前作『硫黄島上陸 友軍ハ地下ニ在リ』(2023年)で著者は、硫黄島の戦死者の遺骨の多くがまだ見つかっていない問題を明らかにした。
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本作では、戦時中に強制疎開させられた島民たちが、戦後80年が経つ今もなお島に戻ることができない問題を取り上げている。
硫黄島には、21世紀になっても解決されない二つの「帰れない」問題がある。一つは、戦没者1万人の遺骨が家族の元に帰れずにいること。もう一つは、1944年7月に本土疎開を命じられた旧島民と子孫が、いまだに故郷の島に帰ることを許されていないことだ。
国が火山活動を理由に再居住を許さないのならば、火山列島である日本中はどこも居住できないことになる。水がなく、産業の発達が望めないとの理由も挙げるが、戦前には1000人以上の島民が実際に豊かな生活を送り、現在も多くの在島自衛官たちが本土と変わらぬ生活を送っている。
奄美返還は、単なる行政上の復帰にとどまらなかった。「声を上げれば、島は戻る」という事実を、ほかの島々の島民たちに教えた。当時、奄美、小笠原、沖縄、北方領土の返還運動は、連帯する形で展開されていた。
兵力不足に陥った大戦末期の硫黄島に配備された約2万人の日本兵。その多くは、当時「老兵」と呼ばれた30代以上の再応召兵だった。彼らは一度兵役を果たして家庭や職場に戻った庶民だ。
「硫黄島の戦い」は島民を強制疎開させ、日本兵約2万人が亡くなっただけではない。戦後もアメリカ軍や自衛隊の軍事利用に島は独占的に使われ、今もなお民間人は住むことができない。この島では戦争はまだ終っていないのだ。
前作に続いてすぐれたノンフィクションだと思うのだが、一つだけ気になったことがある。本書の最後は、今年4月に天皇皇后両陛下が慰霊のために硫黄島を訪れ、旧島民の子孫たちがそれを喜び感謝する話で終っている。
その純粋な気持ちはよくわかる。エピローグにぴったりの内容でもある。一方で、そうした「天皇をありがたがる」メンタリティーこそが、戦前と変わることのない大きな問題でもあるのだと思う。
2025年7月2日、講談社、2300円。


