2022年からの作品422首を収めた第1歌集。
雨の日もノウゼンカズラは本能をスカートの中に太らせていく
動物園にひとりで行こう冬空を母と抱き合う子猿に会いに
蔦の葉がぐいりぐいりとめり込んで立ったまんまの樹木は腐る
鉄棒に雨粒の子はきらめいて同じ形のものなんてない
保育士の胸のキティはキャラメルの箱に隠れた録音機もつ
保育室よいせと座ればたちまちに手足背首に園児が実る
拾い上げる犬のうんちの温もりに生きていいよと言われた夜よ
連休の家族ごっこの親子らが牛の親子をじうじうと焼く
なぜかしらいつもこんな時にだけ降りだす雨が私にはある
ぬばたまの黒き母性を練り込んだ海苔弁ばかり作ってしまう
1首目、ノウゼンカズラの橙色や蔓の様子と性のイメージが鮮やか。
2首目、「母と抱き合う」ことに対する渇望のようなものを感じる。
3首目、「ぐいりぐいり」というオノマトペが何ともなまなましい。
4首目、「雨粒の子」としたことで人間の子にも通じる歌になった。
5首目、トラブルが起きたときのためのものか。保育現場の厳しさ。
6首目、「実る」がいい。大木になったように園児が群がってくる。
7首目、袋越しに伝わるうんちの温かさは犬が生きている証なのだ。
8首目、世間で良いものとされている「家族」に対する強い不信感。
9首目、現実の雨というより心の中に降り始める雨のように感じる。
10首目、母性には良い面とともに悪い面もあるのを自覚している。
2025年8月8日、デザインエッグ株式会社、1491円。

