副題は「国策に翻弄された130年」。
1945年の日米両軍の激しい戦闘だけでなく、戦前の入植や開発、そして戦後は米軍や自衛隊の管理下に置かれた状況について、硫黄島の住民に重点を置いて描いている。
硫黄列島は二〇一八年時点で、軍事利用のために約七五年にわたって島民全体が帰郷できないという、世界でも類例をみない異常事態下に置かれている。
コカ栽培は、ジャワ島から原木を輸入して一九二〇年代後半に開始された。コカの葉を乾燥させて粉末に製造するコカ乾燥工場や保管用倉庫も建設され、製造されたコカの粉末は本土の製薬会社に売却された。
硫黄列島は、日本帝国の最前線で開発のターゲットになり、日米の総力戦の最前線として激烈な地上戦にさらされ、冷戦下で米国の核拠点として秘密基地化された。
戦前は1000名以上の人々が住んでいたにもかかわらず、現在もなお帰ることのできない島。この島における戦後処理はまだ未解決のままなのだ。
2019年1月25日、中公新書、820円。


