ノンフィクションではなく小説だと聞いていたのだけれど、ほんとうに小説だった。それもかなり本格的な内容の「息子と狩猟に」「K2」の2篇を収めている。
もちろん、狩猟と登山という作者のバックグラウンドは存分に作品のなかに生かされている。
獲物を狩るのは面白い。そこにはたしかな興奮と喜びがある。準備を整え、じっと状況を積み重ね、備え、そして訪れた遭遇の瞬間に、すべての感情を封鎖する。(…)殺生とは相手を殺すことのようで、実は、自分という人間をひととき殺すことだ。/「息子と狩猟に」
ここまで登ってくるルート上には、いたるところに遭難と死者の痕跡が残っていた。時代遅れの登山靴から、骨と白蠟化した肉が飛び出しているのを見て以来、私は人工的な色が目に付くとあえて目を背けた。過去の登山者の一部は自分の未来を見るようで気分が悪い。/「K2」
どちらも命の極限状況を描いた作品。おそらく小説という方法でしか表現できないものが作者の内にあったのだろう。
2017年6月30日、新潮社、1600円。


