2025年12月22日

日高堯子歌集『日在浜』

著者 : 日高堯子
角川文化振興財団
発売日 : 2025-11-07

2021年から2024年の作品を収めた第11歌集。

隠された詩人の恋と詩の間(あひ)を皮膚はがすごと読みふけるなり
昼食に柿の実ひとつ食べる猿 新宿のどこに柿なりゐしか
黒日傘ひらいてあらくさ道をゆく この世を戦車と夏蝶がゆく
海ぞひのそら豆畑は花ざかり黒目あざやかに風ひるがへす
口あけて食べさせてもらふ切なさに身をよぢりつつ父は生きしよ
まつしろい夢みてをらむ地に落ちてまだよごれざるこの白椿
朝に夕に酢とヨーグルト食べ血液のきれいな新鮮な老女はいかが
近づくほど遠ざかりゆく大吉野うねうねと観光客をのぼらせながら
垂直に海もぐりゆく海女たちの肛門はキュッとしまりてをらむ
ねこやなぎの銀をつけたる二、三本沼辺の女にもらひきし夫

1首目、「皮膚はがすごと」が生々しい。秘密をのぞき見るような。
2首目、新宿に出没した野生の猿。柿に着目したところが印象的だ。
3首目、「戦車と夏蝶」の取り合わせがいい。戦争と平和は紙一重。
4首目、空豆の花びらには黒い斑紋がある。映像が鮮やかに見える。
5首目、介護するのは大変だが、される方がもっと大変なのだろう。
6首目、やがては朽ち果て汚れてしまう花。束の間の夢のひととき。
7首目、「老女」とは自分のこと。ユーモラスな言い回しが楽しい。
8首目、春の吉野を大きな構図で捉えている。圧倒的な山の存在感。
9首目、下句を読むときに海女の体と読者の身体が一瞬重なり合う。
10首目、物語的な面白さを感じる歌。「沼辺の女」は幽霊か何かか。

2025年11月7日、角川文化振興財団、2600円。

posted by 松村正直 at 10:54| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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