納豆のねばねばはいのちのねばねばと糸引納豆いく度も練る
和菓子屋のショーケースにはさくら餅はやくも並ぶ春のさきぶれ
東西南北四方に桃の花咲く村まぼろしの如おもひみてをり
静岡鉄道(しづてつ)の沿線のさくらのかがやきを黄色い電車に運ばれてゆく
コンビニのおにぎり二つを喰ひ終へて横須賀軍港雲一つなし
行き過ぎて柊の白き花の匂ひ十一月半ば冬の香りす
わが時の流れに石川さゆりの歌がありその時どきのうたをつぶやく
六十色の色使ひ分け葉のいのち写したるとき絵がうごきだす
若水は南アルプスの天然水、塩は奥能登の真塩にて、米は山形のつや姫供ふ
珈琲に練乳(ミルク)を足して今朝は飲むミルク注いで心揺れたり
1首目、ねばねばは身体に良いと聞くので念入りに練っているのだ。
2首目、和菓子は季節を先取りする。花より早く販売が始まる桜餅。
3首目、小中英之の名歌「ぼあーんぼあーん」を踏まえた歌だろう。
4首目、車体の黄色と桜の色の取り合わせが春らしい気分を伝える。
5首目、上句下句に関係はないのだが食べて消えてしまったみたい。
6首目、通り過ぎてから香りに気づく。柊の字のなかにも冬がある。
7首目、50年以上も活躍するのでその時々の思い出と重なるのだ。
8首目、60色の色鉛筆を使って丁寧に描いていくと絵に命が宿る。
9首目、新年の神棚に供えるもの。ペットボトルの水なのが現代的。
10首目、ふだんは入れないのだろう。ミルクの揺れが心を揺らす。
2025年10月3日、現代短歌社、3000円。






























