言語学者の著者と「ことばのプロ」である四人との対談集。対談相手は、俵万智(歌人)、Mummy-D(ラッパー)、山寺宏一(声優)、川添愛(言語学者・小説家)。
言語学も「人間とは何か」の解明を究極的な目標としてかかげています。言語の分析を通して、「ヒト」という生物学的な種について洞察を得る――これは、現代言語学に通底する信念です。
俵 今、短歌は目で読むことに重心が傾いている。でも短歌は本来的には声に出して、耳で聞かれていたものです。「歌」というくらいですから。文字もない時代から人々は聴覚を頼りに歌を詠み、聴いてきました。
M たとえば「半端ないぜ」と「have a nice day」という言葉を揃えてみる。日本語の「はん」を圧縮して一音節とし、「ない」も1音節に押し込める。すると、「はん」「ぱ」「ない」「ぜ」の4音節にまで密度を高められる。「have a nice day」と同じ音節数です。
山寺 声作りをする上で大事なのはキャラクターのビジュアルと声の一体感です。「このきゃらならばこの声しかありえない」とうくらいまで登場人物と声のマッチングを考え抜きます。
川添 「タピる」という言葉には、「私は『タピる』という表現を使う側の人間なんですよ、つまり若い世代の人間なんですよ」というニュアンスが含まれていますよね。(…)自分のアイデンティティの表明や他人との関係性の匂わせをしている。
いろいろな角度から日本語が論じられていて面白い。
川原 子音も母音も駆使して独特の響きをもたらすという手法は、短歌もラップも同じです。先入観なく日本語ラップと短歌を客観的に比較したら、このふたつはそこまでかけ離れた表現方法ではない。
これを読んで思い出したのは、川村有史の歌集『ブンバップ』。韻をかなり重視した歌集であった。
https://matsutanka.seesaa.net/article/503860696.html
2024年2月20日、講談社現代新書、900円。
修正しました。