2018年から2021年までの作品を収めた第28歌集。
けさ生れて土より上る一ミリのまひまひは一ミリの貝すでに負ふ
引いては駄目といはれつつまた引いて負くる力士見てをりいたく悲しも
骨の折れし相合傘の高校生スタバの前にて追越すわれは
クッションの絵として栗鼠は十年も胡桃を食べてゐる まあいいか
ふと醒めしあかときといふ空間あり時間流れてをらぬ涼しさ
理学療法士は独居のわが家訪れてしばしわが手足動かしゆけり
山茶花がけさはまつかに咲きあふれ寒さが痛いからだとなれり
力ある雪雲低くたれこめて重厚となる冬のこころは
引き算のようにご近所のひと消えて何事もなし無しといふことの
雨の日曜ご近所は孫子(まごこ)おとづれて大はしやぎして楽しむ声す
1首目、孵化したばかりのカタツムリ。飼っている人ならではの歌。
2首目、わかっていても止められないことが、きっと誰にでもある。
3首目、突然のハプニングも若い二人は多分楽しんでいるのだろう。
4首目、十年間も食べ続けてお腹を壊さないか心配になったのかな。
5首目、まるで時間が止まった世界に一人で取り残されたみたいだ。
6首目、訪問リハビリなどを受けている場面。淡々とした詠みぶり。
7首目、「寒さが痛い」が何とも痛切だ。赤さもひりひりと感じる。
8首目、雪雲の描写から始まって最後は自分の心の話へ移っていく。
9首目、亡くなったり施設へ移ったり。でも日常は何事もなく続く。
10首目、「は」という助詞があることで自分の暮らしが対比される。
2026年3月25日、角川文化振興財団、2700円。































