第8歌集。「短歌日記」シリーズの15冊目。
2024年1月1日から12月31日までの366首が収められている。
タイトルは「心を高く上げよ」という意味のラテン語とのこと。
霜踏んでひとり行くらむ それぞれの冬野があれば子に付き添はず
相席ですするちゃんぽん 咲き揃ふ五島の椿のニュースがしみる
人生のところどころに灯りたるカステラの福砂屋の包装紙
よろこびを走つて伝へに行くといふことのよろこび花降る朝に
新しい人となるべく食べてゐる新じやが新玉ねぎ春ごばう
息子といふ遊び相手も居なくなり佐土原のくぢらのぼり見にゆく
オリーブの実とは異なるきらめきのオリーブオイルをくるりとかけて
東京のホテルにすくふ白粥の白に消えたり岩塩の白
満月は明日と思ひて仰ぎたり祈りは祈る者を変へゆく
権力と無縁に咲けるコスモスを見るため人はお金を払ふ
行き交へるシスター若きはポシェットのやうにスマホを斜め掛けして
幾たびも息子はわれを驚かせ驚かせいつか離れてゆかむ
1首目、高校受験のために遠くまで行く息子。心配ではあるけれど。
2首目、長崎の町で五島列島を思う。店のテレビが告げる満開の椿。
3首目、贈答品としてもらうカステラ。明るい包装紙に記憶が甦る。
4首目、伝える相手もきっと喜んでくれる。人生に何回もないこと。
5首目、春の野菜の生命力を身体に取り入れて生まれ変わった気分。
6首目、鯉のぼりの鯨版。子が家を出て一人の時間が増えた寂しさ。
7首目、サラダの皿などにかけている。金色の光のようなきらめき。
8首目「白」を3回繰り返したのがおもしろい。映像が目に浮かぶ。
9首目、下句に箴言のような重みがある。祈りの本質と言っていい。
10首目、風に揺れる無力なコスモス。でもそれゆえの魅力もある。
11首目、シスターにスマホは不似合いだが現代の若者には必需品。
12首目、驚かされたり悩まされたりしているうちが花なのだろう。
2025年12月25日、ふらんす堂、2500円。


