2026年01月16日

真野少歌集『山葵の花』

 DSC03058.JPG

2011年から2025年までの作品を収めた第2歌集。

嘴太がおにぎりくわえて飛ぶ朝の路を歩めり飯粒よけて
マンションに階層ありて買うときに階層意識を拒むあたわず
セザンヌをみとれるなかに庭師ありつばを握れる帽子がゆがむ
かなかなの声のごとくに正確にベッドの父が夕暮れに泣く
白鷺のおののく脚は水底の石揺すぶりて漁(いさ)りすらしも
丼に盛る「おたぐり」は馬の腹裂きてたぐれる腸(はらわた)を煮る
あるだろうと怖れつつ来し売店に「ひめゆりちんすこう」は並びぬ
身投げするにたぶん手頃な崖があり遊歩道その手前で断たる
〈すてい・ほおむ〉勅語のごとくわれら聞き、欲しがりませんああ勝つまでは
B29に同梱されて二センチのファットマンあり箱には書かず

1首目、生ごみが鴉に荒らされている道を歩いている場面。巻頭歌。
2首目、高層階の方が値段が高い。生活レベルが可視化されている。
3首目、帽子のつばをぎゅっと握りしめ悲しみを堪えているところ。
4首目、夕暮れ症候群。赤ちゃんの黄昏泣きのように本能的なもの。
5首目、岸からは見えない水中の白鷺の脚の動きを思い描いている。
6首目、長野県の名物。食べたことはあるが、語源は知らなかった。
7首目、沖縄の平和祈念公園。商品名に使われている「ひめゆり」。
8首目、遊歩道は続いているが安全のため封鎖されているのだろう。
9首目、耳慣れない言葉によって戦時中と同様に我慢を強いられる。
10首目、プラモデルのB29。「二センチ」が的確。本物は3.25m。

2025年12月25日、不識書院、3000円。

posted by 松村正直 at 10:55| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。