先日読んだ『文学傑作選 鎌倉遊覧』に、この小説の初めの章にあたる「夏」が収録されていた。その続きが読みたくなって購入。
https://matsutanka.seesaa.net/article/514911985.html
文具店&代書屋を営む主人公の雨宮鳩子と近所の住人や代書の依頼に訪れた客たちの物語。鎌倉を舞台に「夏」「秋」「冬」「春」と季節が進んでいく。
血の繋がった先代には優しくできなかったのに、たまたま隣り合って暮らすバーバラ婦人とは、こんなに仲良くカマンベールチーズを食べている。先代も先代で、会ったこともない文通相手には、素直に心のうちを吐露することができた。
そういうことって、あるよなあと思う。
「ポッポちゃんは、イチゴに練乳かけないの?」
「私は、つぶしたイチゴにミルクを混ぜて、ハチミツをかけて食べます」
このあたり、世代や時代を感じる。今はイチゴはそのまま食べるけれど、僕も子どもの頃は潰して牛乳と砂糖をかけて食べていた。あれは、何だったんだろうな。今のイチゴより小粒で酸味が強かったのだろう。
他にも、グレープフルーツは半分に切って、断面に砂糖をじょりじょり塗り込んで、皮と実の間を包丁の先で一周切って、スプーンで房から掬って食べていた。今はもうあんな食べ方しないだろうな。
最後の方の大事な場面で寿福寺が出てくる。ここは3年前に米川稔の墓を探してれたところ。
人生はいろんなことがつながっている。
2018年8月5日初版、2024年7月25日25版。
幻冬舎文庫、600円。