2026年08月06日

稲泉連『増補 復興の書店』


2012年に小学館より単行本、2014年に小学館文庫として刊行された本に、「補章 能登の書店」を追加したもの。

東日本大震災で被災した東北各地の書店を訪ね、書店員や取次会社の思いと復興に向けた動きを描いたノンフィクション。

「本というのは趣味の一部で、何か大変なことがあったときに生活の中で最初に切られるのは趣味の部分だから、本屋を再開しても本は売れないだろうって。でも、それが逆だったんです。普通は食料や水だと思うじゃないですか。お客さんがお店に集まってくる様子を見て、自分の仕事ってこういうものだったんだ、と発見した思いでした」
(石巻市「金港堂」阿部利子)
「本屋って最初から欲しい商品がある人もいるけれど、いちばんの魅力は何となく棚を見ながら、一人で自分の興味のありそうな本を探せるところですよね。その意味で気分転換ができる場所だったのかな、と思うんです」
(相馬市「丁子屋書店」佐藤トキエ)
「それに本屋というのは神社の大木みたいなものでね。伐られてしまって初めて、そこにどれだけ大事なものがあったかが分かる。いつも当たり前のようにあって、みんなが見ていて、遊んだ思い出がある場所。震災が浮かび上がらせたのは、本屋は何となくあるようでいて、そんなふうに街の何かを支えている存在なのだということなのではないか」
(「ジュンク堂書店」工藤恭孝会長)

こうした心温まる話、心強い話が多く収められている一方で、書店をめぐる現実は年々厳しさを増している。

書店員として本書に登場し、小学館文庫版に「『復興の書店』を読まれる皆様へ」を書いている佐藤純子さんの働いていた「ジュンク堂書店仙台ロフト店」は2014年に閉店。

また、本書の巻末の解説「災害と書店」を書いている日野剛広さんが店長を務める「ときわ書房志津ステーションビル店」も、先日、今年10月25日での閉店を発表したところだ。

あとがきには、震災から15年を経た書店の今の様子も記されている。大手書店(山田町)、一頁堂書店(大槌町)、「桑畑書店」(釜石市)、「ブックポートネギシ」(大船渡市)など、いつか機会があれば訪れてみたい。

2026年2月13日、岩波現代文庫、1210円。

posted by 松村正直 at 11:00| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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