚寧々、香川京子、小松政夫、坂本長利、水橋研二、菜葉菜ほか

「モルエラニ」はアイヌ語で「小さな坂道を下りた所」の意味で、室蘭の語源にもなった言葉だそうだ。

室蘭在住の監督が、室蘭市民の協力も得ながら室蘭で撮影した作品。冬、春、夏、晩夏、秋、晩秋、初冬の全7篇から成り、それぞれの物語は緩やかなつながりを持っている。

214分という長尺の映画で、前半3篇が終ったところで10分間の休憩があった。

何らかの欠落や喪失を抱えた人物が織り成す物語が、モノクロとカラーの映像で描かれていく。現実、幻想、過去、写真、記憶、夢などが交差して不思議な味わいを感じさせる。

現実の世界では亡くなった大杉漣や小松政夫が生きていることも、この映画にはふさわしいように思われた。

室蘭市青少年科学館の蒸気機関車「D51 560」は、映画ではスクラップにされる運命になっていたが、実際は旧室蘭駅舎公園(ぽっぽらん公園)に移設されて展示されているらしい。一度会いに行きたい。

214分、京都みなみ会館。

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2021年06月08日

映画「僕の帰る場所」

監督・脚本・編集:藤元明緒
出演:カウン・ミャッ・トゥ、ケイン・ミャッ・トゥ、アイセ、テッ・ミャッ・ナインほか

在日ミャンマー人家族の不安定な暮らしと苦悩、そして日本で育った子どもたちのアイデンティティをめぐる問題を描いた作品。

2017年公開の作品だが、今年2月のクーデター以降のミャンマー情勢を踏まえて、急遽再上映されることになった。

キャストには演技経験のないミャンマー人を多く登用し、ドキュメンタリーのように家族のやり取りを撮ることに成功している。2作目の「海辺の彼女たち」とも共通する点だ。

日本語が上手で家族の中で一番しっかりしていたお兄ちゃんが、ミャンマーに移ってからは周囲になじめずに落ち込む姿が印象的。

とても良質な作品で、久しぶりにパンフレットも購入した。

出町座、98分。

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2021年06月03日

映画「狂猿」

監督:川口潤
出演:葛西純、佐々木貴、伊東竜二、武田誠志、松永光弘ほか

デスマッチ界でカリスマ的な人気を誇るプロレスラー、葛西純のドキュメンタリー。

リング上の激しい戦いの姿だけでなく、プロレスに入ったきっかけ、デスマッチに対する思い、家族のことなど、プライベートな部分も含めて人間葛西純を描き出している。

ヘルニアによる長期欠場からの復帰戦を予定していたアメリカ興業がコロナ禍で中止となり、2020年6月の興行再開後も声援を飛ばしにくい状況が続く。

そんな中で46歳になる葛西はなぜ戦い続けるのか。

「すごいんですよ、生きてるって実感が」「レベル46になったと思えばいい」といった言葉が、まっすぐに胸に響く。

流血は当り前。蛍光灯で殴り合い、剃刀で切り付け、両頰は串刺しになり、ガラス片や画鋲が背中に刺さる。

その過激さに思わず目を背けたくなるのだが、そこにもプロとしての見せ方があり、「本当に死んでしまったらプロじゃない」という強い矜持があるのだ。

107分、アップリンク京都。

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2021年05月27日

映画「街の上で」

監督:今泉力哉
脚本:今泉力哉、大橋裕之
出演:若葉竜也、穂志もえか、古川琴音、萩原みのり、中田青渚ほか

下北沢の町を舞台にした青春群像劇。魚喃キリコの漫画が出てくると聞いて見に行った。

登場人物の会話がとても自然な感じで、古着屋、古本屋、ライブハウス、ラーメン屋、小劇場、バー、カフェなど街の風景にも惹かれる。

中学・高校時代は遊ぶと言えば下北沢だったし、大学時代は下北沢の近くに住んでいたこともあって、いろいろと懐かしい。

見ていて今年1番の作品と思ったのだけど、終盤の展開がマンガチックなのが今ひとつ。別にすべての話題を回収しなくてもいいのにな。

でも、おススメ。

出町座、130分。

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2021年05月21日

映画「狼をさがして」

監督・製作:キム・ミレ
出演:太田昌国、大道寺ちはる、荒井まり子、荒井智子、浴田由紀子、内田雅敏、宇賀神寿一ほか

1970年代に三菱重工本社ビル爆破事件などを起こした「東アジア反日武装戦線」についてのドキュメンタリー。原題はそのまま「The East Asia Anti-Japan Armed Front」。

20代の頃に松下竜一『狼煙を見よ』を読んで以来、彼らにはずっと関心を持ち続けてきた。

今回、右翼団体の妨害によって上映が中止になるなどの騒ぎが起きている。それは取りも直さず、彼らの提起した問題が今も解決されずに残っているということなのだと思う。

戦時中の徴用工による訴訟は続き、アイヌ差別も解消されていない。外国人労働者や入管の問題も同じ文脈で捉えることができるだろう。彼らが自ら名乗った「反日」という言葉は、現在しばしば他者へのレッテル貼りに使われるようになっている。

死刑判決を受けたまま獄中で亡くなった大道寺将司は俳句を詠んでいた。2013年に句集『棺一基』が第6回日本一行詩大賞を受賞したのだが、同時受賞が永田和宏歌集『夏・二〇一〇』であった。授賞式で太田昌国さんと話をしたのが懐かしい。

京都みなみ会館、74分

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2021年05月14日

映画「海辺の彼女たち」

脚本・監督:藤元明緒
出演:ホアン・フォン、フィン・トゥエ・アン、クィン・ニューほか

技能実習生として日本にやってきた3名のベトナム人女性の物語。過酷な労働環境や不法就労の問題が浮き彫りになる。予告編を見てドキュメンタリーかと思っていたのだがそうではなく、取材に基づいたドラマであった。

雪深い港町の風景が印象に残る。

以前私が働いていた物流倉庫やプラスティック成型工場でも、ベトナム人や中国人の研修生が働いていた。外国人労働者の数は2019年時点で約165万人、そのうち技能実習生は約38万人にのぼる。

こうした人々の働きがなければ、既に私たちの生活は成り立たなくなっているという現状があるのだ。

京都シネマ、88分。

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2021年05月05日

映画「緑の牢獄」

監督:黄インイク

かつて日本の植民地であった台湾から西表島に移住し、炭鉱で働いていた人々がいた。両親に連れられて海を渡ってきた90歳の女性(橋間良子)の姿を映しつつ、忘れられた歴史を浮かび上がらせるドキュメンタリー。

西表島に炭鉱があったことをこの映画で初めて知った。国境や境界をめぐる問題としても興味深いし、一人の人間の人生ドラマとしても非常に心に滲みる内容であった。最後のシーンが特に印象的。

京都シネマ、101分。

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2021年04月27日

映画「ブックセラーズ」

監督・編集:D・W・ヤング

ニューヨークで書店や本に関わる仕事をする人々へのインタビューを中心に構成されたドキュメンタリー。

書店主、ブックディーラー、作家、コレクターなど、本を愛する人が次々と登場する。数百年にわたる本の歴史、ネット通販の発達と書店の衰退、数々の稀覯本やオークションの様子、出版業界における女性差別の問題など、話題は多岐にわたり、テンポが速く密度の濃い内容となっている。

こういう映画が撮られることは心強い。その一方で、本をめぐる情勢がそれだけ厳しいということでもあるのだと思う。

京都シネマ、99分。

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2021年04月19日

映画「アンタッチャブル」

監督:ブライアン・デ・パルマ
出演:ケビン・コスナー、ロバート・デ・ニーロ、ショーン・コネリー、アンディ・ガルシア、チャールズ・マーティン・スミスほか

過去の名画を上映する「午前十時の映画祭11」の一本。
1987年公開の映画。
ずいぶん前に見たことがあるけれど、映画館で見るのは初めてかも。

オープニングがかっこいい。
ショーン・コネリーは背が高い。
エスキモーキスが「イヌイットのおやすみ」に。
エレベーターの女は??

京都シネマ、119分。

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2021年04月15日

映画「ラモとガベ」

監督・脚本:ソンタルジャ
出演:ソナム・ニマ、デキ、スィチョクジャほか

「映画で見る現代チベット」上演作品。
結婚しようとするラモとガベが思いがけない困難に巻き込まれていくストーリー。

子どもが道を教えたり、人を呼んできたり、伝言や物を運んだりする場面が何度も出てくるのが印象に残った。ちょっとしたお手伝いというか、お使いという感じ。

出町座、110分。

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2021年03月14日

映画「BOLT」

脚本・監督:林海象
美術:ヤノベケンジ
出演:永瀬正敏、佐野史郎、大西信満、月船さらら他

震災や原発事故に関する3つのエピソード「BOLT」「LIFE」「GOOD YEAR」で構成された作品。

「BOLT」は象徴的、「LIFE」は写実的、「GOOD YEAR」は幻想的。雰囲気の異なる3篇であるが、主演はいずれも永瀬正敏。全体で一人の男の物語にもなっている。

出町座、80分。

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