「通常の技術者は失敗を繰り返して熟練に近づく。だが我々の世界に試行錯誤は許されない。お前たちもその目に焼き付けろ。これが狙撃兵の死だ」
国を問わず、歩兵と狙撃兵は相性が悪い。それは職能の差によるものである。(…)もし歩兵に求められる精神性で狙撃兵になれば一日であの世行きであるし、狙撃兵の精神性で歩兵になれば戦いに行くこと自体がままならない。
殺される心配をせず、殺す計画を立てず、命令一下無心に殺戮に明け暮れることもない、困難な「日常」という生き方へ戻る過程で、多くの者が心に失調をきたした。
このような戦争トラウマの問題も、エピローグで触れられている。
戦後ソ連が顕彰したのは、武器を手に戦地で戦った男たちと、その帰りを待ち、銃後を支えた貞淑な女たちだった。(…)生きて帰った女性兵士は敬遠され、特に同じ女性から疎外された。
兵士となった女性たちの戦後の苦悩については、『戦争は女の顔をしていない』でも繰り返し語られていた。本当の戦いはむしろ戦後に始まったのだと言ってもいい。
読み応え十分の本であったが、難点を言えば、後半に入って偶然の出会いが次から次へ起きるのが気になった。これはドラマとしては必要なものだと理解しつつも、実際の戦争にはドラマなどないこともあらためて思わされた。

