副題は「石川啄木と五人の女性」。
啄木と深い関わりを持った5名の女性(妻の節子、娘の京子、橘智恵子、小奴、母のカツ)を取り上げて、その生涯や啄木に与えた影響を考察した本。随所に鋭い分析が光っていて読み応えがあった。
作品はいいけれども人間としては駄目な奴だった、という旧来の啄木伝説を、鵜呑みにする人はさすがに少なくなってきたようです。
カツと節子の不和の、その根っこの部分に、啄木という人間に対する認識の違いがあったように思われます。それは「嫁姑」という関係だから、ではなく、つまりは、カツは「石川一」を愛し、節子は「石川啄木」を愛したのです。
全部で二十二首の歌。ここに啄木の潜ませた暗号が、智恵子に伝わっていたかどうか。二十二というのは、智恵子にとって意味のある数字でした。彼女は明治二十二年生まれ、そのとき数え年二十二歳でした。
「あとがき」に記された次の文章にも共感した。
昨今はやりの「作品を作者から切り離して読む」という読み方を、私は採りません。血を抜き肉を削ぐような無残な行為と思われて……。作者がいのちをかけて、魂を込めて書いたものを、どうしていのちや魂を抜いて読むことができるでしょうか。
私の『啄木ごっこ』は全体に女性に関する記述は少なめだったので、その意味でもいろいろと教えられる一冊であった。
2020年10月20日、未知谷、1800円。


