2026年04月27日

藤井柊太歌集『パースペクティブ』

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第12回現代短歌社賞の次席になった作者の第1歌集。
「短歌人」所属。名前の読みは「とうた」。

鉄道がまた運転を見合わせる グスコーブドリのように死ねたら
Tシャツのだるむ首元こんなにも自分のことは愛せるけれど
それっきり途切れる話 柱にはいつかのわたしの高さのしるし
パレットに空や海にはなってない青い絵の具の固まりがある
庭のない家に育てば庭を見て土地だと思う 土地に降る雨
新しいものほど深い地下鉄は破綻してゆく制度のようで
花小金井の花の部分に住めたなら生きてあなたと養蜂でもして
冬の陽は金管楽器のロングトーン 影を河原にながく落として
借りている金でつながる 汗をかく瓶のコーラのくびれをなぞる
欠伸しておもう遥かへ赴いて斬られてしまう使者のいること

1首目、鉄道自殺の日常と自らを犠牲にして人々を救ったブドリと。
2首目、「だるむ」がいい。他人のことはこんなには愛せないのに。
3首目、実家に帰った場面か。背比べした柱の線が今も残っている。
4首目、紙に塗られる前の絵の具。何にでもなれる可能性を秘めて。
5首目、どんな家で生まれ育ったかによって、見え方が違ってくる。
6首目、大江戸線や副都心線に乗ると地上に出るまで時間がかかる。
7首目、「花」+「小金井」の地名。一年中花が咲く別世界を思う。
8首目、ニ、三句の比喩がいい。斜めから長々と差してくる感じだ。
9首目、常に意識せざるを得ない相手と、くびれのようにつながる。
10首目、元寇のときの元の使者もさぞかし無念だったことだろう。

2026年4月9日、現代短歌社、2500円。

posted by 松村正直 at 10:02| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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