「歌壇」2月号に「評論・詩・短歌から読み解く啄木晩年の思想 ― クロポトキンの言葉の出典をめぐって」という評論を書いた。となると、やはりクロポトキンやアナキズムについてもっと知っておかなければ、というわけでこの本を手に取った。
全体にやや軽いノリの書き方の本だが、プルードン(1809‐1865)、バクーニン(1814‐1876)、クロポトキン(1842‐1921)、ルクリュ(1830‐1905)、マフノ(1889‐1934)の5人を取り上げてわかりやすく紹介している。
ロシアの貴族将校たちは、少なくともインテリであった。フランス語もドイツ語も自由に話せた。だから、ヨーロッパ中央部の人々の自由を、そこにいる市民たちとの会話で直接知り、あるいは活字で知識を得ていった。
日本に社会主義・共産主義の考えが導入される頃には、(…)国家レベルの革命思想と無政府的なそれとの差異が明確になっていた。その頃のヨーロッパでのアナキスト代表格がクロポトキンだったのだ。だから、日本のアナキストたちは、よってたかってクロポトキンを夢中で読んだ。
ネストル・マフノは一八八九年ウクライナのグリャイポーレという農村で生まれた。ちなみに、日本のアナキスト大杉栄はマフノが好きすぎて、長男にネストルという名前をつけている。
(引用されているバクーニンの文章)
どれほどその人物が「美徳をそなえた天才」であっても、たったひとりの人間に、またどれほど賢明で思慮深くとも、少数の人間に、大衆を支配する権力を預けるようなことがあってはけっしてならないのだ。けだしあらゆる権力は、権力そのものに固有の法則によって、必然的にその濫用をもたらすのであり、またたとえ普通選挙によって任命された政府であったとしても、あらゆる政府は不可避的に専制政治に傾くものだからである。
何だか最近の政治状況を言い当てているようでもある。
2017年3月10日第1刷、2022年11月20日第2刷。
ちくま新書、880円。


