副題は「グレーな世界とその痕跡」。
6月に「横浜市大倉山記念館」で別邸歌会を行った際に、翌日、横浜を観光した。そんなこともあって、ちょっと横浜が気になっている。
横浜に生まれ育った著者が、オシャレな観光地としての横浜ではなく、ダフ屋や娼婦や革命家、ストリップ劇場、ドヤ街、海外への移民、米軍住宅などディープで猥雑な横浜を記した本。
この著者の本は、これまでに何冊か読んできた。どれも、けっこう個性的だ。
『日本殺人巡礼』
https://matsutanka.seesaa.net/article/504080009.html
『忘れられた日本史の現場を歩く』
https://matsutanka.seesaa.net/article/510282426.html
『軍都の陽炎』
https://matsutanka.seesaa.net/article/517002594.html
一九三六年(昭和一一)に設立されたのが大洋捕鯨株式会社だった。ちなみに大洋漁業はマルハ株式会社という企業名に変更するが、林兼商店の「○ハ」からその社名が付けられている。
マルハはその後、ニチロ(日魯漁業)と合併してマルハニチロとなり、今はUmios株式会社になっている。そんなふうにして、いろいろな痕跡が消えていくわけだ。
彼女たち、外国人を相手にする遊女は「らしゃめん」と呼ばれた。漢字では綿羊娘となる。その語源は、西洋の船乗りたちが遠洋の航海で、雌の羊を性欲のはけ口としたことから、そう呼ばれるようになったという。
戦前の頃から最後の移民船が出た一九七三(昭和四八)までは、経済的な困窮から抜け出すために移民たちがブラジルを目指したわけだが、日本経済が大きく伸びると、ブラジルから日本へと逆流ともいえる現象が起きた。
新田開発後から昭和四〇年代までの地図を眺めれば、大通り公園の場所は、川だったことがわかる。その川は新吉田川と呼ばれていた。ここ横浜の色街も全国のほとんどの色街と同じく、川のほとりに形成された。
時おり自らの回想や体験も交えながら、横浜という街の光と影を描いていて、読み応えがあった。
2022年5月10日第1刷、2025年4月20日第4刷。
ちくま新書、960円。


