2012年に文藝春秋社より刊行された単行本に2篇を追加して文庫化したもの。
近代建築好きな二人の作家が、大阪・京都・神戸・横浜・東京、そして台湾と、気になる建築を見て回った記録。
門井 大正十四年に周囲の町村を合併し、大阪市の人口が日本一になる。この状況は昭和七(一九三二)年まで続くんですが、天守閣が建築されたのは、まさにその絶頂期なんですね。
門井 灯台ってじつは近代化の最重要インフラで、明治初年から十年まで、工部省の総予算が少ないときでも二五パーセント、多いときだと四〇パーセントを灯台関係に使ってるんです。
万城目 同じ港町どうし、神戸と比べながら一日歩いてみたんですが、とにかく横浜は町が大きい。神戸って、あっちに山があったらこっちに海があり、その中間地点のどこかに自分がいるというふうに空間把握できるんですけど、横浜は広すぎて海がどこかもわからない。
二人でお喋りしながら見て歩くスタイルが何かに似ているなと思っていたのだが、みうらじゅん&いとうせいこうの「見仏記」シリーズだった。あのシリーズと同じく二人のやり取りが楽しい。
この「ぼくらの近代建築」も、さらなる続篇を期待したい。
2015年5月10日第1刷、2023年9月25日第3刷。
文春文庫、840円。