2025年07月26日

石川九楊『一日一書』


2001年1月から12月まで「京都新聞」朝刊に連載されたコラムに新聞休刊日の分も増補してまとめたもの。一日一書、計365の書が解説とともに紹介されている。

二千年にわたる書の歴史の厚みと表現の多彩さにまず驚かされる。さらに、中国と日本の共通点と相違点についても考えさせられた。

中学時代の書道の時間に欧陽詢「九成宮醴泉銘」を習ったことなどを懐かしく思い出す。この本に出てくる三人組をまとめておこう。

三筆:空海・嵯峨天皇・橘逸勢
三蹟:小野道風・藤原佐理・藤原行成
寛永の三筆:本阿弥光悦・近衛信尹・松花堂昭乗
明治の三筆:日下部鳴鶴・中林梧竹・巖谷一六

コラムは200字程度の短いものだが含蓄に富む内容が多い。

書くことは、欠く、掻く、画く、描くにつうじるかくこと。土地をかくことが「耕」。「晴耕雨読」は、耕すことが書くことを含意し、東アジア漢字(書)言語圏に格別の言葉である。
康熙帝が編集させた「康熙字典」の字体は、現在もなお日本の印刷文字の典拠となっている。
筆順は唯一でも任意でもなく、書字史のどこに倣うかという歴史の継承法に属する問題である。
〈きへん〉を〈てへん〉のように書くところに、楷書体よりも草書体が先に生まれ、草書体が転じて楷書体と化した秘密が隠されている。
にじみは中国では風化し角のとれた石刻文字の姿を再現するため。日本の淡い情緒的、美学的なにじみとは少し異なる。

書では副島種臣の「心」「雲」「野」、祝允名の「流」、金農の「糧」、文彭の「鴛鴦」などが強く印象に残った。

2002年5月10日、二玄社、1800円。

posted by 松村正直 at 21:57| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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