2026年01月25日

今井聡歌集『にんげんのかたち』


2023年夏から2年ほどの作品を収めた第2歌集。
奥村晃作の歌を論じた『ただごと歌百十首』の著者ならではの歌がならぶ。
https://matsutanka.seesaa.net/article/503048938.html

ぶらさがり可能とみればぶらさがる 子らは健康器具の売り場で
行け行けと歩道の鳩を追ひたてて児らあり鳩にまじりながらに
われの血をとらんとしたる針先のすいと身に入るまでを見てゐつ
ビル街に沈む夕陽をながめをり給湯室のちさき窓より
羽根付きの餃子の羽根のひらひらと余禄のやうな今宵なりけり
くねくねと川面の波を泳ぎゐる蛇と認むるまでのたまゆら
耳穴の毛まで剃られて店をいづ耳穴にあたらしき風が入る
今井さん結婚はいいもんですよ さうかと応へキムチをつまむ
円熟の小さんの話芸ききゐつつ寝てしまひ夢に小さんはをらず
手のひらは常いい仕事してゐると肉の厚みをたしかめ見入る

1首目、ホームセンターで遊ぶ子供たち。試さないと気が済まない。
2首目、結句がいい。幼児と鳩は遊ぶのにちょうど良い相手なのだ。
3首目、採血の針を刺すまでは見ていてその後は目をそらすのかも。
4首目、仕事中の一こま。「ちさき」がいい。仕事も終わりが近い。
5首目、上句が序詞のように「余禄」を導く。おまけのような時間。
6首目、正体がわかるまでのドキドキ感がよく出ている。蛇は泳ぐ。
7首目、散髪後の町。「あたらしき風」がいい。耳触りが違うのだ。
8首目、後輩などに言われたのだろう。でも相手がいないことには。
9首目、落語を聴く陶酔から眠りへと誘われていく。結句が面白い。
10首目、現代版「ぢつと手を見る」。手にその人の生き方が表れる。

2025年11月10日、六花書林、2300円。

posted by 松村正直 at 08:09| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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