2026年05月12日

今井むつみ・秋田喜美『言語の本質』


副題は「ことばはどう生まれ、進化したか」。

私たちに身近なオノマトペを切り口にして、子どもがどのように言語を習得するのか、そして言語が現実世界とどのように結び付いているのかといった問題を追求している。

ベストセラーになっている本だが、確かにとても面白かった。言語学だけでなく、認知科学や発達心理学などさまざまな知見が盛り込まれている。

日本語の「かたい」という形容詞はいかにも硬く、「やわらかい」という形容詞はいかにも柔らかく感じられる。「かたい」はk、tという阻害音を、「やわらかい」はy、w、rという共鳴音を含んでいる。そのため、日本語を知らない外国人に「どちらがsoftでどちらがhard?」と聞くと、多くの人が正解する。
言語は目の前の物事だけでなく、その場にないものや過去・未来の出来事も話題にすることができる。つまり、言語はモノや事柄がイマ・ココに存在するか否かに縛られず、時空を超えて物事を語ることが可能である。
ことばが多義になる原因はほかにもある。想像によって意味を派生させようとする志向性である。この志向性によって、ヒトは、決まりきった使い方にとどまっていられず、つねに隠喩・換喩によって意味を発展させ、新しい意味を創り出そうとする。
つまり言語習得とは、推論によって知識を増やしながら、同時に「学習の仕方」自体も学習し、洗練させていく、自律的に成長し続けるプロセスなのである。

人間はまずオノマトペによって身体(現実世界)と言語の結び付きを獲得し、さらに言い間違いや推論の失敗を繰り返しながら言葉を学んでいく。その際、単に言葉を学ぶだけでなく言葉の学び方も学んでいくというところが言語習得の鍵と言っていいのだろう。

2023年5月25日初版、2025年3月20日12版。
中公新書、960円。
posted by 松村正直 at 10:18| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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