笠間書院の新しいレーベル「KAIKA」から刊行された中部短歌会所属の作者の第1歌集。タイトルの「ツガイムスビ」(番い結び)とは蝶結びなど左右が対となるような結び方のこと。
女子校の教室せまし頑(かたく)なにルーズソックス拒みしわれに
学校をサボって行ったキュビズム展もっと壊れた絵を観たかった
熱帯びたカップの持ち手なぞる指わたしの耳もおんなじにして
地上では呼吸できないひとばかり集うスタヂオ地下一階に
泡となることもできない海にいた 春から一番遠い季節の
バタイユの頁(ページ)をめくる指先が今はわたしをめくってひらく
前戯かもしれないふたり銀幕の薄闇のなか膝を並べて
豆苗(とうみょう)に生まれたかった水だけの小さな箱に青々として
若草とリトル・ウィメンが訳された国に生まれて紅葉となりぬ
富裕層をパフェのてっぺんだとすればコーンフレークあたりに暮らす
1首目、誰もかれもがルーズソックスを履くという同調圧力の強さ。
2首目、理論に基づくものではなく本能的なものを求める破壊衝動。
3首目、喫茶店で相手の仕種を眺めるうち触れてほしい思いが募る。
4首目、仲間と音楽を奏でる。地上の社会とは異なる地下の世界だ。
5首目、人魚姫の話を踏まえた歌。愛されることのない身を悲しむ。
6首目、哲学書を読むときの相手の姿と性愛を行うときの相手の姿。
7首目、二人で映画を観ながらも既にその後の行動を予感している。
8首目、水に浸かって満ち足りた様子の豆苗を見て自身を振り返る。
9首目『若草物語』という邦題には女性という観点が欠落している。
10首目、下句の言い回しがユニーク。パフェの中にも階層がある。
2025年11月20日、笠間書院、1800円。


