副題は「女人短歌のレジスタンス」。
戦後「女人短歌会」に集った女性歌人たちの人間模様や男性中心の歌壇における苦闘について描いた本。
「大西民子と北沢郁子」「北見志保子と川上小夜子」「中城ふみ子と中井英夫」など全10章+補章2篇、付録として12名の歌人の「一首評+10首選」のアンソロジーという内容になっている。
ふたりで旅行に行ったさい、大西は自分の嵌めていたガーネットの指輪を北沢にプレゼントした。次に銀座でふたりで食事をしたとき、大西の指に同じガーネットの指輪があった。北沢にプレゼントしたあと、同じものを大西はまた買ったのだ。
齋藤とイェイツの共通点は、それぞれが、二・二六事件とイースター蜂起で、複数の親しい友人知人が首謀格となり、処刑されていることだ。社会的な作品であると同時に、私的な悲歌(エレジー)でもある。
本当は女性のみの団体をつくることによってやっと存在を認めてもらえるようなことなどまったく不当であり、そもそも性別による差別などなく歌そのものを見てもらえる世界であるべきだ。しかしそんな理想だけじゃ物事が動かせなかったころ、その世界のいびつさをまともに受けとめてできたのが「女人短歌」だった。
WEB連載が元になっている本だが、文章に勢いがあってぐいぐいと引き込まれる。登場する女性歌人ひとりひとりが生き生きと輝いて感じられる。
これまでアララギ(茂吉・赤彦・文明)、前衛短歌(塚本・岡井・寺山)、ニューウェーブ(荻原・加藤・穂村)など男性中心に描かれることの多かった短歌史は、今後大きく書き換えられていくことになるだろう。
この本が短歌関連の出版社以外の版元から刊行されたのも意義深いことだと思う。短歌の世界にとどまらず、多くの方々に読んでほしい一冊だ。
2025年8月10日、柏書房、1900円。

