2026年02月14日

𠮷田恭大歌集『フェイルセーフ』

著者 : 吉田恭大
角川文化振興財団
発売日 : 2025-12-24

第2歌集。

十二時から二時までの荷物を待って、一時に届いてから部屋を出る
ジャパネット、ジャパネットたかたの贈る夢のクルーズ九泊十日
途中まで一緒に帰るこの人もこの人もたばこをやめた人
皿だったそれが買われてきた日のことを二人で思い出、してから捨てた
自販機はみな道の面を向いて立ちわたしの帰路を照らしてやまず
タクシーを待つ列とバスを待つ列と誰かが迎えに来る人々と
もう誰も引き継がれない企画書を食べさせてひねもす裁断機
街灯の根元に犬は繋がれておとなしく照らされている犬
二十八日毎やってくる認定日 行きは歩いて 帰りはバスで
ロッカーに着ていた服を入れるとき出すとき触れている冬の重さ

1首目、宅配便を受け取ってから出かける。1時間、得した感じか。
2首目、テレビなどに流れる通販のCM。船旅まで売っているのか。
3首目、周りが次々と禁煙していく寂しさ。元・喫煙者ばかりだ。
4首目、皿を割ってしまったのだろう。もう皿ではなく「それ」だ。
5首目、道に背を向けて立つ自販機はない。道を照らす街灯みたい。
6首目、電車を降りた人々が自然と3つに分かれていくのが面白い。
7首目、退職する際に自分の作成した企画書を自分で廃棄する辛さ。
8首目、街灯に繋がれたために、ずっと照らされ続けるしかない犬。
9首目、失業保険の認定日。無事に終って帰りは少し気が楽になる。
10首目、更衣室のロッカーの中の冷えている感じ。「重さ」がいい。

2025年12月24日、角川書店、2200円。

posted by 松村正直 at 21:06| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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