2026年09月01日

猪木武徳『地霊を訪ねる』


副題は「もうひとつの日本近代史」。

日本全国の鉱山や産業遺跡、温泉地などを旅した紀行文。

司馬遼太郎の「街道をゆく」シリーズのような感じで、「伊那谷から中山道へ出る」「登米、栗原から鶯沢の細倉鉱山へ」「筑豊三都を巡り、秋月城址へ」など、計27篇を収めている。

歴史上の事件や人物についてよく知りたいと思った時、事件の現場やその人物が活動した場所に行ってみたいという気持ちになることがある。「地霊」を感じてみたいということだろうか。
このような養子を迎えての「洋学」の継承には、学問も商売も、個人や一世一代限りの事業では完結しないほど、奥深いという認識があったのだろう。幕藩体制下の人材育成と選抜には実力主義による広域のネットワークが存在したことが分かる。
新興宗教の教団には素晴らしい美術館を持っているところがある。熱海のMOA美術館(世界救世教)、滋賀県信楽のMIHOミュージアム(世界救世教から分かれた神慈秀明会)など(…)。飛騨高山の光ミュージアムは崇教真光の総合博物館だ。
この由緒ある銀行は、明治初期に全国で一五〇余り設立された「国立銀行」のひとつだ。ちなみに「国立銀行」は、「私立」であって、国が設立して経営するという意味の「国立」ではない。米国のNational Bank(国法に基づく銀行)を(誤)訳したものだ。
青森のリンゴのように、士族授産事業を契機としてその後の地方の特産品となった例も少なくない。静岡のお茶、福岡の久留米絣、名古屋の養鶏などもそうした例であろう。

こうした興味深い指摘が次々と出てきて飽きない。

北一輝が「明星」に歌を投稿していたことや、田中正造が多くの歌を詠んでいたことなども、この本で初めて知った。機会があればさらに調べてみたい。

2023年1月30日、筑摩書房、2400円。

posted by 松村正直 at 22:56| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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