訳:岡村嘉子、解説:尾本圭子。
1876(明治9)年に日本を訪れた著者の旅行記の第二巻。
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(エミール・ギメ『明治日本散策 横浜・鎌倉』)
相変らず面白い。読むほどにギメのファンになってしまう。観察が鋭く、見方が公平で、時おりユーモアや皮肉もまじえて飽きさせない。
泉岳寺で赤穂浪士の話を書き、浅草の知り合いの日本人の家を訪ね、増上寺の古い縁起を記し、仏教や漢字について考察し、河鍋暁斎に会いに行き、日光東照宮に参拝する。見るもの聞くものすべてに関心を向け、細かく記録している。
日本の神秘的な睡蓮ときたら、花を浮かべて葉を平たくした、フランスの睡蓮のような弱々しい様子ではなく、水からとび出てそそり立っているのだ。白い芯をもつ薔薇色の大きな杯が、力強い茎の上で開いている。
彼女は塩漬けの桜の花の煎じ茶〔桜湯〕を出してくれた。小さな青磁の湯飲みの中に、花がふわりと浮かんでいる。目には美しいが、飲むのは恐ろしい。
日本人はかようにも快適かつ芸術的で値の張らない民族衣装をもっているのに、どうしてわざわざ窮屈で不格好な西洋の衣服を、大枚をはたいてまで着なければならないと思っているのか、私は理解に苦しむのだ。
その朝、建物を取り壊す音で私は目が覚めた。誰かが何かを叩いたり、何度も打ちつけたり、取りはずしたりしていると思ったら、部屋に光が射してきた。解体されているのは、なんとこの家なのだ。外壁の役目を果たす木製の雨戸が取り払われ、戸袋に紙製の仕切り板〔襖あるいは障子か〕がしまわれた。
旅行記の続きがもっともっと読みたいと思うけれど、これで終わり。
当初は、この後に続く東海道旅行と京都滞在について第三巻、第四巻も出版される予定だったようだが、実現しなかったのだ。何とも残念なり。
2019年4月25日初版、2025年6月30日9版。
角川ソフィア文庫、1120円。


