2026年05月21日

栗木京子歌集『夢のあとさき』

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2022年から2025年までの作品430首を収めた第12歌集。

植物は枯れゆくときに香をもてり雪の晴れ間の庭に出づれば
昼すぎの「のぞみ」に開く本のなか死体は三日経て見つかりぬ
殺人の罪を問はるるロシア兵二十一歳の肌透きとほる
下くちびるゆつくり出して目を閉ぢる昼の電車の中の赤子は
顔か、いや筋肉ならむ夜の風にむらむら揺るる藍のあぢさゐ
貼られゐるお品書きには一字づつ二重丸付き居酒屋暑し
北朝鮮の兵はロシアの兵となり蜥蜴の色の軍服を着る
水あればなにゆゑ遠くへ行きたいと思ふのだらう春の浜名湖
実山椒の緑すがしき店先に双子を乗せたバギーのとまる
むらさきの花房出でて蜂と蜂はじき合ひつつ空へと飛びぬ

1首目、「植物は」とあることで、人間は、私はとの連想が広がる。
2首目、新幹線に乗っている現実の時間と小説の中の時間が交わる。
3首目、「二十一歳」という年齢を入れたことで身近に感じられる。
4首目、上句の描写がいかにも赤ちゃんという感じ。描写は大事だ。
5首目、「筋肉」と捉えたことでまるで闇に蠢く獣のようになった。
6首目、いかにも居酒屋という感じがする。賑やかで少し暑苦しい。
7首目、「蜥蜴の色」が絶妙。色の話だけでないイメージが重なる。
8首目、川や海を通して水は世界へとつながっているからだろうか。
9首目、上句の「み」の頭韻。季節感と爽やかさと生命力を感じる。
10首目、「はじき合ひつつ」が巧みだ。クマバチの勢いと力強さと。

2026年5月10日、本阿弥書店、2500円。

posted by 松村正直 at 09:16| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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