先日の文フリ京都で購入。
「はるなつ」に続く一冊で、発行・編集は吉岡太朗。
http://matsutanka.seesaa.net/article/453691447.html
7首の連作が一人2篇ずつ、計4篇載っている。
目を細めにらむみたいに紅葉見るきみを守れば失うだろう
橋爪志保「日々」
上句は視力の悪い人などが時々見せる仕種。結句は「(きみを)失うだろう」という意味で読んだ。守ろうとするとかえって失ってしまうという予感。
川べりで暮らす小さな猫をまた見かけた 浮いた背骨をなでた
橋爪志保「日々」
下句の「見かけた」「浮いた」「なでた」がカエサルの「来た、見た、勝った」みたいで心地良い。「浮いた背骨」は少し痩せている感じだろう。
かげろうのはねのふるえのてにすくうみずはこのよのひかりにぬれて
おさやことり「ひかりにぬれて」
おさやことり作品はすべて平仮名表記。二句「ふるえの」は「震えのように」という感じか。掌に掬うことによって初めて光の中で揺らめく水。
じてんしゃにふたつのみみをのせてゆくよるがひやしたあけがたのまち
おさやことり「ひかりにぬれて」
二つの耳だけが無防備に寒さに晒されている。下句の「よるがひやした」に発見があっていい。最も気温が低いのは明け方の日の出直前である。
シャカシャカと振ってたのしいホッカイロ きみの願いをかなえてあげる
橋爪志保「着地」
明るい無邪気さと根拠のない全能感に満ちた一首。どこが良いのかうまく説明できない。K音の響きだろうか。内容と韻律がうまく合っているように感じる。
おおみそかおしょうがつにもようびあることのしずかなきみのみじたく
おさやことり「ゆのためてある」
12月31日も1月1日も、おそらく君はカレンダー通りに仕事があるのだろう。休みであれば関係のない「曜日」を意識せざるを得ないのだ。
2018年1月21日。