心身の不調を日々感じる著者が、カウンセリングを受けるなかで自らの心の傷と向き合い、緩やかに回復していく姿を描いたドキュメンタリー。
前著『庭に埋めたものは掘り起こさなければならない』も自らの心を深く掘り下げる姿勢が印象的であったが、本書も生々しい心のありようを一つ一つ丁寧に言葉で描き出している。
https://matsutanka.seesaa.net/article/510743013.html
カウンセリングは順調に進んだわけではなく、何の進展も感じられない日々が続いたり、カウンセラーと衝突したり、カウンセリングを中止しようと決断したり、紆余曲折が続く。それでも心の傷を見つめ正面から向き合うことで、やがて自分の身体と心を取り戻すまでにいたるのだ。
生きている人は誰もが、種類や深さは異なれど傷をかかえている。わたしの描いた物語は一つのケースだが、ここには「人が人と共に生きていく」という普遍的なテーマが含まれていると思っている。その意味で、この物語はわたしのものでありながら、多くの人のものでもあるとも考えている。(「少し長いあとがき」)
同じような悩みや苦しみを抱えている人に勇気と希望を与える一冊と言っていいだろう。
先日の歌集『世界を信じる』批評会の前に本書を読んだのだが、批評会ではあえてこの本の内容には触れなかった。歌は歌だけで鑑賞した方が良いと思ったからである。
でも、もちろん両者は深いところでつながっているのであって、歌集のあとがきにもカウンセラーへの感謝の言葉が記されている。
2025年11月15日、医学書院、2200円。


