副題は「日露隣接地域の生態系とその保全」。
北方四島(択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島)の自然については、以前から興味を持っている。
・大泰司紀之・本間浩昭著『知床・北方四島―流氷が育む自然遺産』
https://matsutanka.seesaa.net/article/387138419.html
・NHK取材班『北方四島・千島列島紀行』
https://matsutanka.seesaa.net/article/408701728.html
本書では、北方四島に生息するサケ、マス、ヒグマ、コウモリ、ネズミ、クジラ、イルカ、アザラシ、トド、ラッコ、オジロワシ、オオワシなどについて、それぞれの専門家が状況を記している。
江戸時代、松前藩の家老・蠣崎波響が描いたアイヌ指導者12人の肖像画「夷酋列像」の中に、褐色と白色の子グマ2頭を連れたアイヌの総首長の息子・イニンカリの絵がある。これまで、この白色の子グマはホッキョクグマである可能性も考えられてきたが、国後島に白い体毛のヒグマが生息しているという情報から、国後島由来の個体である可能性が高まった。
ゴマフアザラシは北太平洋の固有種であり、流氷期(3月)に流氷上の辺縁部で出産・育児を行なう、流氷依存型のアザラシである。
オホーツク海周辺のトドは全体として安定、もしくはやや増加傾向にある。それに大きく寄与しているのがサハリン中部のオホーツク海側にあるチュレニー島だ。チュレニー島はもともとキタオットセイの一大繁殖地で、かつてはその毛皮を目的とした猟業が盛んに行なわれていた。
時は江戸時代にまで遡る。北海道本島の東部や国後島や択捉島などの島々ではオオワシ、オジロワシの尾羽が特産品とされ、両種にとって重要な越冬地であったことが、当時の狩猟記録などから海ワシ類の生息状況を調べた池田圭吾博士によって明らかにされている。
この本を読んであらためて感じるのは、自然界の生きものには国境がないということだ。魚も鳥も海獣類も国境線を越えて自由に行き来している。
北方四島に関する調査や研究にはロシア側との協力が欠かせない。早く日本とロシアの関係が改善して、北方四島を自由に訪れることができるようになってほしい。
2026年3月30日、ヤマケイ新書、1400円。


