2025年05月09日

土井勉『ガチャコン電車血風録』


副題は「地方ローカル鉄道再生の物語」。

滋賀県を走る近江鉄道の経営危機「ギブアップ宣言」と上下分離方式による再建を描いた本。

近江鉄道には、第3回別邸歌会(甲賀市)や第9回別邸歌会(八日市市)に行くときに乗ったのでなじみがある。
https://matsutanka.seesaa.net/article/490826870.html
https://matsutanka.seesaa.net/article/501239354.html

著者は「近江鉄道線活性化再生協議会」の座長を務めこの問題に深く関わった方なので、再生に至るまでのさまざまな困難や齟齬などが具体的に記されている。

わが国の地方ローカル鉄道の存廃問題について実施されたプロジェクトの多くが、敗戦直前の取り組みであったことも影響して「延命」を目指すものでした。これに対して、近江鉄道は、まだ余力が多少あるタイミングでギブアップ宣言を行ったことで、鉄道の「延命」ではなく、「再生」を目指すリーディングプロジェクトを担うことになりました。
これまでは、鉄道は企業の持ちものという考え方が中心でしたが、上下分離とすることで、鉄道は道路と同じようにインフラであると考える市民が出てきたことになります。

鉄道会社、自治体、沿線の企業や学校、市民、専門家などが力を合わせ、鉄道路線を維持し活用していく姿を示したことは、とても有意義で画期的なことだと思う。

鉄道の存廃は単に鉄道会社の経営の話ではなく、まちづくりや交通政策、インフラの整備の問題でもある。そうした視点を忘れてはならないだろう。

2025年1月17日、岩波ジュニア新書、940円。

posted by 松村正直 at 12:07| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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