2026年03月15日

宮崎学『イマドキの野生動物』


人間の生活圏に出没する野生動物の動向を追った写真ルポ。

ノウサギ、ニホンカモシカ、ムササビ、フクロウ、シカ、クマ、ハクビシン、ヌートリア、アカミミガメ、キョン、サル、アマサギ、イノシシなど、様々な動物が登場する。

原生林のような密度の濃い森林が皆伐されて得をしたのが、ノウサギ、シカ、カモシカといった草食獣たちだ。そのいっぽうで、森林の樹木空間を生活圏としていた動物たちは、大きなダメージを受けたことになる。
昭和の中ごろには、まだまだ何種類もの野鳥飼育が認められていた。しかしその後、愛鳥団体などが野鳥保護の観点から、「和鳥は飼わずに、ブンチョウやインコなどの洋鳥を飼いましょう」というキャンペーンを張った。
ツキノワグマは最大で20年くらい生きるとされているが、平均寿命は10年程度と思われる。中央高速道ができてすでに30年以上が経つから、今日生きているクマはすべて、赤ん坊のときから高速道路を見て育った世代である。(…)こうして世代交代の早い動物たちは、社会の変化にどんどん順応していく。

近年、クマによる人や農作物の被害が大きな話題になっているが、14年前に刊行されたこの本でも既にクマの話題が出ている。

農村の高齢化や過剰な自然保護、そしてゴミ捨てや果樹の放置といった意図しない餌付けが、野生動物の横行や獣害を招いている実態が繰り返し指摘されている。

現代の社会はさまざまな形で、野生動物たちに巨大な「餌場」を提供してきた。生き物にとって、「食べる」という行為はもっとも基本的な営みだから、餌のあるところに集まってくるのは当然の成り行きといえる。
人と野生動物が真に共存していくためには、互いに関心を持ち、危険を認識し合って、うまくすみ分けていくことが必要だ。そのためにも、自然や動物をただ花鳥風月的に愛でる自然観は、もうなくした方がいい。

40年以上にわたって野生動物を撮り続けてきた著者の言葉だけに、重みがある。

2012年3月10日、農山漁村文化協会、2400円。

posted by 松村正直 at 23:30| Comment(2) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
インコはともかく、あんな和風の柄のブンチョウが洋鳥だというのがどうしても腑に落ちず、調べてみたところ、もともとブンチョウはインドネシア原産らしく、江戸時代初期には既に日本に入ってきていたようで、広重や北斎の木版画の題材にもなっていました。
ご多忙のところ、些事ですみません。
Posted by 小竹 哲 at 2026年03月16日 21:26
文鳥は野生のものは見かけないので、もともと日本にいる鳥ではないのでしょう。近代の小説などを読むとヤマガラに芸をさせたり、ウグイスの鳴き声を競わせたりする場面が出てきますが、今は野生の鳥の捕獲や飼育は全面的に禁止されているようですね。
Posted by 松村正直 at 2026年03月16日 22:30
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