今月の「評論シリーズ 21世紀の視座」は、廣間菜月「和歌研究者のまなざしー佐佐木治綱の短歌と京極派和歌」。このシリーズも実に233回目。
佐佐木治綱は、信綱の三男で幸綱の父。50歳という若さで亡くなったこともあって一般にあまり知られていないが、歌人であり中世和歌の研究者であった。
治綱は敬愛する京極派歌人と同じ景を見据えつつ、それを自分の語彙で詠むことによって、京極派の作歌を実践しながらその情趣に新しさを加えようとしていたのではないか。
治綱は京極派和歌の情調を確かに引き継ぎながら、そのマンネリズムを近現代短歌の語彙と発想で打開した歌人であった。
時代的には古典和歌でありながら古典和歌の伝統の枠に嵌らない京極派和歌は近現代短歌の実作に通じ、治綱という歌人によって見出されたのである。
廣間は京極派和歌の研究者であった佐佐木治綱の短歌に京極派の歌に通じる表現を見つけるとともに、そこに治綱が新たに加えたものを考察している。
治綱にも京極派にも特に深い関心を持っていない私にも、おもしろい評論であった。

