副題は「明治・大正・昭和 人と建物の物語」。
明治から昭和戦前までの約80年間に建てられた全国32の建築を取り上げて紹介した本。
明治時代が終わって、大正時代になると、「文明」から「文化」へと時代の空気が変わっていった。国家や産業のための建築から市民のための建築へと関心が移っていった。(旧国立駅舎)
仏教に起源はインドにある。たまたま中国を経由して日本に伝来したため、日本の仏教寺院は中国の建築様式になっているが、元をたどればインドの建築様式でもおかしくない。(築地本願寺本堂)
読書はタイミングと流れが大事だと思っている。7月に唐津を訪れて辰野金吾に興味を持ち、門井慶喜『東京、はじまる』を読んだ。東京駅を設計する辰野の姿を描いた小説だ。
そして、今回はこの本。もちろん東京駅も載っている。
肥前唐津藩の下級武士の貧しい家の生まれながら、幸運にも東京に出て、出来たばかりの工部省工学寮に入学。秀才ではなかったが、強い意思と努力によって頭角を現し、最優秀で卒業すると、ロンドンへの三年間の留学と設計事務所での実務経験を経て、日本最初の建築家として帰国、工部大学校の主任教授となった。
もちろん、辰野の師であったジョサイア・コンドルの建築も取り上げられている。(旧岩崎邸、六華苑、清泉女子大学本館)
コンドルは工部大学校造家学科で多くの人材を育て、それまで日本になかった「建築家」という仕事とその生き方を示した。また、教え子の辰野金吾が教授に就任するにあたって三一歳で学校を解雇されても日本に留まり、傾倒していた日本文化を学び続け、次々に著書を著して欧米に紹介した。
そして明日は、いよいよコンドル設計の六華苑(桑名市)で歌会だ。
う〜ん、完璧な流れではないか。
2025年2月20日、新潮新書、880円。


