副題は「硫黄島からルーズベルトに与ふる書」。
「ルーズベルトに与ふる書」を書いた市丸利之助少将、英文に翻訳した三上弘文兵曹、腹に巻いて突撃した村上治重参謀の3名を取り上げたノンフィクション。
中でも、これまで「ハワイ生まれの日系二世」という事実くらいしか知られていなかった三上の生い立ちや生涯、遺族とお墓のことまで明らかにした功績は大きい。
第二十七航空戦隊司令官に、八月十日付で市丸利之助少将が発令された。市丸という大物≠起用することで、帝国海軍は、「硫黄島死守」への並々ならぬ決意を示したといえる。しかし、硫黄島の海軍航空戦力は、米軍の航空攻撃を連続的に受けて、十月初旬までに戦力を消耗していく。(…)海軍はここにおいて、航空兵力のないまま「地上戦」へと突き進んでいくのである。
市丸は若き日はパイロットとして、大怪我を負ってからは予科練の部長として、さらには各地の航空隊の司令官として、一貫して航空畑を歩んできた。そんな彼が最後は飛行機のない島の地上戦で死んでいったのは、何とも無念なことだったろうと思う。
数々のノンフィクションを書いてきた著者の取材力には感心するのだけれど、帯文に「忘れかけていた日本人の心が震える」とあるような執筆姿勢にはまったく賛同できない。そのためにちょっと人にはおススメしにくい本である。
2025年8月5日、産経新聞出版、1700円。


