2025年10月19日

木村聡『不謹慎な旅』


副題は「負の記憶を巡る「ダークツーリズム」」。

「週刊金曜日」2019年6月〜2021年10月の連載記事を再構成して書籍化したもの。全国各地の戦跡や被災地、公害・差別などの現場を訪ねたルポルタージュ。

「旧大槌町役場と東北の震災遺構」「祝島と上関原発建設予定地」「原爆死没者慰霊碑とニ号研究」「川柳家・鶴彬」「南紀白浜と「三段壁」」など計40のルポが収められている。

古河機械金属(旧古河鉱業)は銅生産という本業が停止してもなお、有毒物質の堆積場とそこからの浸透水について安全管理をしなければならず、閉じた坑道から延々としみ出す鉱毒水のためにいまも設置した中才浄水場で無害化処理作業を繰り返している。(旧足尾銅山と松木村跡)
日弁連の調査報告によると、合併町村に共通する衰退の要因に「役場の喪失」が挙げられている。役場機能の縮小、郵便局や学校の統廃合など、行政がスリムになると同時に地域から姿を消していった公務就労者。気づかされたのは、彼らが地場の飲食店や地元業者の最大顧客だったということだ。(大合併と中越地震)
一九四〇年に旧日本陸軍が作った福生飛行場(多摩飛行場)。戦後接収した米軍は敷地を拡張し、現在は福生市全体の三分の一を占め、同市と隣り合う四市一町にまたがる。沖縄を除くと日本最大の米軍基地だ。(福生ベースサイドストリート)
少なからず子や孫が戦争体験を語り継いでいる広島や沖縄と異なり、過去に堕胎や断種が強いられたハンセン病患者には次世代がない。国立ハンセン病療養所(全国一三ヵ所)の入所者は現在約一〇〇〇人。平均年齢は八六歳を超える。(ハンセン病「重監房」と「継承講話」)

負の遺産を観光に用いるダークツーリズムには賛否があるが、「不謹慎≠ニ言って封印する悲劇の中には、だれかの不都合≠竡梠繧フ不条理≠ニいった、隠しておきたい存在がこっそりしのばされていることもあった」(はじめに)というのも確かだろう。

筑豊三都(田川・飯塚・直方)、国立療養所長島愛生園、恐山など、いつか訪れてみたいと思う。

2022年2月28日、弦書房、2000円。

posted by 松村正直 at 13:01| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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