2022年から2026年の作品を収めた第2歌集。
はつなつの裸婦を象るブロンズにほんとうは性別は無いのに
こわされてみたい あなたと手をつなぐときは心の両眼でおもう
寒風に軋むてのひらいつだって雪は裸で降ってくるのに
午後五時は川が鏡になる時刻わたしのなかの鏡も濡れて
会いたさの冬日のなかを割れてゆくわたし柱状節理のように
冬の画廊にふたりならんでみた絵画ふたつの岩が描かれていた
瞳孔は知りたさの沼その沼へ何羽の鳥を引き摺り込んで
雲梯をぎゅっとにぎっていたころのさみしさ きみの母校を知らず
やわらかくするためだからとり肉にフォークで穴を 穴を 穴を
水筒にくちびるが無くてよかったとほんとうにおもう夏の坂道
1首目、青銅に性別などないのに、なぜ女性だと思ってしまうのか。
2首目、始まり方に強いインパクトがある。二句の句割れが効果的。
3首目、雪が裸であるという発見。「軋む」がまるで機械のようだ。
4首目、あたりが薄暗くなるにつれて川が鏡面のように輝き始める。
5首目、「柱状節理」が印象的。相手を想う気持ちの強さが伝わる。
6首目、心情は何も言ってないのに相手との関係性が浮かび上がる。
7首目、黒目が底なし沼となって対象を飲み込んでいくのだ。怖い。
8首目、「雲梯」とあるだけできっと誰もが小学校時代を思い出す。
9首目、四句までは料理の話だが結句で嗜虐性や暴力性が露出する。
10首目、唇の付いた水筒の感触を生々しく想像させられてしまう。
2026年5月2日、書肆侃侃房、2000円。


