2025年10月22日

池内紀『新編 綴方教室』


「ことばが好き」(あとがき)な著者が、多くの例を挙げながら文章の書き方についてエッセイ風に記した本。

「主語」「述語」「受身形」「否定語」「外来語」「最初の一行」「最後の一行」「推量語」「条件文」「因果関係」といった項目を取り上げて、ユーモアを交えつつ楽しく、真面目に解説している。

なぜ日本語では「……を」が必ずしも他動詞につくとかぎらず、けっこう自動詞とともに用いられたりするのだろう。(…)いろいろ理由は考えられるが、もしかするとその一つとして、「である」と「する」との奇怪な混在があずかって余りあるのではあるまいか。
私たちは、きわめて効果的な受身の使用法を心得ているといわなくてはならないだろう。この点なるほど「相手に投げられたときケガをしないように倒れる術」を基本とするスポーツの柔道を発明した国民である。
食べもの、飲みもの、愛情を問わず、すぎたるは悪しき結果をもたらすようだ。文章も同様である。形容詞を重ねると加算式に印象が高まると思いがちだが、むしろ引き算に転化して、せっかくの効用が消え失せる。
「だろう」にはそれ自体の過去形がなく、また否定形もない。ということは、ひとたび「だろう」「かもしれない」の推量の沼にはまりこむと、これを打ち消すすべがない。過去として断ちきる切れ目がない。

ことば(日本語)をめぐる話の中から、日本文化や人生に関する数々の有益な示唆も受け取ることができるのだった。

1993年9月14日、平凡社ライブラリー、951円。

posted by 松村正直 at 23:41| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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