2026年07月21日

『速水御舟随筆集』


副題は「梯子を登り返す勇気」。

40歳という若さで亡くなった画家・速水御舟(1894-1935)の残した文章を収めた随筆集。

絵画修業の道程に於て私が一番恐れていることは型が出来ると云うことである。何故なれば型が出来たという事は一種の行詰りを意味するからである。芸術は常により深く進展して行かねばならない。だからその中道にて出来た型はどんどん破壊して行かねばならない。
絵画にあっても、例えば一本の線を引くにしても、いい線を描こうと意図して引いた線は、最早や純粋な心から離れているものであるからして、立派な線とは言われない。また、いい線が引けたらなどと考えたときにも、同じ理由から、それは決していい線であるとは言われないことになる。
私は技巧と気持を区別しません。どの道でもそうじゃないかと思いますが、心と技巧は同じいもので、いくら自分が理想が高くても、技巧がなければ、思想をもっていても何にもならない。
梯子の頂上に登る勇気は貴い、更にそこから降りて来て、再び登り返す勇気を持つ者は更に貴い。大抵は一度登ればそれで安心してしまう。そこで腰を据えてしまう者が多い。登り得る勇気を持つ者よりも、更に降り得る勇気を持つ者は、真に強い力の把持者である。

やはり一流の人の言葉には重みがある。短歌など他のジャンルにも当て嵌まる話がたくさんあると思った。

2024年2月5日、平凡社ライブラリー、1700円。

posted by 松村正直 at 10:58| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。