2022年から2025年までの作品459首を収めた第11歌集。
九十二の母がこのごろよく使ふ言葉「めっちゃ」はどこから来たか
このひとはもう死にたるか生きゐるか思ふをやめて映画見てをり
わが友は宗教二世を産みたるか返事出さざる古手紙あり
綿の実の軽さかなしむ一日に百キロを摘む労働あれば
節目ありて悩める夫を見てをりぬ節目なきながき時間を生きて
ゼレンスキー氏平和のための武器を乞ふ広島はくろき青葉にまみれ
双六は一本道でありけるを蜘蛛の巣状の人生の道
病人の家に亀ゐる水槽は悪しとぞ 消えし水槽と亀
父を恋ふこころだけ母に残りをり少し恨みしはわれが記憶す
青年はわれよりわれの息子よりふかき笑顔で母を笑はす
1首目、テレビで見たのか若者と話すことでもあったのか気になる。
2首目、古い映画に出ている俳優の生死についてつい考えてしまう。
3首目、宗教の勧誘の手紙だったのか。仲の良い友だったのだろう。
4首目、発想が逆転している歌。もっと重ければ早く到達するのに。
5首目、定年を迎える夫と定年のない主婦である自分の人生の違い。
6首目、G7広島サミット。「平和のための武器」とは大きな矛盾。
7首目、子どもの頃に思い描いていた人生の姿と現実の人生は違う。
8首目、迷信に過ぎないと思っても病人のために処分するしかない。
9首目、良い思い出だけが残る姿を複雑な思いで見ているのだろう。
10首目、施設の職員の笑顔。家族同士の方がうまくいかないもの。
2026年5月27日、角川文化振興財団、2700円。































