2025年10月09日

塚田千束歌集『星夜航路』

著者 : 塚田千束
短歌研究社
発売日 : 2025-08-22

『アスパラと潮騒』(2023年)に続く第2歌集。

光合成、こうごうせいとつぶやいて、枯れた指先ひらいてとじた
石膏のように生きたい踏まれてもなぞられてもただひんやりとして
だれとでも交換可能な丸石になるよう波に洗われていた
不器用なワルツのようにもつれあうただキッチンに行くだけなのに
金木犀 出さない手紙を書くときの永遠の手前みたいな愛しさ
会いたさが突風のようにふきぬけて部屋中の窓をひらいてまわる
すこしこわい いつも怒らずいるひとと豆花(トウファ)のふっくらまろやかな白
院内のローソン暗く廊下暗くひとつあかるきナースステーション
汗の匂いそれぞれちがう頭ありみんなおんなじ風呂に押し込む
うつむいて水面にくちばし触れさせてはつか境がゆらぐ翡翠

1首目、光合成で養分を生み出す植物のように元気を出そうとする。
2首目、初二句が印象的。周囲や社会からの圧力や侵犯を拒絶する。
3首目、一つ一つ違った形であった石が丸くなるように人間もまた。
4首目、家の中の通路で家族とぶつかりそうになったりする暮らし。
5首目、純粋な思い。初句と二句以下の取り合わせの距離感がいい。
6首目、下句を付けたのがいい。会いたさの表現として迫力がある。
7首目、どちらも穏やかな見た目だけれど、だからこそ怖いのかも。
8首目、病院の雰囲気がよく出ている歌。昼と思っていたが夜かな。
9首目、子育ての歌。きょうだいでも匂いに違いがあるという発見。
10首目、水の内の世界と外の世界が一瞬触れ合い波紋が生まれる。

2025年8月17日、短歌研究社、2200円。

posted by 松村正直 at 09:45| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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