ノンフィクションライターである著者がさまざまな取材を通じて感じたこと、考えたことを記した連作エッセイ集。2015年に岩波書店より刊行された単行本に終章を加えて文庫化したもの。
「生む・生まれる」「支える・支えられる」「狂う・狂わされる」「絶つ・絶たれる」「聞く・聞かれる」「愛する・愛される」「見守る・見守られる」の全7章から成っている。
二〇一三年の晩秋、事態はさらに夫婦を追いつめる方向に進んでいた。妊婦の血液を調べるだけで胎児の染色体異常の有無がわかる新型出生前診断の臨床研究の結果、陽性と判明した妊婦の九割以上が中絶していたのである。
そもそもケアという行為自体、ケアする者とケアされる者という不平等な人間関係を形成せざるをえない。
ダイアログ・イン・ザ・ダークにはもう一つ、大きなねらいがあった。それは仕事が見つかりにくい人が働ける場所であるということである。ここでは目の見えない人たちがアテンドをつとめる。彼らがいて初めて、私たちは闇の中を進んでいける。
こうしたさまざまな「する/される」に関する話を通じて、読者は境界について考えることになる。
世界は、あちら側とこちら側で出来ています。こちら側の人があちら側にいることもあれば、あちら側の人がこちら側にいることもあります。こちらとあちらが一人の中に共存していることもあります。
こうした考え方は、今後ますます大事になってくるように思う。
2025年9月12日、岩波現代文庫、930円。


