2025年12月15日

小松和彦『聖地と日本人』


2006年に光文社から出た『誰も知らなかった京都聖地案内 京都人が能楽にこめた秘密とは』を改題、文庫化したもの。雑誌「観世」に2年間連載した文章が元になっている。

能に登場する日本各地の聖地・異界を取り上げて、その土地に関する伝承や物語などを能の演目と絡めて記している。

取り上げられているのは、「愛宕山」「貴船」「竹生島」「日高川」「富士山」「白峯」「安達ヶ原」など。訪れたことのある場所も多く、興味深く読んだ。

観音の霊場は、瀧や清水が湧く岩場や洞窟を抱え持っているところが多く、これは、豊穣を司る古来の水神=地母神の聖地に、新来の女神とみなされた仏教系の観音が進出し、その役割を引き継いだ結果である
中世の職能・芸能者たちは、木地師たちがその始祖を文徳天皇の第一皇子、惟喬親王に求めたように、自分たちの先祖を貴種に求めることでその職能・芸能を権威づけるとともに、権益を守ろうとした。蟬丸=延喜帝第四皇子説も、そうした動きのなかで生み出されたものであった。
熊野三山の信仰の基層には何があるのか。まず考えなければならないのは、伊勢神宮のある伊勢地方や支配者たちの住む大和・山城地方から見ると、熊野地方全体が「死の国」というイメージをもって理解されていたらしいことである。
日本の多くの霊山は遠くから山を拝してそこから霊性を感じ取る「遥拝」型の信仰を基礎にしながら、山に分け入り登ることで聖性を得る「登拝」型の信仰、つまり修験道系の信仰が加わることで、その内容を豊かなものにしてきた。

能を観に行きたくなってきたな。

2021年3月25日初版、2025年3月5日3版。
角川ソフィア文庫、880円。

posted by 松村正直 at 23:38| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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