副題は「私が体験した地獄の戦場 硫黄島戦の真実」。
2008年に産経新聞出版から刊行された単行本の文庫化。硫黄島の戦いで生き残った大曲覚氏(海軍中尉)の体験談を著者が聞き取ってまとめたもの。
この本に記されているのは日本軍の激しい抵抗でも英雄的な戦いでもなく、壕を掘るのに疲労困憊し、病気に罹り、水不足に苦しみ、転々と逃げまどいながら死んでいく兵たちの姿である。
私は、日本の攻撃によって米軍にまとまった損害を与えたのは、十九日から二十一日までの三日間だったと考えている。
硫黄島において地上戦が長引いた原因の一つは、米軍が慎重だったからである。すでに空港は制圧した。飛行機の離発着も開始されている。日本軍に反撃する力は残っていない。米兵が無理をする理由は一つもなかった。
戦争の本当の恐ろしさは、大砲や機関銃で撃たれることではなく、人間の本性が露わになっていくところにある。私はそれを体験した。
華々しいところは何もない。読んでいて息苦しくなってくる。それだけに、貴重な証言だと思う。
2024年11月20日、光人社NF文庫、891円。


