鎌倉を舞台にした文学作品のアンソロジー。
3年前に米川稔の墓を探して鎌倉を訪れて以来、何となく鎌倉のことが気になっている。
編者の作品の選びや並べ方のセンスが素晴らしく、収録作のどれもが胸に沁みる。特に、嘉村礒多「滑川畔にて」、小津安二郎「晩春」、黒川創「橋」が印象に残った。
元弘三(一三三三)年五月二十二日以後、鎌倉は「歴史」から見捨てられ、江戸中期あたりから細々と、明治の鉄道開通からは賑やかに、観光地、避暑地として注目を浴びた。古廟名刹の立ち並ぶ「歴史」を感じさせる場所として、何のことだか知らないが「和」の趣きを味わえる土地として、つまりは芝居の背景幕のような場所として、鎌倉は人気を得た。
鎌倉に住んでみたら楽しいだろうな。
2024年11月10日、ちくま文庫、1084円。