2025年04月08日

赤嶺淳『鯨を生きる』


副題は「鯨人の個人史・鯨食の同時代史」。

捕鯨や鯨肉販売、鯨料理店などクジラに関する仕事に携わってきた6名の方々への聞き書きを中心に、日本における捕鯨や鯨食の歴史を記した本。クジラに関してさまざまな角度から理解を深めることのできる内容になっている。

北洋におけるサケ・マス漁、カニ漁や南洋におけるカツオ漁同様に、捕鯨は日本の水産業の近代化を語るうえで無視できない産業である。北洋にしろ、南洋にしろ、南氷洋にしろ、それらはいわゆる手つかずの「フロンティア」漁場だったのであり、そこに経済的要因と軍事的動機がかさなり、国策的に大資本が投入され、開拓が促進された。
わたしは鯨で育ったようなものです。鮎川では、タンパク源といえば、鯨でした。カレーライスも、鯨肉と鯨の皮でした。(和泉諄子)
昭和四一(一九六六)年のソーセージの場合です。原料は、鯨が三五%、鮪が五%、カジキが五%、鱶が一〇%、それから底引きのものが二〇%で、アジが二五%でした。(常岡梅男)
一般に「家庭用マーガリン」の原料が動物性油脂から植物性油脂に切りかえられるようになったのは一九六〇年代半ばとされている。(…)わざわざ「純植物性」を強調するあたりは、暗にそうではないマーガリン――鯨油入りマーガリン――の存在を想起させる。

戦後の鯨食と言うと、給食で出た鯨の竜田揚げの話ばかりが取り上げられるが、実はマーガリン(鯨油)や魚肉ハム・ソーセージ(鯨肉)の形でも、大量のクジラが消費されていたのであった。

2017年3月1日、吉川弘文館、1900円。

posted by 松村正直 at 19:16| Comment(0) | 鯨・イルカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。